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30年前、鮮烈デビューでラブソング史を塗り替えた“骨太で生々しい”欲望むき出しソング 新章を切り拓いた“大胆な一曲”

  • 2025.10.18

「30年前の街の匂い、覚えてる?」

1995年、夜の繁華街にはネオンが瞬き、恋も仕事も勢いで走り抜けるような空気があった。そんな時代に、ひときわ強烈なインパクトを放ったデビューシングルがある。

VANILLA『愛をちょうだい』(作詞:森雪之丞・作曲:野山昭雄)――1995年7月21日発売

情熱と欲望をストレートに歌い上げたこの曲は、当時の空気のざわめきと重なり合い、聴く者の胸に生々しい熱を残した。

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※Google Geminiにて作成(イメージ)

大胆すぎる船出を切った、新生バンドの姿

VANILLAは1993年、ユニコーンを脱退したドラマー川西幸一を中心に結成された。ボーカルとして笹本希絵を川西が見出し、実力派のメンバーと新星のボーカルが揃って誕生したのがこのバンドだ。

つまり『愛をちょうだい』は、バンドの看板を背負った笹本にとって、プロとしての最初の一歩でもあった。作詞は数々のアーティストに楽曲を提供してきた森雪之丞、作曲はギターの野山昭雄が手掛けた。豪華布陣によって送り出された作品は、ただのデビュー曲にとどまらず、聴く人に強烈な印象を焼き付ける一撃となった。

求める声が突き刺さる、熱のこもった歌唱

この曲の最大の魅力は、笹本の歌声が持つ「切実さと激しさ」だ。女性の欲望をテーマにした歌詞を、若さと荒削りな熱で押し切るように歌う。そこには技巧を超えた生々しさが宿っていた。

バンド全体のサウンドもまた重厚だ。川西の力強いドラミングを土台に、ギターとベースがタイトに絡み合い、そこへ鋭利なメロディが乗る。派手すぎないが骨太で、どこか洋楽的な空気すら漂わせていた。

“激しい恋愛”を描いた90年代的な衝撃

『愛をちょうだい』の歌詞は、女性が求める恋の激しさをストレートに描いたもの。当時のJ-POPがまだ甘いラブソング全盛だった中で、欲望を隠さず突き出すような表現は異彩を放っていた。

90年代に芽吹いた自由さや大胆さを象徴するような存在であり、時代の変化を感じさせるデビュー曲だったといえる。

川西幸一の新しい挑戦

川西にとっても、VANILLAは新たな挑戦だった。すでに国民的人気バンドで活動していた彼が、あえて新しいフィールドに踏み出したことは、音楽界に少なからず驚きを与えた。

川西の安定したリズムワークが、荒々しいデビュー曲をしっかりと支えていた点は見逃せない。また、歌詞を担当した森雪之丞は、演劇的かつドラマティックな詞世界を得意とする作家。彼の手腕が、笹本の直情的なボーカルをさらに際立たせた。

余韻としての“90年代の情熱”

思い返せば、1995年という時代は音楽シーンが多様化し始め、個性や挑戦が評価される空気が育ちつつあった。『愛をちょうだい』は、そんな時代の波に呼応するように誕生した曲だった。

30年が経った今、改めて聴くと、その熱量と切実さが真っ直ぐに胸を突いてくる。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。