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劣悪な環境で繁殖…ペットショップの裏にある“子犬工場”→弁護士「直接禁止する条文はない」日本の法でどこまで裁ける?

  • 2025.10.15
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

小さなケージの中で、繰り返し繁殖を強いられる犬や猫。十分な食事や医療も与えられず、「パピーミル(子犬工場)」と呼ばれる劣悪な繁殖業者の存在が問題になっています。ペットショップに並ぶ愛らしい子犬や子猫の裏に、過酷な環境が隠れているのではないか――。こうした行為は、日本の法律でどこまで規制できるのでしょうか。弁護士の解説をまとめました。

動物愛護法での規制内容

現行の動物愛護法には「パピーミルを直接禁止する条文」はありません。
ただし、

  • 動物虐待:1年以下の懲役または100万円以下の罰金
  • 幼齢犬猫の販売制限:生後56日を経過しない犬や猫の販売・展示は禁止(違反して是正勧告に従わなければ30万円以下の罰金)

といった形で間接的に規制しています。

劣悪な環境は「虐待」に当たる?

十分な飼養管理が行われず、動物が健康を害するような状況であれば、動物虐待として刑事罰の対象になる可能性があります。

ただし、どの程度の環境が「虐待」と評価されるかの線引きは難しく、これが法の運用上のハードルとなっています。

パピーミルを特別に規制する法律がないため、摘発には「虐待に当たるかどうか」という認定が不可欠です。そのため、現場の環境が不衛生でも「虐待とまでは言えない」と判断されれば、処罰が難しいという限界があります。

ペットショップや仲介業者の責任は?

仮にペットショップに並ぶ動物がパピーミル出身であったとしても、ショップや仲介業者自身が虐待を行っていない限り、責任を問うことは困難です。

幼齢犬猫の販売制限に違反した場合や、共犯として関与していた場合を除けば、現行法上は追及が難しいのが現実です。

まとめ

「パピーミル」と呼ばれる劣悪な繁殖行為は、動物愛護法で直接規制されてはいませんが、動物虐待や幼齢犬猫の販売制限を通じて間接的に処罰できる可能性があります。

しかし、虐待と認定するハードルの高さから、摘発には限界があるのが現状です。可愛い子犬や子猫の裏にある現実を直視し、社会全体で「命を粗末に扱う繁殖」をなくす取り組みが必要といえるでしょう。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。