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25年前、主演ドラマから広がった“官能グルーヴの野生ソング” 30万枚を超えた“静かな情熱サウンド”

  • 2025.11.1

2000年初頭、ミレニアムという言葉がまだ特別な響きを持っていた時代。街は光に包まれ、人々は新しい時代の始まりに期待と不安を抱いていた。そんな冬の夜に、ひときわ静かに咲いた1曲があった。

V6『野性の花』(作詞:真木須とも子・作曲:タジマタカオ)――2000年2月2日発売

森田剛主演のテレビ朝日系ドラマ『月下の棋士』主題歌として発表されたこの曲は、3曲入りシングル『MILLENNIUM GREETING』の1曲として収録され、30万枚を超えるヒットを記録した。作曲と編曲を手がけたのは、タジマタカオことORIGINAL LOVEの田島貴男。彼ならではの“官能的なグルーヴ”と“孤独を映す旋律”が、V6の新しい一面を引き出している。

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※Google Geminiにて作成(イメージ)

静けさの中にある、燃えるような熱

田島貴男によるメロディは、一見穏やかで洗練されている。だがその奥には、感情が内側で燃え続けるような熱を秘めている。サウンドは、ファンクやソウルのエッセンスを取り入れた都会的なリズム。ギターとリズム隊が刻む軽快なビートに、オルガンやコーラスのうねりが絡みつき静かに体温を上げていく。

田島貴男はORIGINAL LOVEとして『接吻 kiss』『朝日のあたる道 AS TIME GOES BY』『プライマル』といった数々のヒット曲で、大人なサウンドを届けてきた人物。そんな彼がV6に書き下ろした曲だからこそ、『野性の花』には異彩が宿った。

アイドルグループのシングルとしては珍しいほどの深みと余白、そしてアダルトな香り。まるで、夜明け前の街を歩く青年の孤独を切り取ったような世界観が広がっている。

“成長”という名の進化点

リリース当時、V6はデビューから5年を迎えていた。デビュー曲『MUSIC FOR THE PEOPLE』のようなエネルギッシュなダンスチューンを経て、グループとしての成熟が問われ始めた時期でもある。『野性の花』は、そんなタイミングで放たれた“転換点”の一曲だった。

ここには、少年のような無邪気さも、アイドル的なキラキラ感もない。その代わりにあるのは、抑えきれない衝動と静かな誇り。歌詞の中で描かれる“野性”とは、派手さではなく、自分の中に眠る情熱を信じることなのかもしれない。

“野性”という名の孤独と誇り

アレンジには、田島特有の“余白の美”が生きている。だからこそ、ボーカルの一言一句が際立ち、聴く者の想像力を刺激する。夜の街の灯りや、静まり返った部屋の空気までが、音の中に見えてくるようだ。

2000年代初頭、時代はすでに変わり始めていた。音楽のトレンドもテクノロジーも急速に進化し、グループアイドルが“個の時代”へと踏み出す過渡期。そんな時代の空気の中で、『野性の花』はV6が放った“静かな宣言”のように響いた。

派手さではなく、深みで勝負する。誰にも似ていない音を追い求める。その姿勢こそ、V6が長く愛され続けた理由のひとつだろう。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。