1. トップ
  2. 「退園させるべき」テーマパークで“客の服装”めぐり物議…「子連れ客への配慮がない」「ルール違反」→どこまで取り締まれる?

「退園させるべき」テーマパークで“客の服装”めぐり物議…「子連れ客への配慮がない」「ルール違反」→どこまで取り締まれる?

  • 2025.9.10
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

8月24日にテーマパークで「ビキニ風下着に薄いシャツ」という服装をした女性の姿がSNSに投稿され、大きな波紋を呼びました。投稿は2000回以上拡散され、コメント欄には「子連れ客への配慮がない」「ルール違反だ」「退園させるべき」といった批判の声が相次ぎました。
テーマパークの服装規定には明確な露出基準はありませんが、「他のゲストに迷惑をかける服装は禁止」とされています。

そこで今回は、こうした服装が「法的に問題になるケースはあるのか」、また「施設側はどこまで規制できるのか」について、弁護士に伺いました。

「単に露出度が高い」だけでは罪に問われない

今回は、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

まず気になるのは、「露出の多い服装=公然わいせつ罪になるのか?」という点です。

公然わいせつ罪(刑法174条)は「公然とわいせつな行為をした者」に適用されるものですが、この点について寺林弁護士は、ここでいう「わいせつ」とは“社会通念上、一般人の性的羞恥心を害する行為”を指すと解説されています。

そのため、水着やショートパンツといった社会的に一般的と認められる服装であれば、罪にはならないということです。 ただし、以下のようなケースでは「わいせつ」と判断される可能性があるとのことです。

  • 性的意図をもって過度に性器や胸部などを露出している場合
  • ファッションの範囲を逸脱し、周囲に強い性的嫌悪感を与える場合
  • 「露出プレイ」など猥褻な行為と一体化している場合

つまり「服装が大胆」なだけでは罪にはならず、男女を問わず同じ基準で判断されます。ただし、子どもが多い場であれば社会的な非難は強まり、量刑に影響することはあるそうです。

施設側は「規約」に基づき退園を求められる

では、法的に罪にあたらなくても、施設が「不適切な服装」と判断して退園を求めることはできるのでしょうか。

寺林弁護士の解説によると、テーマパークは運営会社が所有する私的施設であり、利用者は入園した時点でその施設の利用規約に同意したことになります。

規約に「他の来園者に著しい不快感を与える服装は禁止」などと定めてあれば、施設側が退園を求めるのは契約に基づく正当な措置だといいます。

もちろん差別的な理由(国籍・性別・障害など)で退園させれば違法性が問題となりますが、「過度な露出」「威圧的な表現」など、合理的な理由があれば施設の対応は適法と評価されます。

来園者・スタッフが取るべき適切な行動は?

不適切な服装を目撃したとき、私たちはどう対応すればよいのでしょうか。

一般の来園者の場合

  • 本人に直接注意せず、スタッフに冷静に伝える
  • SNS投稿は名誉毀損リスクがあるため避ける
  • 「下半身の露出」「性的行為に及んでいる」など、明らかに違法行為があれば、スタッフを通じて警察に連絡

来園者はあくまで「第三者」。不快に思った場合でも、直接介入せず施設側へ伝えるのが最も安全で適切といえます。

施設スタッフの場合

  • 「施設規約に基づきご遠慮ください」と規約を根拠に説明
  • 更衣のお願い、退園の判断を段階的に実施
  • 必ず複数人で対応し、トラブルを回避
  • 明確なわいせつ行為があれば速やかに警察へ通報

スタッフは施設の「管理者」として、他の来園者の安心・快適性を守る立場にあります。そのため、一般の来園者の場合と比較して、対応の手順はより具体的です。

まとめ

SNSで話題になったテーマパークでの服装問題。法的には「単なる露出度の高さ」だけで罪に問われることはほとんどありません。とはいえ、施設は利用規約に基づき「不適切」と判断すれば退園措置を取ることができます。

来園者ができることは、過激に反応するのではなくスタッフに伝えること。スタッフは規約を根拠に冷静に対応することが大切です。

日常の中でふとした場面に直面したとき、法律の基準と適切な対応を知っているかどうかで、その後のトラブルを避けられるかが大きく変わってきます。


記事監修:NTS総合弁護士法人札幌事務所 寺林智栄 弁護士

undefined

2007年、弁護士登録(札幌弁護士会所属)。 2013年から2017年まで東京家庭裁判所家事調停官を務める。 離婚・相続などの家事事件、労働問題、一般民事事件、企業法務など、幅広い分野を担当している。