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京都の人気観光地「竹林の小径」外国人客が“ナイフで落書き”…→弁護士「逮捕することはできない」賠償請求の“意外な壁”とは

  • 2025.10.25
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

世界的にも人気の高い京都・嵐山の「竹林の小径」で、竹にナイフのようなもので外国語を含む名前などが刻まれる被害が相次いでいます。象徴的な景観が損なわれる事態に、多くの人が心を痛めています。

こうした観光地での軽い気持ちの「落書き」行為は、法律上どのような罪に問われ、どのような責任を負うことになるのでしょうか。仮に外国からの旅行者による行為だった場合、追及は可能なのでしょうか。

今回は、アディーレ法律事務所名古屋支店 正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属)の解説をもとに、その法的問題を掘り下げます。

公有地でも私有地でも「器物損壊罪」

この「竹林の小径」は、京都を代表する観光名所で世界的にも人気が高い場所です。CMや雑誌でも利用されるなど日本らしさや京都を象徴する景観の一つとされ、古都保存法に基づき「小倉山歴史的風土特別保存地区」に指定されて保存が図られています。

まず、竹林の竹にナイフなどで名前を刻む行為は、法律上どのような罪にあたるのでしょうか。

正木弁護士によると、この行為は「器物損壊罪」に該当する可能性が高いとのこと。竹は傷つけられても直ちに枯れるわけではありませんが、落書きによって著しく景観が害され、その竹林が持つ本来の効用(美観や観光資源としての価値)を失わせているためです。

これは、竹林が公用地か私有地かに関わらず、また傷つけた物が公の物か私人の物かを問わず成立します。器物損壊罪の罰則は、3年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金もしくは科料です。

さらに、今回被害にあった竹林は古都保存法に基づき「歴史的風土特別保存地区」に指定されていますが、仮に傷つけられた対象物が文化財に指定されている場合は、より重い「文化財保護法違反」に問われる可能性もあり、この場合はたとえ本人の所有物であっても処罰の対象となります。

修復困難な被害。修復費用や景観被害の損害賠償請求は可能

落書きをした人物が特定された場合、行政や所有者は損害賠償を請求できるのでしょうか。

故意に竹を傷つける行為は、民事上の「不法行為」にあたります。スプレー塗料などとは異なり、竹に直接刻まれた傷を消すことは事実上不可能とされています。

また、この場所のように「歴史的風土特別保存地区」に指定されている場合、景観維持のため原則として伐採も認められておらず、修復は極めて困難です。

市は現在、落書きを隠すための養生テープ貼付や、倒竹の恐れがある場合の伐採などを検討しているとのことですが、こうした修復に要する費用や、景観が害されたことによる損害について、加害者に対し賠償請求することは可能と考えられます。

今年3月に新潟県で発生した重要文化財等への落書きで逮捕された事案では、落書きの消去作業でかかった費用約400万円が請求されたケースも存在します。 

犯人が外国人の場合は? 帰国後の捜査と賠償請求の「壁」

もし、こうした落書きが外国在住の旅行者によるものだった場合、刑事処分や損害賠償請求はどのように行われるのでしょうか。

外国人であっても日本国内で犯した犯罪であるため、日本国内にいれば逮捕し、刑事処分を行うことは可能です。

しかし、すでに母国へ帰国してしまった場合、日本の捜査権は海外に及ばないため、日本の警察が現地へ赴いて直接逮捕することは原則できません。この「逃げ得」を防ぐため、日本が「犯罪人引渡し条約」を締結している国であれば、相手国で身柄を拘束してもらい日本への引渡しを求めることや、条約がない場合でも相手国の法律で処罰してもらう「代理処罰」といった方法が考えられます。

損害賠償についても、日本で裁判を起こすことは可能ですが、たとえ勝訴判決を得ても、その判決が相手国で承認されるか、また海外にある加害者の資産から現実に賠償金を回収できるかは別の問題であり、時間と手間を考慮すると、そのハードルは非常に高いのが実情です。 

軽い気持ちの落書きが招く、取り返しのつかない結果

京都の竹林に限らず、観光地での落書きは、軽い気持ちや記念のつもりで行われることが多いかもしれません。しかし、その行為は「器物損壊罪」や、場合によっては「文化財保護法違反」という重大な犯罪にあたり、高額な損害賠償責任を負う可能性のある行為です。

特に、竹林のような自然物や歴史的建造物への被害は、原状回復が極めて困難であり、取り返しがつきません。たとえ加害者が特定できても、国境を越えた賠償請求には高い壁が存在します。

美しい景観や貴重な文化財を守っていくためには、法的な厳罰化や取り締まり強化と同時に、訪れる人々の意識とマナーの向上が不可欠です。


監修者:正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属) アディーレ法律事務所名古屋支店

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正木裕美 弁護士(愛知県弁護士会所属) アディーレ法律事務所名古屋支店 

一児のシングルマザーとしての経験を活かし、不倫問題やDV、離婚などの男女問題に精通。TVでのコメンテーターや法律解説などのメディア出演歴も豊富。コメンテーターとして、難しい法律もわかりやすく、的確に解説することに定評がある。
アディーレ法律事務所は、依頼者が費用の負担で相談をためらわないよう、弁護士費用で損をさせない保証制度(保証事務所)を導入しています。「何もしない」から「弁護士に相談する」社会を目指しています。

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