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乗客「5,000円持っています。行けるところまで」元駅員が困惑した“客の窓口でのリクエスト”3つ

  • 2025.10.28
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出典:photoAC(写真はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に経験した「窓口業務で困ったこと」をご紹介します。駅員の都合を話すのは勇気がいりますが、ぜひお客さまにも知っていただけると幸いです。

駅員でも知らない駅は多い

日本には多くの駅があります。東京駅や新大阪駅のように多くの人が利用する駅、全国的には知られていない駅、さらには無人駅まで、その規模はさまざまです。

駅員として働いていても、初めて聞く駅までのきっぷをご希望のお客さまもいらっしゃいます。たとえば、このようなことがありました。

「すみません、コンコウ駅まで行きたいんですが」

当時、私にとって初めて聞く駅名でした。こういったときに役立つのがマルスと呼ばれる係員用発券機と時刻表です。マルスには出発駅と到着駅をカナ入力で検索できる機能があります。そこにコンコウと打ち込むと「金光」と表示されました。「金光」を選択し、同じくマルスの機能で経路検索をすると、岡山県にある駅だとわかりました。

「岡山県の金光駅でお間違えないですか?」

このように、マルスの機能を活用することで、初めて伺う駅名でもスムーズにご案内することができます。しかし、たまに鋭いお客さまから「ほかにコンコウ駅があるんですか?」と聞き返されることもあります。

差し出されたメモ

このマルスの性質上、到着駅がわからないことにはきっぷを作ることができません。上の例とは別のお客さまから「ここまで行きたいんですが」とメモを渡されたことがあります。目的の駅や乗っていきたい列車をメモに書いているお客さまは珍しくないので、私は普段通りお客さまからメモをお預かりし、内容を確認しました。

「静岡県富士市〇〇 〇丁目~」

そこにはどこかの住所が記されていました。ご友人のご自宅の住所なのだそうです。住所では最寄り駅を特定できません。富士市とありますが新幹線の新富士駅なのか、在来線の富士駅なのか、もしかすると近隣にもっと近い駅やアクセスしやすい駅があるかもしれません。ところがお客さまによると、住所を除く一切のことはわからないとのことでした。

お客さまに許可をいただいて事務室のパソコンに住所を入力し、地図上の最寄り駅を探しました。

「この駅が地図上では比較的近いようです。この駅まででよろしいですか?」

本当に最適な駅だという確証はありません。しかし、お客様は納得されたご様子で、すぐにその駅までのきっぷを購入されました。ただ、私としては『本当に最適なご案内だっただろうか』という思いが残りました。

結局どこまで行きたい?

また、別の駅ではこのようなお客さまもいらっしゃいました。

「5,000円持っています。行けるところまで」

青春18きっぷのような周遊券を買うわけでもなく、行けるところまでのきっぷを売ってほしいとの申告でした。どの路線なのか、上りなのか下りなのか、特急列車を使うのか、どこかの駅で乗り換えるのか、まったく決めていないというのです。

「すべてあなたが総合的に勘案して決めてください、それを買います」

旅行会社の相談カウンターなら、このようなお客さまも日常風景なのかもしれません。しかし駅の窓口では、お客さまは欲しいきっぷをある程度決めていることがほとんどです。

普段駅員は、お客さまから申告された内容通りのきっぷを渡せるかを気にしています。きっぷに書かれた日付や区間を指差して案内しているのは、お客さまに内容が間違いないか確認してもらうためです。そのため「お金は払うから内容はあなたが決めて」と言われた私はどう売るべきかわからず、困ってしまいました。

それに「行けるところまで」と言われても、本当にあらゆるルートを網羅することはできません。あとから「調べてみたら、こっちのほうがより遠くまで行けるじゃないか!」と指摘されるのではないかとも思いました。

より快適で安心な旅のためにも

では、行き先や経路を全て詳細に決めてから窓口に来てほしいのかというと、そうではありません。迷うことがあれば、ぜひご相談ください。観光地や公共施設であればウェブサイトにアクセス情報があるので、自信をもって適切な駅を案内できます。

もし目的地の最寄り駅がわからない場合は、『〇〇という施設の近く』『友人の家の住所がここで…』といった断片的な情報でもお伝えいただけると、駅員が地図や路線図を使って最適なルートを探す大きな手がかりになります。

また、「△△駅まで行きたいんですが、次は何時の列車ですか?」や「▢▢駅まではどこの駅で乗り換えると便利ですか?」といった質問も、マルスや時刻表を使って簡単に調べられます。使用可能な割引きっぷがあれば、そちらも併せて案内可能です。

私たちはお客さまにとって最善のご案内を常に目指しています。窓口でのちょっとしたコミュニケーションが、より快適で安心な旅の始まりに繋がる、と一人の元駅員として信じています。



ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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