1. トップ
  2. ライブの『高額転売チケット』…一体なぜなくならない?→弁護士「取り締まりには限界がある」法律の“落とし穴”とは?

ライブの『高額転売チケット』…一体なぜなくならない?→弁護士「取り締まりには限界がある」法律の“落とし穴”とは?

  • 2025.9.23
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

人気アーティストのライブやスポーツイベントのチケットが、正規価格の何倍もの値段で転売される――。SNSやフリマアプリで目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
2019年には「チケット不正転売禁止法」が施行され、違法取引の取り締まりは強化されました。しかし現実には、ネット上での転売は依然としてなくなっていません。なぜ法律で規制しても完全に根絶できないのでしょうか。弁護士の解説をもとに整理しました。

「チケット不正転売禁止法」とは?

この法律で禁止されているのは、主に次の2つの行為です。

  • 特定興行入場券を不正転売すること
  • 不正転売を目的に特定興行入場券を譲り受けること

ここでいう「特定興行入場券」とは、国内で行われるコンサートやスポーツ試合などのチケットで、

  1. 興行主が「有償譲渡禁止」を明示し、券面や電子チケットに記載している
  2. 日時・場所・座席などが指定されている
  3. 購入者の氏名・連絡先確認が行われ、その旨が券面に記載されている

これらに該当するものを指します。
違反した場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、またはその両方が科されます。

それでも転売がなくならない理由

では、なぜネット上では今も転売が続いているのでしょうか。弁護士によると、次のような法的限界や抜け道があるといいます。

  • 「反復継続の意思」が必要
    一度だけ高額で売ったケースなどは「不正転売」と判断しづらく、違法行為と断定できないことがあります。
  • 対象が限定されている
    法律が対象とするのは「特定興行入場券」に限られるため、条件を満たさない取引は規制の網から外れます。
  • 取り締まりに限界がある
    出品数が膨大で、すべてを摘発するのは現実的に難しいという課題があります。

結果として、法規制があっても完全に根絶するのは困難なのです。

海外サイト経由や個人間取引はどうなる?

国内で開催されるイベントの特定興行入場券であれば、海外サイトを介していても法律の適用対象になります。

ただし、国外の販売者やプラットフォームを相手に実効的な取り締まりを行うことは難しく、国内取引ほどの抑止力を期待するのは困難です。

電子チケット・本人確認の効果

主催者やアーティスト側も転売防止に力を入れています。

  • 電子チケットは記録が残るため、不正な取引を追跡可能。
  • 本人確認では電話番号やクレジットカードと紐づけることで、大量購入や不正な譲渡を制限できます。

これらの仕組みは、転売目的の購入を大幅に減らす効果があるといえます。

誤って転売チケットを買ってしまったら?

「公式販売と思って購入したが、実は転売だった…」そんなケースも少なくありません。法律上は錯誤取消しや契約解除を主張できる可能性もありますが、

  • 購入者に重大な不注意がないことが前提
  • 違法に販売している相手が返金に応じる保証はない

といった現実があり、実際の救済は極めて難しいのが実情です。

まとめ

チケット不正転売禁止法が施行され、転売行為は違法とされ得るものの、反復継続性が必要とされる点や対象が「特定興行入場券」に限られている点などから、取り締まりには限界があります。

さらに、海外サイトを経由した売買や膨大な取引数が存在することも、摘発を難しくしている要因です。一方で、電子チケットや本人確認といった仕組みは一定の抑止効果を発揮しており、主催者側の取り組みとして有効といえます。

しかし、消費者が誤って転売チケットを購入してしまった場合、返金や救済を受けられる可能性は極めて低く、現実的には泣き寝入りとなるケースが少なくありません。こうした状況を踏まえると、安心してイベントを楽しむためには、やはり公式販売や公認リセールサービスを利用することが最も安全で確実な方法だといえるでしょう。


監修者名:ベリーベスト法律事務所 弁護士 齊田貴士

undefined

神戸大学法科大学院卒業。 弁護士登録後、ベリーベスト法律事務所に入所。 離婚事件や労働事件等の一般民事から刑事事件、M&Aを含めた企業法務(中小企業法務含む。)、 税務事件など幅広い分野を扱う。その分かりやすく丁寧な解説からメディア出演多数。