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地下鉄車内で爆音スピーカー…外国人の“迷惑配信”に物議「マナー守れないなら来ないで」→日本の法で罰せられる?【法律のプロが解説】

  • 2025.10.4
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

近年、SNSなどで物議を醸している、地下鉄車内での大音量スピーカーによる迷惑なライブ配信。特に外国人による行為が注目され、「迷惑どころか危険」「外国人観光客は来なくていい」といった厳しい意見も飛び交っています。

このような行為は、日本の法律で罰することができるのでしょうか。

また、行為者が外国人だった場合、処罰や国外追放(強制送還)につながる可能性はあるのでしょうか。今回は、弁護士に詳しくお話しを伺いました。

迷惑配信は「軽犯罪法」や「威力業務妨害罪」に問われる可能性

ーー地下鉄車内で大音量のスピーカーを使って迷惑行為やライブ配信を行った場合、どのような法律に触れる可能性がありますか?

まず、軽犯罪法に抵触する可能性があります。具体的には、以下の条文が考えられます。

  • 第1条5号: 公共の乗り物内で、乗客に著しく粗野または乱暴な言動で迷惑をかけた者
  • 第1条31号: 他人の業務に対して悪戯などで妨害した者

これらの罰則は「拘留(1日以上30日未満、刑事施設に拘束される)」または「科料(1,000円以上1万円未満の支払い)」であり、刑事罰としては比較的軽いものと言えます。

より重い罪として、威力業務妨害罪(刑法234条)が成立する可能性も考えられます。これは「威力を用いて人の業務を妨害した」場合に適用され、罰則は「3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」です。

重要なのは、この罪は実際に電車が止まったり遅れたりしなくても成立するという点です。大音量の音楽や音声で乗客に恐怖や混乱を与え、鉄道会社の円滑な運行業務を困難にさせる行為自体が「威力による業務妨害」とみなされる可能性があります。

実務上、軽犯罪法は刑罰が軽く、起訴に至るケースは多くありません。そのため、こうした悪質な迷惑行為を取り締まる際には、より罰則の重い威力業務妨害罪の適用が検討されることが多いでしょう。

行為者が外国人でも処罰は可能。ただし課題も

ーー迷惑行為を行ったのが外国人だった場合、日本の法律で処罰できますか?また、国外追放につながる可能性は?

日本の領土内で起きた犯罪には、原則として日本の法律が適用されます。したがって、行為者が外国人であっても処罰することは可能です。国籍を理由に逮捕・起訴の判断が左右されることはなく、あくまで行為の悪質性などが考慮されます。

ただし、一つ課題があります。それは、警察が捜査を開始する前に本人が日本から出国してしまった場合、その後に日本の刑事責任を問うことは極めて困難になるという点です。

また、単に大声で話すことは犯罪ではないため、それと迷惑配信との違いを法的に明確に示すのが難しく、実際に逮捕・起訴まで至るのは容易ではないという側面もあるのが実情です。

また、もし起訴され有罪判決が確定した場合、国外追放(退去強制)につながる可能性はあります

出入国管理及び難民認定法では、「無期または1年を超える拘禁刑に処せられた者」などが退去強制の対象となり得ます。前述の威力業務妨害罪は、判決次第で1年を超える拘禁刑が科される可能性があるため、この罪で有罪になれば国外追放の対象となり得ます。

ただし、有罪になれば必ず国外追放されるわけではありません。最終的には個別の事案ごとに判断されます。

私たちができる対策は? トラブルを避けるための有効な手段

ーー現状の法律で対応が難しい場合、どのような対策が考えられますか?

迷惑行為に遭遇した場合、最も有効なのは「鉄道会社の係員や乗務員に通報すること」です。

逆に、やってはいけないのは以下の行動です。

  • スマートフォンで撮影する: 行為者側が「ウケている」「楽しんでくれている」と勘違いし、行為をエスカレートさせる恐れがあります。
  • 便乗したり、あおったりする: 迷惑行為を助長するだけでなく、自身がトラブルに巻き込まれるリスクもあります。

迷惑行為をする者は、それを見て楽しむ人の存在を認識しています。「徹底的に無視をする」「迷惑であるという態度を明確に示す」ことが、こうした行為を抑止する上で重要です。

鉄道会社には、迷惑行為者を速やかに電車から降ろし、警察へ通報するという毅然とした対応が期待されます。

また、弁護士は法整備の必要性にも言及します。「表現の自由との兼ね合いで難しい課題であることは理解しつつも、迷惑行為を配信する動画から収益を得られないようにする法改正にも期待したい」としています。

まとめ

地下鉄車内での“爆音”迷惑配信は、単なるマナー違反ではなく、軽犯罪法や威力業務妨害罪に問われる可能性のある明確な違法行為です。

行為者が外国人であっても日本の法律が適用され、処罰の対象となります。また、罪の重さによっては国外追放につながる可能性もゼロではありません。

実際にその場でトラブルに巻き込まれないために、私たち乗客ができる最も有効な対策は、直接注意したり撮影したりせず、冷静に鉄道会社の係員や乗務員に通報すること。そして、迷惑行為に加担したり面白がったりせず、「迷惑である」という毅然とした態度を保つことが、行為をエスカレートさせないために重要となります。

個人の迷惑行為に社会がどう向き合うか。私たち一人ひとりの冷静な対応と、迷惑行為からは収益が生まれないようにする法整備など、社会全体で「このような行為は許さない」という環境を整えていくことが求められています。


監修者名:鬼沢健士 弁護士

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茨城県取手市でじょうばん法律事務所所属。
できる限り着手金無料で、労働問題(不当解雇、未払残業代等)や詐欺被害救済に積極的に取り組んでいる。