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「年間7万円の削減だけど…」学校給食の『無償化』潜む“落とし穴”に波紋…「負担が増える」「現場の状況も理解して」

  • 2025.9.8
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

学校給食や弁当の「無償化」をめぐり、「家計に優しい」と歓迎する声がある一方で、「税負担が増える」「どうして何でも無償化なの」「税金が簡単に使われすぎて悲しい」といった懸念も根強くあります。支出削減は家庭にとって大きな魅力ですが、全国規模で導入するには数千億円の財源が必要です。子どもの健康格差是正など教育的な意義も期待される一方、給食の質低下や自治体間の格差、不登校児童やアレルギー児童への公平性確保など課題は多く、制度の持続可能性は未知数。果たして「タダ化」は救世主となるのか、それとも新たな負担の種となるのか──議論は続いています。

家計に響く“おいしい効果”とは?

学校給食や弁当の無償化によって、まず期待できるのは、月々の食費負担が減ることです。

学校給食費はおおよそ月額4,000~6,000円、子ども一人あたり年間で5万~7万円の削減につながります。子どもが複数いる家庭では、その効果はさらに拡大します。

浮いた分を塾や習い事といった教育費に回したり、家族の娯楽費用に充てることも可能です。昨今の物価高の中で、貯蓄や資産形成に回す余裕が生まれることは大きな意味を持ちます。また、弁当を作っていた家庭では、時間や労力の負担軽減も得られるでしょう。

では、財源は誰が負担するのか

家計にとってメリットがある一方で、財政面と運営上の課題は少なくありません。

全国一律での無償化には数千億円規模の予算が必要で、その財源は税金でまかなわれます。結果的に増税や社会保障費の削減、国債発行による将来世代への負担増といった副作用が避けられません。

さらに、コストを抑えるあまり給食の質が低下するリスクもあります。安価な食材への切り替えや献立の画一化により、食育機能が損なわれる懸念があるのです。子どもが給食に対して「美味しくない」「量が少ない」と感じると、学校生活の満足度を損ねる要因にもつながります。

公平性も課題です。アレルギーや宗教上の理由で給食を利用できない子ども、不登校児童への対応が十分でないと、不公平感が残る恐れがあります。一部の自治体では弁当代の補助のような支援制度を設けていますが、給食を利用できない児童への代替支援方法の設計や、自治体間での支援格差の調整など、複雑な問題がある点は否めません。

教育格差を埋める可能性と制度の壁

無償化は、所得に関わらず子どもが同じ栄養価の食事をとれる点で教育格差の縮小につながります。低所得世帯の子どもにとって特に重要な支援です。

ただし、財政負担の増大により制度が持続できるかどうかは大きな課題です。自治体の財政力によっては継続が難しく、制度の地域格差が生まれる可能性もあります。また、保護者の「負担感」が減りすぎることで教育への関心が薄れ、家庭教育に悪影響を及ぼす懸念も指摘されています。

救済か、それとも新たな負担か

学校給食の無償化は、確かに家計を助け、教育格差是正の一助となるポテンシャルを秘めています。

しかし、その裏側には税負担の増加、給食の質や制度の公平性、自治体ごとの持続性といった大きなリスクが横たわります。子育て世代にとって「夢の政策」であると同時に、社会全体でそのコストをどう分担するかが問われるテーマです。

給食無償化の議論は、私たちの生活と未来に直結する“身近で重たい課題”といえるでしょう。


監修者:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引主任士など。