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専門医「知らずのうちに進行している」10月に要注意『耳カビ』増殖、一体なぜ?→意外とやってはいけない“NG行為”とは

  • 2025.10.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

厳しい暑さが和らぎ、過ごしやすくなってきた夏の終わり。しかし、この時期に「なんだか耳がかゆい」「耳の調子が悪い」といった不調を訴える人が増えることをご存知でしょうか。

実はそれ、夏の間に続けた“ある習慣”が原因かもしれません。特に注意したいのが、イヤホンの長時間使用によって引き起こされる「耳カビ」と呼ばれるトラブルです。

夏の間に知らず知らずのうちに進行していたかもしれない耳カビの正体とその危険性、そして私たちが日常でできる正しい対策について、専門の医師にお話を伺いました。

「耳カビ」の正体は"外耳道真菌症"。夏にリスクが高まった理由とは?

——イヤホンの長時間使用によって耳の中が蒸れてカビが繁殖すると言われていますが、そもそも耳カビはどのように発生し、特に夏にリスクが高まるのはなぜでしょうか?

皆さんが『耳カビ』と呼んでいるものの正体は、『外耳道真菌症(がいじどうしんきんしょう)』という病気です。

外耳道とは、いわゆる『耳の穴』のことで、鼓膜より外側の部分を指します。ここに真菌、つまりカビが異常繁殖し、皮膚に影響を及ぼした状態が外耳道真菌症です。

カビ(真菌)は、どこか外部から侵入してくるわけではなく、もともと空気中や私たちの皮膚、口の中にも存在する常在菌の一種です。少量ですが、普段から外耳道にも存在しています。

これらのカビは水分を好み、高湿度の環境下で増殖しやすくなります。まさにその条件が揃いやすかったのが、この夏のイヤホン使用だったのです。

もともと湿度が高い夏にイヤホンを長時間装着すると、耳の穴は密閉空間となり、汗もかくため、内部はさらに高温多湿の状態になります。加えて、外耳道にはカビの栄養源となる角質や耳垢も存在します。カビにとって、まさに天国と言える環境が、夏の間の耳の中に作られてしまっていたのです。このような状態が長時間続いた結果、カビがどんどん増殖し、耳に様々な悪影響を及ぼします。

長引くかゆみや痛みはサインかも…放置するとどうなる?

 ——もし耳カビ(外耳道真菌症)になってしまった場合、どのような治療が必要ですか? また、放置するとどのような症状の悪化や合併症につながる可能性があるのでしょうか?

一般的な外耳道真菌症の症状には、耳のかゆみや痛み、耳垂れ、時によっては聞こえの悪さなどがあります。特に、長く続いたり、繰り返したりする耳のかゆみや痛みは、外耳道真菌症を疑うサインの一つ。

治療の基本は、まず耳鼻咽喉科で外耳道内をきれいに清掃・消毒し、増えすぎたカビを取り除きます。その上で、抗真菌薬の塗布を行います。内服薬などを使うことは稀で、大切なのは『増えすぎたカビを減らすこと』と『カビが繁殖しない環境に戻すこと』です。

しかし、中にはカビが繁殖しやすい環境や素因を元々お持ちの方もいます。例えば、頻繁に耳掃除をする癖がある方や、仕事などで耳栓・補聴器・イヤホンを日常的に使用する方は、外耳道への機械的な刺激が多く、リスクが高いと言えます。

また、糖尿病や薬の影響で全身の免疫力が低下している方も注意が必要です。こうした背景がある場合、耳の局所的な治療だけでなく、カビが繁殖しにくい体や生活の環境を整えることのほうが、根本的な解決のために重要になることもあります。

『もしかして?』と思ったら、ご自身で判断せず、まずは耳鼻咽喉科を受診することが非常に重要です。

日常でできる予防法は「さわらぬ神にたたりなし」

 ——イヤホンを日常的に使う人が耳カビを防ぐために、生活習慣の中で心がけるべきポイントや正しい対策を教えてください。

最も大切なのは、外耳道がカビにとって過ごしやすい『高温多湿な環境』にならないようにすることです。

特に、耳掃除のしすぎは外耳道真菌症になりやすい人の典型的な特徴です。良かれと思ってやっている耳掃除が、実は耳の皮膚を傷つけ、カビの侵入や繁殖を助けている可能性があります。耳は自分自身では見えない場所なので、耳掃除は自分ですることは難しいと思うことが大切です。

アレルギーなどでどうしてもかゆみが治まらない場合は、その治療をすることで、耳を触る癖が改善されることもあります。

また、補聴器やイヤホンを日常的に使用せざるを得ない方は、ご自身では耳をなるべく触らないようにし、定期的に耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。プロの目で耳の状態をチェックしてもらうのが一番安心です。

免疫力が低下する持病(糖尿病など)がある方や、そのようなお薬を飲んでいる方は、まずその病気のコントロールが重要です。ご自身が耳カビのリスクが高い可能性があることを理解し、やはり耳は触らないように心がけてください。

もちろん、特にリスクが高くない方も、イヤホンは適切な音量と時間で使用し、耳に違和感を覚えたらすぐに使用を中止してください。それでも症状が改善しない場合は、迷わず耳鼻咽喉科へ行きましょう。覚えておいてほしいのは、耳は『自分では見えない場所であり、自分では正しく対処できない場所である』ということです。

まとめ

夏が終わったからといって、安心はできません。夏の間に受けたダメージが、今頃になって症状として現れることもあります。

この秋を快適に過ごすためにも、ご自身の耳の状態に少しだけ注意を向けてみてはいかがでしょうか。        


監修者:鷲尾有司(わしおゆうし)

医師(医学博士)、わしお耳鼻咽喉科 院長
日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本アレルギー学会認定専門医

大阪市立大学医学部卒業。大阪市立大学大学院医学研究科外科系専攻を修了し、通年性アレルギー性鼻炎に対する免疫療法で医学博士取得。2011年に兵庫県西宮市に「わしお耳鼻咽喉科」開院。
わしお耳鼻咽喉科ホームページ(https://washio-jibika.com/)