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20年前リリース→80万枚超を記録した“涙腺を破壊する”冬バラード 規格外の共感性ゆえに“永遠に朽ちぬ曲”

  • 2025.10.29

「20年前の冬、あなたはどんな景色を見ていた?」

街が白く曇り、吐く息がすぐに消えていく夜。コンビニの前を歩く人たちの肩に、雪が静かに降り積もる。その中で流れてきた一曲が、冬の匂いごと記憶に焼きついた。

レミオロメン『粉雪』(作詞・作曲:藤巻亮太)――2005年11月16日発売

TBS系ドラマ『1リットルの涙』の挿入歌として放送され、物語とともに多くの人の涙を誘った。放送終了後も口コミで広がり、最終的に80万枚以上を売り上げるロングヒットとなった。いまでは“冬の定番”として誰もが知る名曲である。

冷たい空気を切り裂くサビの衝撃

冒頭で鳴るのは、歪みを抑えたギターのストローク。乾いた弦の音が、冬の空気を裂くように響く。そこにドラムがゆっくりと重なり、ベースが地面のように支える。やがて藤巻亮太の声が差し込んでくると、冬の中で凍える人々の体温が徐々に上がっていく。

そしてサビに入った瞬間、空気の温度が一瞬で変わる。

“粉雪 ねえ”――その一言で、世界が静止する。

藤巻のボーカルは、静けさから一気に燃え上がる。サビでは、心の奥底から絞り出すような叫びがスピーカーを突き抜ける。感情をコントロールするのではなく、ありのままさらけ出す――それがこの曲の強さだった。

聴く人の涙を誘うのは、泣かせようとする演出ではなく、むき出しの真実だ。

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2009年、地元・山梨県の成人式でサプライズライブを行ったレミオロメン(C)SANKEI

バンド全体で描いた“温度のドラマ”

『粉雪』のアレンジは、シンプルでありながら奥行きがある。ギターの冷たいストローク、感情に寄り添うストリングスの音色、そして厚みを増していくドラムとベース。音が積み重なるたびに、曲全体がじわじわと熱を帯びていく。

冬の夜の冷気と、人の心のぬくもり――その対比が、この曲を特別なものにしている。サビで藤巻が張り上げる声は、痛みを抱えたまま生きようとする人の叫びのようだ。悲しみの中に宿る“希望の熱”が、聴く者の心を温める。

“等身大の感情”が放つ普遍性

レミオロメンはデビュー当初から、派手な演出や奇抜なビジュアルとは無縁だった。彼らが届けようとしたのは、日常の中にある小さな痛みや希望を、まっすぐに音へ変えること。『粉雪』は、その信念がもっとも純粋な形で結晶した一曲だった。

人と人がすれ違い、思いが届かないまま積もっていく――その“時間の重さ”を、彼らはメロディで描いた。

藤巻亮太の声は叫びながらもどこか儚く、聴くたびに胸の奥の柔らかい部分を震わせる。バンドの音は、技巧や流行ではなく、感情そのものに根ざしている。ギターもドラムも、藤巻の声を支えるために鳴っている。3人で作る音の温度がそのまま人の心に届くからこそ、この曲は20年を経ても古びない。彼らの音楽が放つのは“青春”ではなく、“生きていること”そのもののリアルだった。

今も降り続ける、心の中の雪

あれから20年。街のネオンも、音楽を聴く方法も、すっかり変わってしまった。それでも、冬が来るたびにこの曲はどこかで鳴り響く。イヤホンの中で、車のラジオで、あるいは誰かの記憶の中で。あのサビが流れた瞬間、時代を超えて“心の温度”が上がる。

『粉雪』は、過去を懐かしむ歌ではない。むしろ今を生きる私たちに、小さな勇気を灯す歌だ。どんなに時が流れても、あの叫びは空に溶けず、今日も静かに降り続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。