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30年前、日本中が“笑顔で見送った”ラストシングル 伝説バンドが“解散で遊んだ”ピリオドソング

  • 2025.10.30

「30年前の秋、あのバンドが解散宣言したのを覚えてる?」

どこか冷たい風が街を吹き抜け始めた1995年。世の中が変わり始めていたあの時、日本のロックシーンを駆け抜けた5人組が、まっすぐな笑顔で“ラストソング”を届けた。

プリンセス プリンセス『Fly Baby Fly』(作詞:富田京子・作曲:奥居香)――1995年10月21日発売

バンドとしての通算20枚目、そしてラストシングルとして発売された作品だ。

“解散を遊ぼう”という、前代未聞の別れ

この曲が発売されるとき、彼女たちは「解散」を発表していた。1980年代後半から90年代初頭にかけて、『Diamonds』『世界でいちばん熱い夏』など、時代を彩るヒットを次々に生み出したプリンセス プリンセス。

しかし彼女たちは、同じ速度で輝き続けることを良しとしなかった。自らの終わりを“潔く”“楽しく”宣言したそのテーマこそが「解散を遊ぼう」だった。

つまり『Fly Baby Fly』は、“別れを悲しむための曲”ではなかった。むしろ“これまでを笑顔で送り出すためのロックンロール”だったのだ。

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1996年5月、解散コンサートで熱唱するボーカルの奥居香(C)SANKEI

最後まで“王道プリプリロック”

『Fly Baby Fly』は、奥居香によるキャッチーなメロディと、富田京子のまっすぐな詞が溶け合った、まさに“王道プリプリロック”。イントロから鳴り響くギターには、どこか開放感があり、これまでの彼女たちの代表曲のエネルギーをそのまま引き継いでいる。

サビに向かう瞬間の高揚感、ドラムが刻むリズムの力強さ、そのどれもが、「まだ終わらない」と言わんばかりの輝きを放っている。

“プリンセス プリンセスの音楽は、最後の瞬間までプリプリだった。”

そう言い切れるほど、この曲には迷いがない。別れの歌にありがちな湿っぽさはなく、どこまでも前向きで、むしろ未来へと羽ばたくようなエネルギーに満ちている。

“100作目”という節目の意味

この『Fly Baby Fly』は、彼女たちのキャリアの中で“オリジナルソング通算100作目”という節目を飾る作品でもある。

ライブハウス時代の泥臭さも、女性ロックバンドとして初の武道館の栄光も、すべてを抱えての“100”という数字。その記念碑的な楽曲が、解散ソングであるというのもまた、彼女たちらしい。

この後、翌年には“アンコールシングル”として『夏の終わり』がリリースされるが、公式に“ラストシングル”とされているのは、あくまでこの『Fly Baby Fly』だ。彼女たちの物語は、この曲でひとまずのピリオドを打った。

自分たちの“終わり方”をデザインしたバンド

プリンセス プリンセスのすごさは、ヒット曲の多さだけではない。“終わり方”まで自分たちの手で作り上げたことにある。

解散発表と同時に全国ツアーを開催し、そのステージタイトルに掲げたのが「解散を遊ぼう」。涙ではなく笑顔、喪失ではなく感謝――そのメッセージが全国のファンに届き、「解散」すらひとつの祝祭に変えてしまった。

1996年5月31日、日本武道館で行われたファイナルライブでも、この曲はまっすぐに響いた。「さあ、飛んでいけ」というメッセージを残し、彼女たちは舞台をあとにした。

時代が変わっても残る“潔さ”のロック

今振り返れば、プリンセス プリンセスというバンドは、ただの“女性ロックバンド”ではなかった。メンバー全員で曲を作り上げ、自分たちの言葉と音で勝負してきた稀有な存在。そして“アイドル的な売り方”ではなく、“音楽で時代を動かした”バンドだった。

『Fly Baby Fly』には、そんな彼女たちの信念が凝縮されている。悲しみを力に変えるでもなく、希望を押しつけるでもない。ただ「終わることすら楽しもう」という潔さが、聴く者の心に焼きつくのだ。

それはまるで、当時の日本が抱えていた閉塞感に、そっと風穴を開けるようなラストメッセージ。そして30年経った今も、この曲は“前を向く勇気”の象徴として、静かに生き続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。