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30年前、140万枚超を売り上げた“派手に鳴らなくても骨太な”爆発ソング ロックに収まらない成熟の一曲

  • 2025.10.23

「30年前のあの日、あなたはどんな音を聴いていた?」

1995年。ネオンが少し寂しく見える夜、どこかのカーステレオから、心を震わせるサウンドが流れていた。それは、時代のざわめきと向き合うように生まれた1曲だった。

B’z『ねがい』(作詞:稲葉浩志・作曲:松本孝弘)――1995年5月31日発売

彼らにとって16枚目のシングルとなるこの曲は、140万枚以上を売り上げ、日本中を再び熱狂させた。デビューから数年で頂点に立ち、勢いを増す一方のB’zが、音楽的にも精神的にも次のステージへ進む節目にあたる作品だった。

ジャジーなイントロが導く“静と動のドラマ”

冒頭のピアノと松本によるギターのカッティングが、まるで夜の都会に差し込むスポットライトのように響く。そこから流れるジャジーなグルーヴが、当時のB’zの中でも異彩を放っていた。

サウンドの骨格を支えるのは、リズム隊の確かなビートと、松本孝弘のギターが描く滑らかなコードワーク。そしてBメロでテンションを高め、サビで一気にブラスとともに爆発する――その構成の美しさは、まさに職人技と呼ぶべきものだった。

この曲は単なるロックでも、ポップスでもない。ブルースやジャズの要素を吸収しながら、「B’zにしかできない音のドラマ」として完成されている。

デビュー当初から、デジタルサウンドやシンセを巧みに使いこなし、ハードロックからポップス、そしてブルースまで――B’zの音楽は常に進化を続けてきた。そんな彼らが『ねがい』で見せたのは、その積み重ねの先にある“新しいB’z像”だった。聴く者に「まだこの先がある」と感じさせるような輝きを放っていた。

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B'z(C)SANKEI

稲葉浩志の声が持つ“祈り”のような力

『ねがい』というタイトルの通り、歌の中心にあるのは「強く願う」という感情。稲葉浩志のボーカルは、内側から滲むような熱を帯びている。その芯の強い声の中に「生きるリアルな強さ」がある。

90年代半ば、バンドブームの勢いが落ち着きつつある中で、B’zは“時代の象徴”であり続けた。その理由は、彼らの楽曲が単なる勢いや青春ではなく、「大人の感情」を描き始めていたからだ。『ねがい』のボーカルには、そんな“成熟した衝動”が宿っている。

“勢いの時代”から“深化の時代”へ

1995年といえば、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件など、日本全体が大きな不安に包まれた年でもある。浮かれた時代が終わり、人々が現実と向き合わざるを得なくなった。

そんな空気の中で、『ねがい』の持つメッセージは、多くの人の胸に深く刺さった。B’zの音楽はいつも「力」を与えるものだったが、この曲では“静かな勇気”を感じる

松本孝弘のギターが、派手に鳴らなくても存在感を放ち、稲葉浩志の言葉が、グッと心を掴む。それは、「闘うだけが強さじゃない」という新しい価値観を提示していたようにも思う。

時代を超えて鳴り続ける“願いの音”

30年経った今でも、この曲を耳にすると、不思議と背筋が伸びる。疲れた夜でも、迷いの中でも、「もう一度、前を向こう」と思えるような力が宿っている。

それは、90年代のサウンドに閉じ込められたままではなく、今の時代にも響く“普遍の願い”。“強くなくていい、でも諦めない”――その姿勢こそが、B’zという存在の根幹にある。

『ねがい』は、そんな彼らの音楽哲学を最もストレートに伝える1曲として、今も多くの人の胸で鳴り続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。