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30年前、日本中が心を奪われた“こだわりが強い”尖ったポップ 20万枚超えの“ノンタイアップのヒット曲”

  • 2025.10.29

「30年前の秋、あのイントロが流れた瞬間を覚えてる?」

1995年。夜の街角では、カフェや古着屋のスピーカーから、新しいタイプのポップスが鳴り始めていた。軽やかで、知的で、ほんの少し切ない。そんな空気を象徴するように登場したのが、L⇔Rのこの一曲だった。

L⇔R『BYE』(作詞・作曲:黒沢健一)――1995年10月20日発売

8枚目のシングルでありながら、ノンタイアップにもかかわらずランキング初登場6位、20万枚を超えるヒットを記録した。

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※Google Geminiにて作成(イメージ)

言葉よりも音で語る、L⇔Rという存在

L⇔Rは、黒沢健一・秀樹兄弟を中心としたバンド。英国のビートロックをベースにしたサウンドでリスナーを魅了した。派手さよりも構築美。勢いよりも余韻。そんな音楽を武器に、彼らは“静かに尖った存在”として多くの音楽ファンの心を掴んだ。

『BYE』は、その美学が最も洗練された形で結実した曲だ。黒沢健一によるメロディは、どこかアンニュイでありながら、決して沈まない。アップテンポでありながら、疾走感よりも“揺らぎ”を感じさせる構成。まるで夕暮れの街を一人歩いているような感覚を与えてくれる。

“ポップスの知性”が輝いた瞬間

サウンド面では、当時のL⇔Rらしい緻密なアレンジが光る。どの音も無駄がなく、それでいて耳に残る“空気感”をデザインしている。特にサビでふっと抜けるコード展開は、黒沢健一ならではのセンスを象徴している。

L⇔Rの魅力は、単にキャッチーなメロディだけではない。黒沢健一の作る楽曲には、構成やコード進行に英国ポップスの系譜を感じさせる知的さがある。『BYE』でも、その知性はさりげなく滲んでいる。ビートルズやクラウデッド・ハウスを思わせるポップ感に、日本語詞の繊細さを絶妙に溶け込ませる――それは彼らだからこそ到達できた領域だった。

J-POP黄金期の中で異彩を放った理由

1995年といえば、派手なサウンドやドラマタイアップが中心の中、L⇔Rのように“等身大のポップ”で勝負するバンドは稀有だった。

前作『KNOCKIN’ ON YOUR DOOR』で大きく知名度を高めた後でもあったが、『BYE』はその熱量の余韻をまといながらも、ノンタイアップで“音そのもの”の強度を示した一曲だ。語りすぎない美学と緻密なポップセンスを前面に押し出し、ヒットに頼らない地力の高さを証明した。結果として、彼らの表現はより洗練され、その後へと続く活動の土台を確かなものにした。

さよならのあとに残る、優しい余韻

今、改めて『BYE』を聴くと、そのサウンドは不思議なほど古びていない。むしろ、現代のオルタナティブポップに通じる洗練を感じる。黒沢健一の透明感ある声が響くたびに、あの頃の空気――夕暮れの街に吹く少し冷たい風、遠ざかる人影、そして“さよなら”の余韻がよみがえる。

時代を駆け抜けたわけでも、流行に迎合したわけでもない。それでもこの曲が愛され続けるのは、「別れ」さえも“美しい瞬間”として描けるバンドだったからだ。静かに始まり、静かに終わる。けれど確かに、胸に残る。

L⇔R『BYE』は、そんな“音の余韻”を30年経った今も奏で続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。