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『会計前の商品』を無断で飲食するも…外国人「悪気はなかった」→弁護士「強制送還の対象に」日本の法でどこまで裁ける?

  • 2025.9.25
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

コンビニやスーパーで、会計前の商品をその場で飲食してしまう外国人旅行者や在留者の行為がSNSで取り上げられ、物議を醸しています。文化や習慣の違いから「悪気はなかった」というケースもあるようですが、店舗側にとっては万引きや損害につながる深刻な問題です。では、日本の法律ではこの行為をどう扱うのでしょうか。弁護士の解説をもとに整理しました。

会計前に商品を飲食したら「窃盗罪」にあたる?

結論からいえば、窃盗罪にあたります

商品は会計が済むまで店舗が管理している「他人の物」とされます。それをお店の意思に反して勝手に食べてしまうことは、自己の所有物のように処分したとみなされ、刑法上の窃盗行為にあたるのです。

「代金を払うつもりだった」は通用する?

「後で支払うつもりだった」と主張しても違法性はなくなりません。

会計前に無断で商品を飲食した時点で、店の管理下から商品を不正に移したと評価されるため、支払い意思の有無にかかわらず違法行為とされます。

外国人が行為に及んだ場合の処分

外国人旅行者や在留者が同様の行為をした場合でも、日本の刑法が適用されます。

窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。さらに、拘禁刑に処せられれば、入管法上、強制送還の対象になる可能性もあります。

店舗側が取るべき対応

被害に遭った場合、警察に通報することが基本ですが、防止策としては以下のような方法が考えられます。

  • 店舗内に「会計前の商品を飲食することは犯罪にあたります」と明示する
  • 多言語対応の注意書きを掲示し、外国人利用者にも周知する

これにより、誤解や「知らなかった」という言い訳を減らす効果が期待できます。

文化の違いによる「悪意なき行為」はどう扱われる?

「その国では当たり前だから」「知らなかった」という理由で違法性が否定されることはありません。

刑法38条3項は「法律を知らなかったとしても、罪を犯す意思がなかったとはされない」と定めており、判例も違法性の認識を不要としています。したがって、文化の違いがあっても処罰対象となり得るのです。

もっとも、店舗にとっては顧客対応やイメージリスクも考慮する必要があるため、注意表示などで事前にトラブルを未然に防ぐことが現実的なリスクマネジメントといえるでしょう。

まとめ

会計前に商品を飲食する行為は、たとえ代金を支払う意思があっても窃盗罪として処罰される可能性がある違法行為です。

外国人であっても日本の刑法が適用され、場合によっては強制送還につながることもあります。店舗側は、警察への通報に加えて、多言語による注意表示などを通じ、文化的な誤解を防ぐ取り組みが欠かせません。利用者にとっても「会計前の商品に手をつけるのは犯罪」という意識を持つことが求められます。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。