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25年前、限定10万枚の“脱退前のラストシングル” 去りゆく者が残した“切ないけど温かい”置き土産ソング

  • 2025.10.31

「25年前のあの日、あなたは何を聴いていた?」

2000年の初夏、街にはまだ平成の終わりを引きずるような熱気と静けさが同居していた。インターネットも携帯電話の普及も広がっていき、人々の距離が少しずつ変わっていく――そんな“時代の狭間”に、Every Little Thingが放った一曲があった。

Every Little Thing『Rescue me』(作詞・作曲:五十嵐充)――2000年6月14日発売

このシングルは、同年3月に発売された3rdアルバム『eternity』からのリカットとして登場した限定10万枚のシングル。だが単なるリカットリリースではない。五十嵐充脱退後に発表された、3人体制としての“最後”の一枚。それは、ELTというグループがひとつの時代を終える節目を象徴するような一曲だった。

儚さと疾走感が同居する、2000年のポップス

『Rescue me』が放たれた当時、Every Little Thingはまさに転換期にあった。ELTサウンドをつくりあげてきた五十嵐充がグループメンバーとしての脱退を表明。このシングルがリリースされる時点ではすでに二人体制となっている。

イントロを包み込むシンセの響き、軽やかなリズム、そして持田香織の透明感あふれる歌声――すべてが“終わりと始まり”の境界線に立つ音だった。メロディには、五十嵐らしい繊細な哀しみと希望が混在し、どこか手を伸ばせば消えてしまいそうな儚さが漂っている。

一方でサウンド面は、当時のJ-POPらしい都会的な打ち込みとバンドサウンドが絶妙に融合しており、2000年代の幕開けにふさわしい洗練された仕上がりとなっていた。まさに“デジタルとアナログの狭間”で鳴っていた一曲と言える。

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Every Little Thingのボーカル・持田香織-1998年撮影(C)SANKEI

「去りゆく者」と「残る者」――その空気が生んだ一体感

この曲が特別なのは、単なるヒットシングルとしてではなく、“五十嵐充の置き土産”としての重みを持つことにある。

五十嵐はELTのサウンドを築いた中心人物であり、そのメロディラインには常に「切なさ」と「温度差」のような感情が流れていた。『Rescue me』でもその筆致は健在で、サビに向かうコードの展開や、余韻の長いストリングスには彼ならではの感性が宿っている。

それを歌う持田香織の声は、どこまでも澄んでいて、けれど少し震えているようにも聴こえる。

“誰かを引き止めたい”ような想いが、音の奥にそっと隠されているようなボーカル。その微妙な揺らぎが、曲全体に人間的な温かみを与えていた。

“静かな区切り”としての『Rescue me』

限定10万枚というリリース形態も、この曲の特別さを際立たせた。この後、ELTは二人体制へと移行し、サウンドを進化させていく。その意味でも『Rescue me』は、“初期ELTの終章”として位置づけられる一曲だ。

2000年代初頭という、まだCDの温もりが残る時代。音楽が“モノ”として存在していた最後の時代の名残り。『Rescue me』は、そんな時代の空気ごと私たちの記憶を閉じ込めた“タイムカプセル”のような一曲だ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。