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40年前、日本中が恋した“古風だけど洗練された”軽快ポップ “新アイドル像”を確立したイタズラ夏ソング

  • 2025.10.31

「40年前の夏、どんな風が吹いていたか、覚えてる?」

1985年。街にはカセットデッキから音が響き、駅前のショーウィンドウには水着姿のポスターが並んでいた。そんな眩しい季節に、太陽のような笑顔と軽やかなメロディが、日本中を包み込んだ。

小泉今日子『常夏娘』(作詞:緑一二三・作曲:幸耕平)――1985年4月10日発売

デビューから3年、アイドルとして確固たる人気を築いた彼女が放った14枚目のシングル。タイトル通り、全身で夏をまとったようなこの曲は、彼女の存在そのものを象徴する一曲となった。

青春の陽射しが似合う人

小泉今日子――通称「キョンキョン」

彼女が“アイドル”という言葉の枠を軽やかに飛び越え始めたのは、まさにこの頃だった。

『渚のはいから人魚』『迷宮のアンドローラ』『ヤマトナデシコ七変化』『The Stardust Memory』などを経て、可愛さだけではない“意志”や“洒落っ気”をまとい始める。『常夏娘』ではその自由な空気が、さらに鮮やかに開花した。

作詞を手がけた緑一二三による歌詞は、「水着を着た女の子の恥じらい」を、男性目線で描いたユニークなもの。一見すると古風にも思える設定だが、そこに漂う“軽快なユーモア”と“甘酸っぱさ”が、聴く者の心をくすぐった

作曲の幸耕平による軽快なメロディ、編曲の矢野立美によるキラキラとしたサウンドが、まるで真昼の海を駆け抜けるような爽やかさを持っている。

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小泉今日子-1983年撮影(C)SANKEI

ポップスが描いた“恋の瞬間”

『常夏娘』の魅力は、何よりもその「無邪気さと洗練のバランス」にある。テンポの速いサウンドに乗せて歌われる恋のときめきは、アイドルソングの定番のようでいて、どこか“自由な開放感”を感じさせる。

彼女の歌声は甘すぎず、どこかボーイッシュで、時にいたずらっぽい。それが、当時の女の子たちにとっての“理想の夏”を具現化していた。

編曲を担当した矢野立美の手によるアレンジは、ブラスやコーラスが華やかに響き、南国の太陽のように眩しく、まるで風が頬を抜けるように心地よい。

“かわいい”だけじゃない時代のヒロイン

この頃の小泉今日子は、すでに“アイドル像”を自ら更新していた。従来の“清純派アイドル”とはまったく異なる新しい女性像として、多くの支持を集めた。『常夏娘』は、そんな彼女の“変化の途中”に生まれた作品だった。

女の子の純粋さを描きながらも、どこかに自立の気配を漂わせる。笑顔の裏に、“自分の足で歩く強さ”が見え隠れしていたのだ。

夏とともに記憶される名曲

リリースから40年。今聴いても、『常夏娘』のイントロが流れるだけで、あの眩しい季節の記憶が蘇る。

陽射しの中でスカートをひらめかせる少女たち、海辺で笑い合う友人たち――その情景は、きっと誰の中にもある“青春の断片”だ。この曲が残したものは、単なる“夏のポップス”ではない。

季節とともに心を弾ませる感覚そのものを、音楽として封じ込めたという点で、まさに小泉今日子の真骨頂といえる。彼女が放ったまばゆい笑顔と歌声は、今も私たちの心の中で、あの年の太陽のように輝き続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。