1. トップ
  2. 「給水所まで行ったけど…」被災後7日間で直面する“意外な問題”…→災害で“生き延びる”3つの方法とは【防災アドバイザー解説】

「給水所まで行ったけど…」被災後7日間で直面する“意外な問題”…→災害で“生き延びる”3つの方法とは【防災アドバイザー解説】

  • 2025.10.27
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

非常食や飲料水の備蓄は進んでいる一方で、ライフラインが止まった後に直面する「現実的な問題」までは、なかなか想像しにくいものです。

「給水所まで行ったけれど、水を運べない」「簡易トイレを使った後、どう処理すればいいのか…」
そんな“備蓄の次”に起こる課題を乗り越えるには、より実践的な知識が欠かせません。

今回は、備え・防災アドバイザーの高荷智也さんに、被災生活を乗り切るための「次の一手」を伺いました。

「給水所まで行けても運べない」を防ぐために

災害時、命を繋ぐ「災害時給水ステーション」。しかし、高齢者や体の不自由な方にとって、重い水を運ぶのは容易ではありません。この課題を、私たちはどう乗り越えればよいのでしょうか。

高荷さんは、まず「給水ステーションに頼らない備えが基本」だと指摘します。

給水ステーションで配られる水は1人あたり1日約3リットルが目安。最低3日分、できれば7日分の飲料水を自宅に備えておけば、給水所に並ぶ必要もありません。
最近では、長期保存できるペットボトル水を自宅まで届けてくれるサービスもあります。まずは「自助」、つまり個人での備えを徹底することが第一歩です。

次に重要なのが、地域で支え合う「共助」の仕組みです。そのために、次の3つのステップで備えを整えておきましょう。

Step 1:支援が必要な人を把握する
自治会などを通じて、支援を必要とする人を事前に確認。本人の同意を得てリスト化し、地域で共有します。

Step 2:“給水支援チーム”を組織する
作成したリストをもとに、水を運ぶボランティアチームをつくります。防災訓練の際には、どのルートで、誰がどの家に水を届けるかを具体的に確認しておきましょう。

Step 3:運搬グッズを共同で備える
台車やキャリーカート、背負子(しょいこ)などの運搬用具を、自治会やマンションの管理組合で共同購入・備蓄しておくと安心です。自治体の補助金を活用できる場合もあります。

使用済み簡易トイレの衛生的な保管法

断水時に欠かせないのがトイレ対策です。
特に集合住宅では、使用済みの簡易トイレを一時的に各家庭で保管する必要があり、衛生や悪臭、トラブルの原因にもなりかねません。

高荷さんは、「特にトイレの有無は災害時の生活に大きく影響するため、各個人で備蓄トイレを購入しておくことが重要」と呼びかけます。家族一人あたり、50回~100回分の備蓄トイレが入った箱を購入しておくとよいでしょう。

新聞紙やペット砂を使う代替策もありますが、あくまで緊急時の最終手段です。平時の今こそ、専用の備蓄トイレを用意しておきましょう。

また、ゴミ収集が再開されるまでの数日間、使用済みトイレは各家庭で保管する必要があります。近隣トラブルを防ぐために、以下3つのポイントをおさえて、保管するようにしましょう。

<悪臭とトラブルを防ぐ3つのポイント>
1、ゴミ袋を多めにストック
使用済みトイレは普段のゴミ袋に入れ、しっかり縛って密閉します。
2、保管場所は風通しの良い屋外に
直射日光を避け、ベランダや庭などを利用します。
3、蓋つき容器を活用
大型のバケツや衣装ケースなど、臭いを抑えられる容器にまとめて保管しましょう。

忙しくてもできる!家庭での「新・防災訓練」

防災訓練の重要性は理解していても、多忙で参加が難しいと感じる人も多いでしょう。

防災訓練には、「命を守るための訓練(避難、初期消火など)」と、「生き延びるための訓練(避難所運営、給水支援など)」があります。

家庭での最優先事項は、もちろん「命を守るための訓練」。まずは“災害で死なない”ための訓練を日常に取り入れましょう。

安全ゾーンを決めて“逃げる練習”を習慣化

自宅の中に、『安全ゾーン』を決めてください。これは、大きな地震が来ても家具が倒れず、物が落ちてこない、ガラスが飛散しない場所のことです。廊下や玄関周りが候補になりやすいでしょう。そして、緊急地震速報が鳴ったり、少しでも揺れを感じたりしたら、考えるより先に体が動くレベルで、その安全ゾーンへ逃げ込むことを“習慣”にするのです。

防災リュックを背負って避難ルートを歩く

実際に避難する時に背負う予定の防災リュックを背負い、最寄りの避難場所まで歩いてみましょう。これにより、荷物が重すぎないか、ルート上に危険な場所はないかなどをリアルに体感できます。昼と夜、晴れの日と雨の日など、条件を変えて行うと、さらに実践的な訓練になります。

備蓄の次の一歩が、あなたと地域を守る

水や食料を備えるだけでは、災害への備えは充分とは言えません。「どう使うか」「使った後どう処理するか」「どう動くか」までを考えることが、本当の防災につながります。

今日から、あなたの家庭と地域で「備蓄の次の一歩」を踏み出してみませんか。


監修者:高荷智也(合同会社ソナエルワークス 代表|備え・防災アドバイザー)
「備え・防災は日本のライフスタイル」をテーマに「自分と家族が死なないための防災対策」のポイントを体系的に解説するフリーの防災専門家。大地震や感染症など自然災害への備えから、銃火器を使わないゾンビ対策まで、堅い防災を分かりやすく伝える活動に定評があり、講演・執筆・メディア出演の実績も多い。防災YouTuber、Voicyパーソナリティとしても活動する。著書に「今日から始める家庭の防災計画」「防災リュックはじめてBOOK」他多数。1982年、静岡県生まれ。

監修者サイト:備える.JPhttps://sonaeru.jp/