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業者「今すぐ修理しないと危険」その後、届いた“数十万円”の高額請求→悪質な「レスキュー商法」…支払うしかないって本当?

  • 2025.10.5
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「水漏れが止まらない」「トイレが詰まった」――。そんな突然の水のトラブルに見舞われた際、慌ててインターネットで修理業者を探し、依頼したところ、作業後に数十万円もの高額な料金を請求される「レスキュー商法」の被害が後を絶ちません。
「今すぐ修理しないと大変なことになる」などと巧みに不安を煽り、冷静な判断ができない状況で高額な契約を結ばせるのが典型的な手口です。
もし、このような悪質なトラブルに巻き込まれてしまったら、支払いに応じるしかないのでしょうか。そして、騙されないためにはどうすればよいのでしょうか。消費者問題に詳しい弁護士に、法的な対処法と自衛策について聞きました。

その契約、取り消せる?高額請求への法的な対抗手段

ーー「今すぐやらないと大変なことに」と煽られ高額な契約をしてしまいました。契約の無効や取消しは主張できますか?

結論から言うと、複数の法律を根拠に契約の取消しや無効を主張できる可能性があります。 泣き寝入りする必要はありません。

1. クーリング・オフ(特定商取引法)

まず優先的に検討すべきなのが「クーリング・オフ」です。これは、一度契約をしても、一定期間内であれば無条件で契約を解除できる制度です。

「自分から業者を家に入れたのだから、訪問販売には当たらず、クーリング・オフはできないのでは?」と思うかもしれません。原則としてその通りですが、レスキュー商法の典型的なケースでは、例外的にクーリング・オフが認められる可能性があります。

  • 見積もりのつもりで呼んだのに、その場で契約させられたケース
  • 広告の「修理代〇〇円~」といった安価な価格を信じて依頼したのに、正当な理由なく高額な料金を請求されたケース

これらの場合は、消費者の意に反した勧誘とみなされ、クーリング・オフの対象となる可能性があります。書面を送付するだけで手続きが可能です。

2. 消費者契約法や民法による取消・無効

クーリング・オフ期間が過ぎてしまっても、諦めるのはまだ早いです。以下の主張が考えられます。

  • 不実告知による取消(消費者契約法): 「この部品交換は必須です」など、契約の重要な事実について業者が嘘を告げ、それを信じて契約してしまった場合。
  • 詐欺や錯誤による取消(民法): 安い価格だと消費者を誤認させて契約を結ばせた場合。
  • 公序良俗違反による無効(民法): 契約内容が社会の常識から著しく逸脱しており、不当に高額である場合、契約そのものが無効だと主張できます。

これらの手段を主張する際には、「その価格だと事前にわかっていれば契約しなかった」という点が共通の重要なポイントになります。

集めておくべき証拠

契約の取消しや返金交渉を有利に進めるためには、証拠が不可欠です。

  • 契約書、見積書、請求書、領収書
  • 業者のウェブサイトの料金表などがわかるページのスクリーンショット
  • 業者とのやり取りの録音やメモ、写真(修理前・修理後)

「不当に高額」だと争えるか?料金の妥当性の判断基準

ーー請求額が一般的な相場からかけ離れています。「不当に高額だ」として争うことは可能ですか?

はい、可能です。 ただし、「ただ高い」という理由だけで法的に争うのは困難です。価格設定は基本的に事業者の自由だからです。

法的に「不当」だと主張するためには、「相場からの乖離が極めて著しい」「事前の説明と金額が全く違う」といった客観的な事実が必要です。

その妥当性を立証するために有効なのが、以下の2つです。

  1. 他業者のウェブサイトや見積書 複数の業者から見積もりを取ることで、「この業者だけが異常に高額である」ことを客観的に示すことができます。
  2. その業者のウェブサイト上の価格表記 レスキュー商法では、「修理代5,000円~」といった曖昧な価格表示が多用されます。しかし、弁護士は「『5,000円~』という表記から、消費者が10万円もの請求を予測することは困難」と指摘します。このような予測の範囲を著しく超えた請求は、不当性を裏付ける有力な証拠になり得ます。 慌てている状況でも、依頼する前に業者のサイトをスクリーンショットで保存しておくことが非常に重要です。

被害に遭わないために!今すぐできる最強の防御策

ーーこうした被害を防ぐために、消費者が取るべき最も効果的な対応は何でしょうか?

1. 納得できない価格なら、その場で契約しない

最も重要かつ効果的な防御策は、「納得できないのであれば、その場で契約しない」ことです。レスキュー商法は、消費者が「断りにくい」状況につけ込みます。 「○○円以上になるなら契約しません」「サイトには〇〇円と書いてありました。こんなに高いのはおかしいです」と、明確に断る勇気が何よりも大切です。

一人で対応するのが不安な場合は、家族や友人に立ち会ってもらったり、その場で誰かに電話で相談したりするだけでも、悪質な業者への牽制になります。

2. 法律の不備と「~(から)」表記のワナ

弁護士は、「1,000円~」といった上限のない価格表記に関する規制が不十分であると指摘します。業者側は「『~』と書いてあるのだから10万円でもおかしくない」と主張する口実を与えてしまっているのが現状です。 消費者は、この「~」という表記が決して最低料金ではないこと、そして上限は青天井である可能性を常に意識する必要があります。

3. 被害に遭っても、返金請求をためらわない

もし契約して代金を支払ってしまった後でも、「諦めずに返金請求をすること」が非常に重要です。被害を放置することは、結果的に悪質なレスキュー商法を社会が容認することにつながり、次の被害者を生む原因となります。

困ったときは、一人で悩まず、すぐに「消費者ホットライン(電話番号:188)」などに相談してください。

冷静な判断と「断る勇気」、そして「諦めない心」が重要

突然の水のトラブルは誰にでも起こり得ます。そんな時、私たちの不安や焦りにつけ込むのが“レスキュー商法”です。

被害を防ぐ最強の武器は、慌てず、その場で安易に契約しない「冷静な判断」と「断る勇気」です。そして、万が一被害に遭ってしまった場合は、決して泣き寝入りせず、専門機関に相談し、返金を求める「諦めない心」が重要となります。

この記事で紹介した知識を、いざという時のための「お守り」として、ぜひ覚えておいてください。


監修者名:鬼沢健士 弁護士

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茨城県取手市でじょうばん法律事務所所属。
できる限り着手金無料で、労働問題(不当解雇、未払残業代等)や詐欺被害救済に積極的に取り組んでいる。