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「非弁行為にあたるのでは」急増する“退職代行サービス”の利用者…→弁護士「違法となる可能性が」利用する時の注意点は?

  • 2025.9.24
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「明日から会社に行きません」。近年、本人に代わって退職の意思を伝えてくれる“退職代行サービス”を利用する人が急増しています。電話一本で会社に辞意を伝えられる手軽さから支持を集めていますが、一方で「非弁行為にあたるのではないか」という指摘もあります。
では、退職代行は法的にどこまで適法で、どんな場合に注意が必要なのでしょうか。弁護士の解説をもとに整理しました。

退職代行サービスは合法?

結論からいえば、退職代行サービス自体は適法です。
ただし、利用者が安心して依頼できる範囲は「誰に代行を頼むか」によって大きく変わります。

弁護士と一般事業者の違い

  • 一般事業者の代行:できるのは「退職の意思を伝える」または「本人が作成した退職届を提出する」といった範囲に限られます。
  • 弁護士の代行:上記に加え、退職条件の交渉や未払い残業代の請求、会社が退職を認めない場合の交渉まで対応できます。

つまり、交渉が伴うかどうかが大きな違いになります。

非弁行為となるケース

弁護士ではない一般事業者が、報酬を得る目的で法律事務を行えば、弁護士法72条が禁止する非弁行為にあたります。
例えば、

  • 退職条件の交渉
  • 未払い残業代の請求
  • 有給休暇の消化や退職拒否への対応

といったやり取りは、一般事業者の退職代行が行えば違法となる可能性が高いです。

利用者に求められる注意点

もし未払い残業代の請求や有給休暇の取得など「交渉」を望む場合は、必ず弁護士が運営する退職代行を利用する必要があります。

一般事業者に依頼すると、非弁行為に巻き込まれるリスクがあり、結果的にトラブルにつながる恐れがあります。

企業側の対応は?

退職代行から連絡を受けた企業としては、まず労働者の退職の自由を尊重する姿勢が求められます。

期間の定めのない労働契約であれば、労働者は退職日の2週間前に申し出れば退職が可能であり、会社の承諾は不要です。

一方で、引継ぎがないまま退職されれば事業に影響が出る可能性もあるため、トラブル回避のためには最低限の引継ぎ体制を整えることが現実的な対応といえるでしょう。

まとめ

退職代行サービスは本人に代わって辞意を伝えるという範囲に限れば適法ですが、未払い残業代や退職条件の交渉などを一般事業者が担うと非弁行為に該当するリスクがあります。

利用者としては「伝達だけでよいのか」「交渉も必要なのか」を見極めたうえで、信頼できる弁護士サービスを選ぶことが安心につながります。企業側にとっても、労働者の退職の自由を認めながら、トラブルを防ぐための対応を冷静に進めることが重要です。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

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神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。