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“たった1話”で心を掴む名脇役の存在感「気になる」「他の作品でも」衝撃の結末でドラマの核心を揺さぶった“演技派の一撃”

  • 2025.11.29
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『ちょっとだけエスパー』第2話 (C)テレビ朝日

毎話、新たな真実が発覚し、目が離せなくなってきた『ちょっとだけエスパー』。あらためて振り返ってみると、1話完結型であった第2話は、『ちょっとだけエスパー』がもつ独特な世界に引き込むとともに、守ることが命を救うことにはならないことを予感させるエピソードだった。

※【ご注意下さい】本記事はネタバレを含みます。

売れない作家が贋作を通じて、証明したかったこと

第2話で、主人公・文太(大泉洋)をはじめとするちょっとだけエスパーたちは、売れない作家・千田守(小久保寿人)が目的地に着くのを阻止するミッションに挑むことに。千田は、高名な画家パウル・クレーの贋作『天使』を制作し、画商に高額で売るために、箱根方面に向かっていた。

文太、四季(宮﨑あおい)、桜介(ディーン・フジオカ)、円寂(高畑淳子)、半蔵(宇野祥平)はなんとか千田を邪魔しつつ、彼とコンタクトを取ることに成功。売れない作家であった千田は金欲しさではなく、自分の技術を証明するために、贋作を作る仕事に手を染めていた。文太は、千田の本心を聞き、逆に贋作を売りつけることを焚き付けるようなことを言い始める。文太が抱えている世界への恨みが、千田の心境に共鳴してしまったのだろう。

しかし、文太は能力を使うことで千田の本心に気づいていた。千田の中には、金と名誉を手に入れたいということよりも、直前に食べた黒たまごを描きたいという欲望が生まれていたのだ。それは千田が誰よりも芸術家である証拠だろう。文太の声掛けや芸術家としてのプライドよりも、描きたいという根源的な欲が勝ったのだ。

清々しい表情で、画商に電話する千田。しかし、千田はトラックに轢かれて無情にも亡くなってしまう。エスパーたちと関わったことで罪を犯さずに、画家として生涯を終えることができたとはいえ、千田は生涯を閉じることになってしまった。

千田を演じた小久保寿人の哀愁

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『ちょっとだけエスパー』第2話 (C)テレビ朝日

第2話の立役者は、千田を演じた小久保寿人だろう。千田が文太らに語る口調には、芸術家として認められない千田の苦しさ、世の中への静かな怒りとその強さが、贋作制作につながったことがよく分かる。千田は、現状に憤りを感じながらもどこか諦めたような口ぶりで目線を下げて思いを語る姿には、哀愁が漂っていた。

この小久保が表現した千田の哀愁は、たった1話のみの出演である千田に対して視聴者が愛着を持つ上で効果が抜群だったように思う。芸術家としてのプライドの証明なんて虚しいことを分かりきった上で、それでも執着をやめられない自身の闇を自覚している姿には、物悲しさがあり、どうにか足を洗えないかと千田に思いを馳せる視聴者も多かっただろう。そんな彼が、黒たまごが描きたいという欲求に出会い、引き返すことができたのに亡くなってしまう展開を観たときには、単なるコメディではないと突きつけられたような気持ちになった。

小久保といえば、さまざまな作品で爪痕を残してきた俳優だ。『まどか26歳、研修医やってます!』では、幼い子どもを持ちながら癌で亡くなってしまう患者を演じた。主人公・まどか(芳根京子)の医者としての成長を描く上で、欠かせない人物だった。『恋愛禁止』では、主人公・瑞帆(伊原六花)に執着する元彼・倉島隆を演じた。序盤で命を落とすが、瑞帆に対する粘着した態度や笑顔で追い詰める姿は恐ろしく、瑞帆が手をかけてしまう展開に、説得力を出していた。

特徴的に響く声色や印象に残る目つき、表情の作り方で、その話の中でパッと目を引く存在感を出すことができる。千田もそんな小久保の強みが反映された役柄と言えるだろう。

SNSでも「1話だけなのに気になる」「他の作品でも演技がすごかったの覚えてる!」と好意的な声が多く見られた。

Webサイトに掲載されている『ちょっとだけエスパー』第7話のあらすじによれば、円寂と半蔵が千田の死を知ってしまう展開が描かれるようだ。千田の死をきっかけに、エスパーたちが「ミッションは本当に正義につながるのか」について向き合うことになりそうだ。

『ちょっとだけエスパー』は、数十年後の未来も絡ませながら正義とは何かを考えさせる物語になるのだろうか。


テレビ朝日系『ちょっとだけエスパー』毎週火曜よる9時〜 放送

TVerで見逃し配信中
https://tver.jp/episodes/ep8lgj9hqs

ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。
X(旧Twitter):@k_ar0202