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「傑作だけど二度と観れない」“異例の評価”が相次ぐ名映画…「全人類観て欲しい」制作陣自ら“R18+指定”にした衝撃作

  • 2025.10.16

傑作と語り継がれながらも、今では観ることが極めて困難になってしまった邦画が存在します。権利問題やフィルムの散逸といったさまざまな理由から、その姿をなかなか現さない名作たち。今回は、そんな“幻の名作邦画”5選をセレクトしました。

本記事では第4弾として、2016年公開の映画『無垢の祈り』(DEEP END PICTURES)をご紹介します。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

“幻の名作邦画”『無垢の祈り』

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※Google Geminiにて作成(イメージ)
  • 作品名(配給協力):映画『無垢の祈り』(DEEP END PICTURES)
  • 公開日:2016年10月8日

あらすじ

平山夢明さんの短編小説『独白するユニバーサル横メルカトル』に収録されている一編『無垢の祈り』を原作に、DEEP END PICTURESの配給協力のもと、亀井亨監督が自主制作した実写映画。

10歳の少女・フミ(福田美姫)は、学校では陰湿ないじめを受け、家に帰れば義父のクスオ(BBゴロー)から日常的な虐待を受けるという、逃げ場のない日々を送っていました。母親のカオル(下村愛)も夫の暴力から目をそらすように新興宗教にのめり込み、フミに救いの手を差し伸べる大人はいませんでした。

永遠に続くかのような絶望の中、フミは自分の住む町で連続殺人事件が起きていることを知ります。フミは、自分を苦しめる人々とは違うその犯人に不思議なシンパシーを感じ、犯行現場を巡る小さな旅を始めることに。そして、自分と同じ孤独を抱えているかもしれない殺人鬼に向けて、あるメッセージを残すのでした―。

映画『無垢の祈り』の見どころ※ネタバレあり

映画『無垢の祈り』は、観る者の良識や倫理観を根底から揺さぶる絶望的な描写が見どころ。作品全体にどんよりとした暗い雰囲気が漂う中、生々しく痛々しい暴力描写が映し出されます。SNSでは「傑作だけど二度と観れない」「観るたびに二度と観ないと思ってる」「好きだけど二度と観れない」といった異例の声があがるほど、その描写は観客に強烈なインパクトを与えました。

本作のもうひとつの評価ポイントは、少女虐待というテーマを一切の妥協なく描き切った、重すぎるストーリーです。あまりの重厚なストーリーに、原作ファンから「小説より重い」と、原作を超えるほどの凄まじさに圧倒される声が上がるほどでした。そんな地獄のような物語で存在感を示していたのが、主演を務めた福田美姫さんの演技です。SNSでは「素晴らしかった」という感想が寄せられており、福田さんの演技が本作に圧倒的なリアリティを与えていました

制作陣が自らが“R18+”に指定…観客・主演女優への徹底した配慮のもと撮影された傑作

凄惨な児童虐待を真正面から描き、そのあまりに衝撃的な内容で物議を醸した映画『無垢の祈り』。本作は映倫の審査ではなく、制作陣が自らレーティングを“R18+”に指定するという、極めて異例の形で公開されました。その異例の決断の裏には、制作陣の強い倫理観と観客への深い配慮がありました。ストリーミングサービス「DICE+」にトークショーの模様が掲載されており、亀井亨監督が決断の真意を次のように語ったことが明らかになっています。

今現時点でそういう状態にある人、とかは多分これを観ると物凄くキツくなるんですよね。それは避けたいし、成人とか成熟していない人間がこれを観て判断することは良くないなと思って自主規制のR18+にして出典:『『無垢の祈り』DICE+にて独占配信スタート』DICE+ 2022年8月26日配信

監督の配慮は観客だけでなく、当時9歳だった主演の福田美姫さんへも最大限に向けられていました。監督は、特に性的虐待という難しい描写を撮影するにあたり、人形を悪い部分の象徴として使ったり、カットバックという手法で本人が過酷な場面を直接見ないようにしたりと、細心の注意を払っていたそうです。また、暴力に関しても、福田さんが理解できるように、学校でのいじめについて交えながら時間をかけて丁寧に説明したと言います。

自主制作ながらも徹底した配慮のもとで撮影が行われた制作陣の強い意志が、本作が傑作と言われる理由のひとつかもしれません。

「全人類観て欲しい」と称される映画『無垢の祈り』を観たことがない方、また本記事を読んで興味を持っていただけた方は、“観る者の魂を削る壮絶なストーリー”をぜひご覧ください!


ライター:天木拓海
映画・アニメ・ドラマなど、エンタメ作品を観ることを趣味としているライター。エンタメ関連のテーマを中心に、作品考察記事/コラム記事などを手掛ける。

※記事は執筆時点の情報です