1. トップ
  2. 「深夜まで続くピアノ練習」隣家の“騒音”に「もう我慢できない…」→法律のプロが教える、泣き寝入りしない“3つのステップ”とは

「深夜まで続くピアノ練習」隣家の“騒音”に「もう我慢できない…」→法律のプロが教える、泣き寝入りしない“3つのステップ”とは

  • 2025.10.28
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

閑静な住宅街で暮らす人々を悩ませる、隣家からの「騒音」。特に「子どもの声」や「楽器の音」は、生活音として許容すべきか判断が難しく、深刻なご近所トラブルに発展しがちです。

連日鳴り響くピアノの音や、甲高い子どもの声に長期間悩まされ、「もう我慢の限界…」と感じた時、法的な手段に訴えることはできるのでしょうか。

今回は、生活騒音トラブルについて、慰謝料請求が可能になる法的なボーダーラインと、泣き寝入りしないための具体的な対処ステップについて、ベリーベスト法律事務所 齊田貴士 弁護士に解説していただきます。

慰謝料請求は可能?鍵を握る「受忍限度」という考え方

まず結論から言うと、隣家のピアノの音や子どもの声が原因で、慰謝料を請求することは法的に可能です。

しかし、そのためには、その騒音が社会生活を送る上で「我慢すべき限度(=受忍限度)」を超えていると、客観的に認められる必要があります。では、この「受忍限度」はどのように判断されるのでしょうか。

受忍限度の具体的な判断基準は、明確には定まっていません。騒音規制法などの法令や自治体の条例で、デシベル(dB)などの基準値が設けられていますが、これはあくまで目安の一つです。基準値を超えたからといって、直ちに受忍限度を超えたと判断されるわけではないのです。

裁判所が「受忍限度」を超えているかを判断する際には、基準値を目安としつつ、以下のような様々な事情が総合的に考慮されます。

  • 音の大きさや性質:単に音が大きいだけでなく、不快に感じる甲高い音か、衝撃音かなど。
  • 時間帯:多くの人が就寝している深夜や早朝の騒音は、問題視されやすい。
  • 頻度や期間:一時的なものか、毎日・長期間にわたって続いているか。
  • 被害の程度:騒音が原因で不眠症や頭痛などになり、通院が必要になったか。
  • 地域の環境:元々静かな住宅街なのか、商業地域で騒がしい場所なのか。

「ピアノの音」や「子どもの声」といった生活音の場合、ある程度はお互い様という側面もありますが、例えば「深夜まで毎日2時間以上ピアノの練習が続く」「早朝から窓を開け放ったまま子どもが叫び続けている」といった状況が長期間続けば、受忍限度を超えていると判断される可能性が高まります。

慰謝料の相場は?

もし、騒音が受忍限度を超えていると認められ、慰謝料請求が認められた場合、その金額はどのくらいになるのでしょうか。

齊田弁護士によると、「ケースバイケースですが、数万円から50万円程度が目安になることが多いです」とのこと。被害の程度や悪質性によって金額は変動します。

法的措置の前にやるべきこと|弁護士が教える3ステップ

「もう我慢できない」と感じても、感情的に行動するのは得策ではありません。法的な解決を目指すのであれば、冷静に、段階を踏んで対処することが重要です。

Step 1:まず「客観的な証拠」を集める

法的な場で騒音被害を訴えるには、「いつ、どのような音が、どのくらいの大きさで、どれくらいの時間続いていたか」を客観的に示す証拠が不可欠です。騒音計だけでは、どの音が、どういった内容でいつ、どの頻度でなったのかが分からないため、騒音計による計測と並行して、ビデオカメラ等で録画し、証拠の保全を図るようにしましょう。日記のように、騒音があった日時や状況、それによって受けた心身への影響などを詳細に記録しておくことも、有力な証拠となります。

Step 2:話し合いによる解決を模索する

証拠が集まっても、いきなり訴訟を起こすのは最終手段です。特に隣人トラブルの場合、その後の関係も考慮する必要があります。まずは、弁護士を代理人として立て、相手方と交渉する、あるいは裁判所の「民事調停」を利用して、第三者を交えた話し合いによる解決を目指すのが穏当な方法です。専門家が間に入ることで、感情的な対立を避け、冷静な話し合いが期待できます。

Step 3:最終手段としての「訴訟」

交渉や調停でも解決しない、あるいは相手が全く話し合いに応じないといった場合には、損害賠償(慰謝料)や騒音の差し止めを求めて、地方裁判所に訴訟を提起することになります。ここまで来ると、Step1で集めた客観的な証拠が、勝敗を分ける重要な鍵となります。

感情的にならず、まずは「記録」から始めよう

毎日のように続く騒音は、心身ともに大きなストレスとなります。「生活音だから」と一人で抱え込み、我慢し続ける必要はありません。その騒音が社会生活上の限度を超えていれば、法的な手段で解決できる可能性があります。

しかし、その第一歩は、怒鳴り込むことではなく、冷静に証拠を集めることです。客観的な記録は、交渉や調停、そして最終的な訴訟においても、あなたの主張を裏付ける最も強力な武器となります。

もし騒音に悩み、限界を感じているのであれば、まずはこの記事を参考に証拠の記録を始め、早い段階で弁護士などの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

undefined

神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。