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整形後、カウンセリングと“別の顔”に…→契約書サインしたら“自己責任”になる?賠償請求できる“たった2つの条件”【法律のプロが解説】

  • 2025.10.29
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

コンプレックスを解消し、理想の自分に近づくために一大決心をする美容整形。しかし、その裏では「カウンセリングと全く違う顔にされた」「手術が原因で後遺症が残った」といった、悲痛な失敗談が後を絶ちません。多くの人が手術前にリスクを説明した同意書や契約書にサインをしますが、それによって全てが自己責任となり、納得のいかない結果でも「同意したのだから」と泣き寝入りするしかないのでしょうか。

今回は、美容整形の失敗をめぐるトラブルについて、クリニックに損害賠償を請求できる法的な条件や、実際に取るべき行動について、じょうばん法律事務所 鬼沢健士 弁護士に解説していただきます。

「同意書にサイン=全て自己責任」ではない

まず最も気になるのが、「リスクに同意する」という書類にサインをしてしまったら、もうクリニックの責任は問えないのか、という点です。

結論から言うと、サインをしていても責任を追及することは「可能」です。

そもそも同意書は、事前に説明された範囲の治療内容やリスクに同意するものです。そのため、説明とは全く違う結果になったり、説明内容が果たされなかったりした場合には、同意の効力は及びません。

また、契約書の中に「いかなる場合も損害賠償請求はできません」といった条項があったとしても、諦める必要はありません。医師と患者の間には医療知識に大きな差があるため、そのような一方的に患者に不利な条項は、その効力が否定されることが多いのです。

賠償請求できる2つの代表的ケース

では、具体的にどのような場合にクリニックの責任を問えるのでしょうか。

代表的なケースは大きく分けて2つあります。

一つ目は「医師の明らかなミス(過失)」があった場合です。例えば、手術後に大きな傷跡が残った、本来切除する必要のない部分まで切除してしまった、といったケースでは、医師の過失を理由に損害賠償を請求できる可能性が高いでしょう。

二つ目は「事前の説明が不十分だった(説明義務違反)」場合です。患者には、医師からの十分な説明に基づき、自ら治療を受けるかどうかを決める権利があります。特に美容整形は、生命に関わる治療と比べて必要性が低いと見なされるため、医師にはより丁寧で高度な説明義務が課せられます。この説明が不十分なまま手術が行われた場合、患者の自己決定権を侵害したとして、賠償請求の対象となりうるのです。

「失敗」の境界線と請求できる賠償内容

美容整形は結果の評価に主観が入りやすいため、「個人的に気に入らない」というだけでは、法的な責任を問うことは困難です。

法的な「失敗」と認められるかどうかは、「社会通念に照らして、我慢すべき限度(受忍限度)を超えているか」という客観的な基準で判断されます。

では、実際に賠償請求が認められた場合、どのような費用を請求できるのでしょうか。まず、失敗した手術の費用は、契約が果たされなかったとして返還を求められる可能性があります。

また、失敗の程度によっては、元に戻すための再手術費用や、精神的苦痛に対する慰謝料も請求の対象となります。慰謝料の金額は、傷跡の大きさや部位といった失敗の度合いによって決まりますが、交通事故の後遺障害の基準が参考にされる傾向にあります。ただし、健康そのものを害したわけではないため、金額は100万円未満に落ち着くケースも少なくありません。

泣き寝入りしないために…まず集めるべき「証拠」

万が一、美容整形でトラブルになってしまった場合、泣き寝入りせずに専門家に相談することが重要です。

その際、交渉や裁判を有利に進めるために不可欠なのが「証拠」です。鬼沢弁護士によると、特に重要なのが「美容整形前と後の写真」で、これが立証のほぼ全てを担うと言っても過言ではありません。客観的に変化を示す写真は、何よりの証拠となります。

その他にも、カウンセリング時に受け取った資料やメモ、手術後の経過についてクリニックに問い合わせた際の音声記録なども有効です。さらに、他のクリニックでセカンドオピニオンを受け、専門的な意見書や鑑定書をもらうことも、後の交渉で大きな力になります。

納得できない結果に終わった時、感情的になる前に、まずは冷静に証拠を集め、専門家への相談を検討しましょう。


監修者名:鬼沢健士 弁護士

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茨城県取手市でじょうばん法律事務所所属。
できる限り着手金無料で、労働問題(不当解雇、未払残業代等)や詐欺被害救済に積極的に取り組んでいる。