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災害時に“間違った情報”をリツイートも…拡散者「知らなかった」→弁護士「“いいね”だけで賠償命令も」どんな罪に問われる?

  • 2025.9.22
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

地震や大雨などの災害発生時、SNS上では真偽不明の情報が一気に拡散されがちです。
「○○で火事が起きている」「××が決壊した」といった根拠のない投稿が広まれば、住民に混乱を与え、救助や避難の妨げになることもあります。

問題となるのは、デマを“最初に投稿した人”だけではありません。それを「リポスト」「リツイート」「シェア」した人にも、法的責任が及ぶ可能性があります。たとえ悪意がなくても、「拡散に加担した」とみなされることはあるのでしょうか。弁護士に聞きました。

災害時に虚偽の情報をSNSに投稿すると、どんな罪に問われますか?

今回は、茨城県取手市 じょうばん法律事務所所属の鬼沢健士 弁護士にお話をお伺いしました。

虚偽の情報を流す行為は「偽計」に該当し、誰かの営業を妨害した場合には偽計業務妨害罪(刑法233条)が成立します。妨害が実際に発生しなくても「妨害しうる状況」を作り出せば成立する可能性があります。

また、軽犯罪法1条31号「他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者」にあたり、軽犯罪法違反に問われることもあります。

 「リポスト」「シェア」しただけでも刑事責任はあり得るのでしょうか?

あります。リポストやシェアも「自ら投稿した」と同じ扱いになるため、刑事責任を問われる可能性は否定できません

ただし、現実的にはシェアした人全員を処罰するのは困難です。特に投稿数が多い場合や、拡散によって被害が拡大した場合などに、刑事事件化しやすいといえます。

一方で、デマを批判的に引用している場合には刑事責任を問われることはありません。

民事上の損害賠償請求を受けることはありますか?

あります。虚偽の情報によって名誉を傷つけたり、業務を妨害した場合、投稿者だけでなくリポストした人も賠償責任を負う可能性があります。

実際には「いいね」を押しただけでも賠償命令が出た事例があります。リポストの場合は、投稿の目的や経緯、被害者との関係性などが考慮されます。

特に、攻撃的意図が明らかだったり、事実無根であることが容易に分かる内容を拡散した場合には、責任が認められやすい傾向にあります。

「デマだとは知らなかった」「善意でシェアしただけ」は通用しますか?

民事責任は「過失」でも成立します。つまり「知らなかった」としても、注意を払えば虚偽だと分かるような内容を安易に拡散した場合には、過失ありとされ賠償責任を負うことがあります。

「善意だった」という意図は基本的に免責理由にはならず、重要なのは「注意を尽くしたかどうか」です。

デマ拡散を防ぐためにSNS利用者ができることは?

災害時は情報が錯綜し、悪意を持ってデマを流す人も存在します。さらに近年はAIによって精巧な偽画像・動画も作成可能になっており、真実と虚偽を見分けることが一層難しくなっています。
利用者としては、以下の基本を徹底することが大切です。

  • 情報の発信源を必ず確認する
  • 行政機関や信頼できるメディアの公式発表を優先する
  • 「不安をあおるだけの情報」は鵜呑みにせず、拡散しない

受け手と発信者の双方が冷静な態度を保つことが、混乱を最小限に抑える第一歩です。

まとめ

災害時のデマ拡散は、投稿者だけでなくリポストした人にも刑事・民事の責任が及ぶ可能性があります。「知らなかった」「善意で」という主張は通用せず、安易な拡散は法的リスクを伴う行為です。
非常時だからこそ、SNS利用者一人ひとりが「確認してから発信・拡散する」姿勢を持つことが求められています。


監修者名:鬼沢健士 弁護士

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茨城県取手市でじょうばん法律事務所所属。
できる限り着手金無料で、労働問題(不当解雇、未払残業代等)や詐欺被害救済に積極的に取り組んでいる。