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40年前、日本中が心奪われた“控えめだけど心を掴む”デビューソング おニャン子から羽ばたいた“清純ヒロインの名曲”

  • 2025.10.17

「40年前の秋、あなたはどんな音楽に耳を傾けていただろう?」

1985年、街を歩けばカセットデッキから流れるヒットソング、テレビの画面を埋め尽くすアイドルの笑顔。そんな空気の中で、一人の少女が静かにスポットライトを浴びる。おニャン子クラブの一員から、ソロとして立ち上がった瞬間だった。

河合その子『涙の茉莉花LOVE』(作詞:T2・作曲:後藤次利)――1985年9月1日発売

透明感をまとったデビュー

この楽曲は、河合その子にとってのソロデビューシングル。おニャン子クラブの中でも清楚で落ち着いた存在の彼女にふさわしく、淡く透き通るような旋律で幕を開けた。作曲を担当した後藤次利はのメロディセンスが河合の声に柔らかく寄り添っている。歌詞も、そっと心の奥で揺れる感情をすくい上げてくれる。その繊細な表現が、彼女の静かな存在感と響き合い、印象深い1曲に仕上がっていた。

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河合その子-1985年撮影 (C)SANKEI

河合その子という存在

河合その子は、1985年春におニャン子クラブのメンバーとなる。多数のアイドルが並ぶ中で、静かに微笑む姿で独自の存在感を放っていた。大人びた雰囲気と、透き通るような歌声。グループの“清純派象徴”とも言えるポジションを確立したのが彼女だった。

グループ全体の華やかさとは異なる、彼女にしか表現できない世界観が、この楽曲でもしっかりと息づいていた。

魅力の核心にある“静けさ”

『涙の茉莉花LOVE』の最大の魅力は、全体に流れる“余白の美しさ”にある。サビで大きく盛り上げるわけではなく、淡々と、けれど確かに胸を揺らす旋律。河合その子の声は決して力強いものではないが、耳にそっと寄り添う柔らかさを持っている。そこに後藤次利のメロディが重なることで、儚くも鮮烈な印象を残した。

華やかな時代のただ中で、あえて声を張り上げずに伝える。その控えめな表現が、むしろ聴く人の心を強く掴んだのだ。

このシングルには後藤次利の編曲センスも色濃く反映されているが、その頃から河合の持つ魅力に強く惹かれていたのかもしれない。『涙の茉莉花LOVE』は、一人の少女のデビュー作であると同時に、その後の彼女の道を示す楽曲でもあったんだと今では思う。

静かに咲いた花の記憶

『涙の茉莉花LOVE』が放ったのは、華やかな光ではなく、静かな余韻。河合その子はその後もソロ活動を続け、シンガーとして独自の道を歩んでいくことになるが、このデビューシングルは彼女の原点として、多くの人の記憶に残り続けている。

40年という時を経てもなお、あの透明感は色あせない。秋の夜にふと耳を澄ませば、どこかで流れているような――そんな静けさをまとった一曲。それが、河合その子の『涙の茉莉花LOVE』なのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。