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【上野】スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで@国立西洋美術館 [東京・上野公園]

  • 2025.8.29

上野の国立西洋美術館では、現在「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」が開催されています。

出典:リビング東京Web

スウェーデン王家の美意識が息づく、世界屈指の素描コレクション

本展では、ルネサンスからバロックのヨーロッパの名だたる作家たちの素描がスウェーデン国立美術館より来日。世界最高峰の素描コレクション、厳選約80点が一堂に会しています。

同美術館のコレクションは1500年から1900年の絵画・彫刻・素描・版画にとどまらず、中世初期から現代までの工芸やデザインにもおよび、なかでも素描コレクションは質、量ともに充実したコレクションとして知られています。

出典:リビング東京Web

「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」展示風景、国立西洋美術館、2025年

素描とは?

素描(そびょう)とは、主に鉛筆や木炭やチョーク、ペンなどを用いて、対象の輪郭や明暗を表現する線描中心の平面作品のことです。デッサンやドローイングとも呼ばれます。

会場入り口にはマリエリスム期イタリアの画家・建築家・著述家のジョルジョ・ヴァザーリの言葉が来場者を迎えます。「彫刻と絵画は、素描力という一人の父から、ただ一度の出産で同時に生まれた姉妹なのである」(美術家列伝)より

出典:リビング東京Web

会場入り口 ※特別に許可を得て撮影しています。

「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」展示風景、国立西洋美術館、2025年

素描は、絵画や彫刻の下絵として使われることもありますが、それ自体が完成した芸術作品として鑑賞されることもあります。 会場には素描の主な画材が展示されていますので展示作品と比較することで、画材ごとの表現効果の違いをより深く理解するための参考になるかと思います。

出典:リビング東京Web

「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」展示風景、国立西洋美術館、2025年

線の美──ルネサンスからバロックまで、4地域の素描を巡る

本展では、イタリア、フランス、ドイツ、ネーデルラントの4つの地域ごとに構成された展示が魅力です。

出典:リビング東京Web

「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」展示風景、国立西洋美術館、2025年

 ルネ・ショヴォーの建築素描に見る“構築された美”

特に目を引いたのが、ルネ・ショヴォーの《テッシン邸大広間の天井のためのデザイン》。建築と装飾が美しく調和していて、スケッチですが完成形が見えてくるようでした。線にも動きがあって、見ていてどんどん引き込まれます。ただの設計図ではなく、一枚のアートとしてじっくり楽しめる作品です。

出典:リビング東京Web

《テッシン邸大広間の天井のためのデザイン》ルネ・ショヴォー スウェーデン国立美術館蔵

展示作品の見どころ:レンブラントの「光と影」が素描の時点で宿る

なかでも印象的だったのは、レンブラントの素描《キリスト捕縛》。(左側) “光と影のドラマ”がしっかりと表れていて、まるで完成作品のような迫力が感じられます。 線の重なりや余白の使い方も絶妙で、素描とは思えないほどの奥行きと表現力に圧倒されました。

出典:リビング東京Web

左:《キリスト捕縛》 レンブラント・ファン・レイン スウェーデン国立美術館蔵
右:《8つの若い男性の頭部習作》 アブラハム・ブルーマールトスウェーデン国立美術館蔵

左の作品の画家、ヘンドリク・ホルツィウスは、16世紀後半〜17世紀初めに活躍したオランダの画家・版画家です。《自画像》では、顔まわりの描写がとても緻密で、髭の一本一本や視線の強さまで丁寧に描かれています。対照的に、襟元から下はざっくりとした筆致でまとめられていて、そのコントラストがかえって顔の存在感を際立たせています。写実と省略のバランスが絶妙で、見る者の視線を自然と顔に引き寄せる巧みな構成です。

出典:リビング東京Web

左:《自画像》 ヘンドリク・ホルツィウス 1590-91年頃 スウェーデン国立美術館蔵
右:《ティティア・ファン・アイレンブルフの肖像》 レンブラント・ファン・レイン 1639年 スウェーデン国立美術館蔵

ルーベンスは17世紀にフランドル(現在のベルギー)で活躍した画家で、躍動感あふれる構図と豊かな色彩が特徴です。ルーベンスの《アランデル伯爵の家臣、ロビン》は、アランデル伯爵家からの依頼で制作された肖像画のための下絵とされています。

素描には衣装の色、素材についてのメモが記されています。(上着は茶色、靴下は黄色、靴は黒・・・)

出典:リビング東京Web

右:《アランデル伯爵の家臣、ロビン》  ペーテル・パウル・ルーベンス スウェーデン国立美術館蔵
左:《コルネリス・ヴァン・デル・へーストの肖像》アンソニー・ヴァン・ダイク スウェーデン国立美術館蔵

素描(ドローイング)は、芸術家が構想を練り、形を探る過程で生まれる“生きた線”の芸術です。本展では、完成作品とはまた違った、作家の内面や瞬間の閃きを感じ取ることができます。紙に残された鉛筆やチョークの一筋一筋が、まるで作家と対話しているような感覚を呼び起こします。

出典:リビング東京Web

「スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで」展示風景、国立西洋美術館、2025年

素描は“地味”ではない。作品の核に触れる貴重な体験

これまで「素描」と聞くと、完成前のラフな下絵や、少し地味な存在だと思っていました。ですが今回の展覧会を通して、実はそれが、思っていたよりもずっと奥深いものだと感じました。

建築でいえば、素描はまさに土台や骨格にあたります。 絵画や彫刻といった完成作品が“建物”だとすれば、素描はその設計図であり、構造の美を支える重要な基礎です。完成作品では見えにくい、作家の思考や迷い、線の試行錯誤といった創造のプロセスに間近で触れられることは、非常に貴重な体験です。

なかでも特筆すべきは、スウェーデン国立美術館の素描コレクションの充実ぶりです。

世界的にも屈指の規模と質を誇り、ルネサンスからロマン主義、古典主義、バロックに至るまで、名だたる作家たちの“手の跡”を感じることができます。 会場で是非素描の魅力に触れてみてください。

スウェーデン国立美術館 素描コレクション展―ルネサンスからバロックまで
2025年 9月28日[日]まで
国立西洋美術館[東京・上野公園]
〒110-0007 東京都台東区上野公園7-7
050-5541-8600(ハローダイヤル)
JR上野駅下車(公園口) 徒歩1分
京成電鉄京成上野駅下車 徒歩7分
東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅下車 徒歩8分
開館時間:9:30 〜 17:30(金・土曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、9月16日[火]
※ただし、9月15日[月・祝]、9月22日[月]は開館
※中学生以下、障害者手帳*をお持ちの方とその付添者1名は無料(入館の際に学生証等の年齢の確認できるもの、障害者手帳等の提示が必要です)
*対象となる手帳:身体障害者手帳・ 療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳
※大学生及び高校生の方は、入館の際に学生証の提示が必要です
※国立美術館キャンパスメンバーズ加盟校の学生・教職員は、本展を学生1,100円、教職員1,800円で拝観可能です
(学生証または教職員証の提示要)
※観覧当日に限り本展の観覧券で常設展も拝観可能です
観覧料:一般2,000円、大学生1,300円、高校生1,000円
URL:https://drawings2025.jp

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