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クマ被害者、「自己責任」で“泣き寝入り”?…過去「野犬が幼児を襲った」事故では“行政が敗訴”。「クマ」の場合は

  • 2025.11.12
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出典:photoAC(画像はイメージです)

クマによる被害が相次ぎ、深刻な社会問題となっています。SNSでも「異常事態だ」「怖すぎる」といった不安の声が広がっていますが、もし被害に遭った際、それは単なる「自己責任」なのでしょうか。

法的な観点では、必ずしもそうとは言えません。行政には住民の安全を守る義務があり、土地所有者にも土地を適切に管理する責任があります。もし行政が危険を予見できたにもかかわらず対策を怠ったり、放棄された土地がクマの温床になったりしていた場合、損害賠償責任が認められる可能性があります。

この記事では、クマ被害をめぐる法的な責任の所在について、アディーレ法律事務所 近藤姫美 弁護士に詳しくお話しを伺いました。

クマ被害は本当に「自己責任」?行政や土地所有者の責任範囲とは

クマによる被害は、しばしば「自己責任」と考えられがちですが、法的な面から見ると必ずしもそうではありません。

行政には、権限を適切に使う義務があります。例えば、防護柵の設置やクマの駆除など、行政がきちんと対策を講じていれば被害が防げたケースでは、国家賠償法に基づいて責任を問うことができる場合はあります。ただし、クマ被害に遭ったからすべて行政の責任を問えるわけではありません。行政ができる限りのことをしても被害が避けられなかった場合は、責任を問うのは難しいでしょう。

また、土地の所有者は民法717条により土地工作物の責任を負っています。耕作を放棄してクマの繁殖場所となってしまい、何も対策をしていなければ、責任が問われることもあり得ます。つまり、クマ被害をめぐっては、行政だけでなく土地所有者の役割も重要であり、「すべて自己責任」と簡単に片付けるのは誤解です。

行政に損害賠償を求める場合の争点とは?対策の不十分さをどう判断するか

野生動物による被害を受け、行政に損害賠償を求める場合、法的には「行政がやるべきことを怠ったか」が大きな争点になります。

国家賠償法は、故意又は過失があることを要件としています。行政が野生動物による人身等への被害が出ることについて予見可能であり、なおかつ行政が対策をとっていれば被害を防ぐことができたといえるかどうかという点もポイントです。

特にクマが人里に頻繁に現れ、市街地を歩き回っている状況なら、被害の予測はしやすいと考えられます。後から見て、行政の対応が不十分だったと認められるかどうかは、今後の対策で被害が減ったかどうかなども参考にされます。つまり、行政の対応が遅かったかどうかが争点となり得るのです。

過去の判例から見る行政の責任認定のポイント

野生動物による被害で行政の責任が認められた事例として、幼児が野犬に襲われ死亡した事件があります(東京高判昭和52.11.17判例時報875号17頁、大阪地判昭和63.6.27判例時報1294号72頁等)。いずれのケースでも、野犬が徘徊し被害が予想されていたにもかかわらず、行政が適切な措置を取らなかったため、責任が認められました。行政が権限を使って被害を防ぐことが可能であったと判断されることも重要なポイントです。

また、高速道路で走行中の車が野生のエゾシカと衝突した事例(札幌地判平成10年12月14日(判例時報1680号109頁))では、道路の管理に問題があったとして行政責任が認められました。クマも大型の野生動物であり、同様に高速道路などでクマと衝突すれば行政の責任が問われる可能性は十分にあります。

クマ被害における法的責任のポイント

クマ被害は単なる「自己責任」ではなく、行政や土地所有者の責任も法的に問われることがあります。

行政には地域の安全を守るための義務があり、適切な対策を怠れば損害賠償責任を負う場合もあるのです。被害者や遺族が行政の対応を問題視する場合、「行政がやるべきことを怠ったか」「被害を予見できたか」「対策で防げたか」が重要な争点となります。過去の判例からも、行政の権限行使の有無や適切さが責任認定のカギであることがわかります。

クマ被害に直面したときは、法的な視点から行政や土地所有者の役割を理解し、冷静に対応することが大切です。


監修者:近藤姫美 弁護士(埼玉弁護士会所属) アディーレ法律事務所大宮支店

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