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35年前、アニメMVの衝撃が走った“硬派だけど遊び心まんさいな”疾走ソング 原点と現在をつなぐ“エネルギッシュな一曲”

  • 2025.10.18

1990年の初夏、まだ街のどこかにバブルの余韻が漂っていた頃。煌びやかなネオンの下を走るタクシー、喧騒の合間に響く音楽は、時代の気分をまるごと映し出していた。そんな空気を突き抜けるように登場した曲がある。

矢沢永吉『PURE GOLD』(作詞:売野雅勇・作曲:矢沢永吉)――1990年5月23日発売

ソロデビュー15周年という節目に送り出されたこの曲は、当時放送されていたTBS系ドラマ『ホットドッグ』の主題歌としても話題を呼び、多くの人々の耳と記憶に刻まれることになる。

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矢沢永吉-1997年撮影 (C)SANKEI

熱と哀愁を纏ったロックンロール

『PURE GOLD』のサウンドは、矢沢が持つロックンロールの王道と、90年代初頭の都会的な香りが溶け合ったものだ。力強いギターリフ、鋭く切り込むリズムセクション、その上で響く矢沢のボーカル。派手すぎる演出を避けながらも、聴けば体が自然と動き出すような疾走感が全編を貫いている。

売野雅勇の描く歌詞は、ストレートでありながらも大人の余韻を含み、矢沢の声によってさらに深みを増す。まさに90年代という時代の入口で生まれた、矢沢流ロックの象徴だった。

ドラマと共鳴した存在感

『PURE GOLD』は、柳葉敏郎主演のドラマ『ホットドッグ』の主題歌として採用された。物語は、柳葉敏郎が演じるテキ屋の青年が4人の子どもたちと織りなす青春ドラマだ。仙道敦子や大沢樹生らが共演し、90年代初頭のテレビシーンを彩った。

その情熱的で温かな物語に、矢沢のエネルギッシュな楽曲が重なり、ドラマの持つ人間味や熱量をさらに引き立てた。家庭的な温もりとロックのサウンドが響き合った瞬間でもあった。

アニメーションで描かれたヒーロー像

さらにユニークだったのが、この楽曲のミュージックビデオだ。制作を手がけたのは『ルパン三世』で知られるモンキー・パンチ

映像には矢沢に似たヒーローが登場し、ギター型のバイクに跨って悪の組織と戦い、女性を救い出す姿が描かれている。アニメと矢沢サウンドの融合が画期的で、矢沢という人物のカリスマ性を“現実と虚構の両面”から浮かび上がらせた。

デビュー曲との“黄金の再会”

『PURE GOLD』のカップリングには、矢沢がソロデビュー曲として発表した名曲『I LOVE YOU,OK』の新録バージョンが収められている。しかも録音はアメリカ・ロサンゼルスで行われ、デビューから15年を経た矢沢の声と表現力で、原点の名曲が新たな息吹を得ることになった。

この組み合わせは単なる偶然ではなく、過去と現在を繋ぎながら未来へ進む矢沢の姿勢を鮮明に物語っていた。

黄金に輝き続ける矢沢の軌跡

『PURE GOLD』がリリースされた1990年は、音楽シーン全体が変化の渦にあった。アイドルからアーティストへの移行、ジャンルの細分化。そうした時代のうねりの中で、矢沢は“変わらない存在感”を持ちながらも、新しい表現を果敢に取り入れていた。

だからこそ、この楽曲は今振り返っても鮮烈で、聴く者の胸を熱くし続ける“永遠の金色の一曲”として輝きを失わないのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。