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自分で作曲→しかし、著作権料を請求された…一体なぜ?→弁護士「支払う義務がある」知られざる“著作権”の仕組みとは

  • 2025.10.24
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「自分自身で作詞作曲した楽曲を、自分のコンサートで演奏したら、JASRACから著作権使用料の請求が来た」——。これは、アーティストや音楽ファンにとって、しばしば耳にする疑問の一つです。

なぜ自分の作品なのに、使用料を支払う(あるいは請求が来る)のでしょうか。この一見不思議に見える現象は、日本の著作権管理の仕組みに基づいています。

本記事では、アディーレ法律事務所大宮支店 近藤姫美 弁護士への取材をもとに、この背景にある制度の目的、関係者の契約、そしてアーティストが取るべき具体的な対応について解説します。

なぜ「自分の曲」でも請求が来る? 著作権管理の基本的な仕組み

そもそも著作権とは、作品が無断で使われないようにする権利です。

しかし、作者自身がすべての著作権について詳しく、その利用状況を常に管理・監視し、使用料を徴収するのは現実的に多大な手間がかかります。そこで、JASRACのような著作権管理団体が生まれました。アーティストが団体と契約を結ぶことで、使用料の請求といった複雑な著作権管理を任せられるようになります。

JASRACは、著作権が適切に保護・実現されるよう、権利者を特定し、利用ルールを定め、侵害を防ぐ仕組みを整えることを目的としています。

管理団体は、作者から「この範囲は管理しなくてよい」という除外の申し出や、「このコンサートでは自分が使う」といった事前の使用届出がない限り、その著作物が使用されたかどうかを個別に判断できません。そのため、著作物が使用された事実(この場合はコンサートでの演奏)に基づき、一律に使用料を請求するという流れになります。

アーティスト・JASRAC・会場の関係と「お金の流れ」

この件に関わる三者の関係は、契約によって明確に分かれています。

まず、アーティストはJASRACと「著作権信託契約」を結びます。これにより、契約期間中、アーティストの著作権(管理を委託した範囲)はJASRACに移転(信託)され、JASRACは第三者(使用者)に対して使用料を請求する権限を持ちます。

一方、コンサート会場は、楽曲という「著作物」の使用者にあたるため、著作権者であるJASRACに使用料を支払う義務があります。アーティストは著作権をJASRACに移しているため、この使用料に関しては、コンサート会場と直接の契約関係はありません。お金の流れとしては、まずコンサート会場からJASRACに使用料が支払われます。

JASRACはそこから管理手数料を控除し、残りを作品ごとの分配額としてアーティスト(著作権者)へ支払う(分配する)という仕組みになっています。

請求が来たらどうする? アーティストが知るべき「事前届出」の重要性

では、実際に自分のコンサートで自分の曲を演奏し、JASRACから請求(あるいは使用料徴収の連絡)が来た場合、アーティストはどう対応すべきでしょうか。

事後的な対応としては、JASRACに事情を説明し、使用料が発生しないよう申し入れをすることになります。しかし、最も重要なのは事前の対策です。JASRACとの契約において、あらかじめ演奏権などを管理委託範囲から除外する方法もありますが、これでは第三者が無断で演奏した場合にアーティスト自身が使用料を請求せねばならず、管理を委託する意味が薄れてしまいます。

現実的かつ重要な対策は、日程が決まっている自身のコンサートで演奏する場合や、タイアップ利用などの場合には、「あらかじめJASRACへ届け出ること」です。この手続きによって、使用料の発生を防ぐことができます。

著作権管理の仕組みを理解し、適切な手続きを

「自分の曲なのに請求が来る」という事態は、アーティストが著作権の管理をJASRACに信託しているがゆえに、その使用状況を一律に管理するプロセスで発生するものです。

この制度は、本来アーティストの権利を守り、煩雑な管理業務を代行するために存在します。アーティスト自身がこの著作権管理の仕組みと契約内容を正しく理解し、自身のコンサートなどで利用する際には「事前届出」を行うといった適切な手続きを踏むことが、こうした誤解やトラブルを避け、制度のメリットを最大限に活かす鍵となるでしょう。


監修者:近藤姫美 弁護士(埼玉弁護士会所属) アディーレ法律事務所大宮支店

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