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40年前、日本中が息をのんだ“天才3人による奇跡のハーモニー” 1位に輝いた“成熟ポップスの真髄”

  • 2025.11.4

「40年前のあの初夏、ラジオから流れたあのコラボ覚えてる?」

梅雨の気配が漂いはじめた6月、街を行き交う人々の耳にふと届いたその歌声は、まるで夢のように澄んでいた。それは、時代を代表する3人のアーティストが、肩書きを超えて一つになった瞬間だった。

松任谷由実・小田和正・財津和夫『今だから』(作詞・作曲:松任谷由実・小田和正・財津和夫)――1985年6月1日発売

まさに日本のポップス史に刻まれた、“あり得なかった奇跡のコラボレーション”である。

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松任谷由実-1996年撮影(C)SANKEI

“現役売れっ子3人”が並んだ、奇跡のスタジオ

松任谷由実はすでに女性シンガーソングライターの象徴、小田和正はオフコースの中心として精緻なサウンドを追求し、財津和夫もチューリップとして活発に活動していた。

それぞれがアーティストとして売れっ子の立場にありながら、その看板を越えて3人が同じスタジオに集まるというのは前代未聞の試みだったと言ってもいいだろう。

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小田和正-1995年撮影(C)SANKEI

坂本龍一が設計した“静謐な贅沢”

編曲を担当したのは坂本龍一。キーボードを坂本自身が弾き、ドラムには高橋幸宏、ベースに後藤次利、ギターに高中正義――と、レコーディングメンバーもまた豪華絢爛。それぞれの演奏がぶつかることなく、まるでひとつの呼吸のように溶け合っている。

個性を競うのではなく、響きの中で互いを活かし合う。その成熟した姿勢に、聴く者は息をのんだ。

“今だから”に込められた穏やかな決意

タイトルの「今だから」には、派手な主張ではなく、人生の静かな達観がある。

ユーミンの温もり、小田の透明感、財津の優しさ。3人の声が順に現れ、やがて一つに溶けていく構成は、時間と共に変わっていく人の関係や絆の形を思わせる。

言葉少なに、それでも確かに伝わるものがある。

「今だから言える」「今だから分かる」――そんな思いを抱いた誰もが、心の奥で頷くようなメッセージだ。

聴き終えたあとに残るのは、感情の爆発ではなく、静かに満たされる安堵。まさに“成熟したポップス”の到達点といえるだろう。

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財津和夫-1997年撮影(C)SANKEI

1985年の空気が呼んだ“調和”

1985年、日本はどこか浮き足立ちながらも、新しい時代を感じていた。そんな中で登場した『今だから』は、音楽が人をつなぐ場所であり続けることを思い出させてくれた作品だった。

シングルチャート1位を獲得し、30万枚以上を売り上げたこの曲は、単なるヒットソングではなく、音楽界における“理想の共演”として記憶されている。

豪華さに頼らず、あくまで音と声で聴かせる潔さ。その品格が、この楽曲を時代の記念碑にした。

時を越えて響く、やさしさのハーモニー

40年経った今も、この曲が放つ透明感は少しも色あせない。そこにあるのは、競争ではなく“共鳴”という名の美しさだ。

誰かと向き合うことの難しさを知った大人たちにこそ、そっと届く歌。聴くたびに、「今だから」こそ分かることが、またひとつ増えていく。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。