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28年前リリース→60万枚超を刻んだ“壊れそうで美しい”危険ソング 中性シンガーが放つ“挑発的な一曲”

  • 2025.10.23

「28年前、街を歩けば、あの髪色と旋律がそこかしこにあったのを覚えてる?」

音楽もファッションも“自分らしさ”を競い合っていた1997年。華やかで少し退廃的なムードが、都会の夜を包んでいた。そんな時代の空気を凝縮したような1曲が、ひときわ異彩を放ちながら登場した。

SHAZNA『Melty Love』(作詞:IZAM・作曲:A・O・I)――1997年8月27日発売

インディーズ時代から歌われてきたこの曲が、メジャーデビューシングルとして放たれるや、60万枚を超えるセールスを記録。中性的なルックスと甘くメロディアスな世界観が、当時の若者の心を一瞬で虜にした。

華やかさと儚さが同居した“異端の存在”

SHAZNAが登場した当時、ヴィジュアル系というジャンルはすでにX JAPANやLUNA SEAやらが確立していた。だが、彼らが切り開いた“激しさ”や“耽美的”とはまた違った魅力をまとっていた。

ボーカル・IZAMの派手髪とキュートでロマンティックな衣装。どこか性別の枠を超えたその姿は、まさに時代を挑発するようでもあった。一方で、A・O・Iのメロディはシンプルでポップ。ロックの構造を持ちながら、J-POPとしての親しみやすさを兼ね備えていた。この見た目と音のギャップこそが、SHAZNAを一躍スターダムへと押し上げた要因だった。

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SHAZNAのIZAM-1998年撮影 (C)SANKEI

甘くとろける“90年代の幻想”

『Melty Love』のイントロが流れ出すと、まるで香水のように漂うギターサウンドが、聴く者を一瞬で異世界に連れていく。Aメロで印象的なファルセットが耳に残り、サビで一気に広がるメロディは、恋の甘さと切なさが混ざり合うような心地よさを持っている。

IZAMのボーカルは、決して力強くはない。それでも、「壊れそうな美しさ」が曲全体を包み込み、聴く人に“守りたくなる感情”を呼び起こした。まるで現実と夢の境界が曖昧になるような、幻想的な時間が流れていた

時代を変えた“ヴィジュアル革命”

この作品は、単なるヒット曲ではない。1990年代後半、SHAZNAの登場はヴィジュアル系という言葉の意味をさらに拡張した。

カラフルで中性的な世界観、甘く繊細なラブソング。そこには、ロックの枠を超えて「自分をどう生きるか」を問いかけるメッセージがあったように思える。IZAMの存在は、単なるボーカリストを超え、当時の若者にとって“自分の中の新しい可能性”を象徴していたのかもしれない。

一瞬の熱狂が残した永遠の余韻

『Melty Love』のヒットにより、SHAZNAはメディアの寵児となった。テレビに、雑誌に、CMに。彼らの姿を見ない日はなかった。

その一方で、派手なイメージの裏にあった音楽的な完成度は高く、後年のヴィジュアル系バンドたちに確かな影響を与えている。彼らが提示した「美しくて切ないポップス」は、90年代後半の空気そのものを象徴するようだった。

やがて時代は変わり、メイクや衣装を脱ぎ捨てても、『Melty Love』だけは不思議な透明感を保ったまま輝き続ける。夢のように儚く、でも確かに存在した“美の瞬間”。それがSHAZNAの残した最大の遺産だった。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。