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ブルータス時計ブランド学 Vol.73〈ルイ モネ〉

  • 2025.8.9
〈ルイ・モネ〉の時計のイラスト

19世紀の天才時計師の名を冠し、独創性を発揮する

2012年に見付かった懐中時計「コンター・ドゥ・ティエルス」は、時計の歴史を書き換える世紀の大発見であった。なぜなら12時位置のボタンを押すとダイヤル中央の針が1周1秒で高速運針し、ボタンを離すと停止して、もう一つのボタンを押すと0位置に戻る仕組みになっていたからだ。

1816年に完成した、との記録が残るこの時計は慎重な調査の結果、世界初のクロノグラフと認定された。さらに言えば、毎秒60振動という超ハイビートも先駆けて実現していた。創造主は、ルーヴル美術館の美術アカデミーの教授を経て、1800年から時計製作に専従したルイ・モネ。かの天才時計師アブラアン-ルイ・ブレゲとも親交が深く、切削琢磨した仲だったという。

その発見に10年先駆け、天才ルイ・モネの名はスイスのサン・ブレーズに拠点を置く独立した時計ブランドの名として蘇っていた。忘れ去られていた偉大な時計師の名を掘り起こしたのは、輸入商社でさまざまな時計ブランドの復興に尽力してきたジャン=マリー・シャラー。彼はまず、アーティストでもあったルイ・モネに敬意を称し、造形や装飾に凝った腕時計を世に送り出した。

やがてオートマタに代表される複雑機構にも着手し、世界初のクロノグラフが発見されたことをきっかけに「メカニカル ワンダーズ コレクション」を展開して、同機構に傾倒していく。さらにルイ・モネが得意としていた天文時計を再解釈し、隕石ダイヤルや宇宙船をモチーフとした「コズミック アート コレクション」でも注目されるようになる。

機構的にもオートマタやクロノグラフに加え、かつて“天文”の意味で使われていたトゥールビヨンを数多くラインナップ。いずれのモデルもユニークピースもしくは数量限定であり、さらにオーダーメイドにも応え、熱心な時計愛好家の心をつかむ。

【Signature:名作】ジャパン メテオライト

日本に飛来した隕石がスイス製時計を華やぐ

ジャパン メテオライト

テンプの動きをダイヤルに露にする反転式ムーブメントとオフセットダイヤル、そして右上に備わる20秒毎に帰零するレトログラード秒針を特徴とする「テンポグラフ」は、メゾンのアイコンの1つであり、これまでさまざまな素材で表現されてきた。

その最新作は、生産数わずか12本という日本限定モデル。さまざまな色や質感が入り交じったオフセットダイヤルの正体は、1850年に岩手県陸前高田市気仙町に飛来した隕石である。この気仙隕石が、時計に使われるのは初。宇宙(コズミック)由来の素材の左側では、20秒レトログラードの機構を覗かせ、メカニズムを意匠の一部に取り込んだ。

径40.7mm。自動巻き。チタンケース。6,600,000円。

気仙隕石の一部
東京の国立科学博物館に収蔵される気仙隕石の一部を譲り受けたコペンハーゲンの地質博物館から、破片を入手。ダイヤルに独占使用した。
自社製ムーブメントCal.LM85の自動巻きローター
搭載する自社製ムーブメントCal.LM85の自動巻きローターは、外周部に比重が大きいゴールドを用いて重心を大きく偏らせ、回転効率を高めている。

【New:新作】1816

世界初のクロノグラフにオマージュを捧げる

1816

ややイレギュラーなインダイヤルのレイアウトは、時計師ルイ・モネが天体観測のために製作した世界初のクロノグラフ「コンター・ドゥ・ティエルス」からの引用である。ダイヤル外周を取り囲む線路型秒目盛りも、1816年当時と同じ。

時計史に輝く偉大なる発明をオマージュしたダイヤルの下には、新開発の自社製クロノグラフCal.LM1816が潜む。そしてメゾン初のブレスレットを組み合わせることで、古典をモダンかつスポーティに仕立て直した。裏蓋側に覗かせるクロノグラフムーブメントの構造美も、見応え十分。

径40.6mm。手巻き。チタンケース。6,930,000円。

Cal.LM1816
搭載するCal.LM1816は、クロノグラフの高級機の古典にならったコラムホイール+水平クラッチを採用。チラネジ付きのテンプとスワンネック緩急針も、ヴィンテージ時計ファンの琴線に触れる。
メゾン初のブレスレット
メゾン初のブレスレットは、アーチ状の横長リンクを連ねたソリッドな造作に。ケースとの一体感も完璧に図られている。

Information

LOUIS MOINET/ルイ モネ

創業:2004年
創業地:スイス サン・ブレーズ
https://louismoinet.com/

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