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「吉田千鶴子 ― 踊れ、謳へ、描け」が三鷹市美術ギャラリーで開催中

  • 2025.8.2

こんにちは。フリーキュレーターのSEIJIです。価値観や表現方法が多様化しているアートの世界を、ニュースや展覧会、作家や作品に注目したコラムにしてお届けする「今どきのアート」。近頃気になったのがこちら。

戦後の熱き時代を生きた美術家「吉田千鶴子 ― 踊れ、謳へ、描け」が三鷹市美術ギャラリーで開催中!

出典:シティリビングWeb

《マンボ》Mambo 1956年 モノタイプ/紙

三鷹市美術ギャラリーは以前に合田佐和子の展覧会で紹介しました。「帰る途もつもりもない」というひとりの女性画家の強い信念に心を打たれた記憶があります。

そして、今回、ふたたび注目したのが吉田千鶴子。展覧会のタイトルを拝借すれば、戦後の熱き時代を生きた吉田千鶴子には、どこか合田佐和子と相通じる何かを感じたのです。

そして、強く生きる女性画家にフォーカスした三鷹市美術ギャラリーの展覧会企画にとても惹かれました。

出典:シティリビングWeb

《化石 蝶》Fossil butterfly 1972年 木版/紙

吉田千鶴子とは

吉田千鶴子は、1948年に油彩画家として活動をはじめ1950年代中頃から版画家として活躍した三鷹ゆかりの作家。

1924年に横浜で生まれ東京で育った吉田千鶴子は、戦争が迫りつつある時代に佐藤高等女学校(現・女子美術大学付属高等学校)油彩科を卒業。

その後も画家を目指して学び続けました。1948年に前衛芸術家・岡本太郎主宰のアヴァンギャルド芸術研究会に参加し、以後は自らの画風を抽象へ移行させていきました。

出典:シティリビングWeb

《礁 貝 C》Shells C 1976年 木版・亜鉛凸版/紙

吉田千鶴子の創作活動は、1953年に版画家である田穂高と結婚したことで大きく変化しました。1950年代に入り日本と米国の文化交流が活発になるなかで、田家の一員として版画制作に携わりはじめた吉田千鶴子は色彩感覚に優れた完成度の高い抽象版画を数多く生み出しました。

1956年には日本で初の女性による版画団体である女流版画会を結成。1967年から一家で三鷹市井の頭に居住し、晩年まで当地で制作活動を継続しました。

1970年グレンヘン国際色彩版画トリエンナーレ展で受賞を果たし、1970年代後半から開始した身近な生きものや植物を題材にした作品は幅広い層から支持され、その創作意欲は晩年まで尽きなかったのです。

出典:シティリビングWeb

《メキシコのカーニバル(ハマシロにて)》Mexican Carnival 1957年 モノタイプ/紙

同展では、版画家・田穂高の伴侶、日米間で活動した版画一家「吉田ファミリー」を支えた存在にとどまらず、吉田千鶴子という戦後を生きた一人の女性美術家の軌跡を紹介しています。

吉田ファミリーとは何か?

ファミリーが芸術の分野で活躍するというのは、なかなかお目にかかれないと思いますが、近代風景画の巨匠・吉田博(1876−1950)とその妻ふじを(1887−1987)、長男・遠志(1911−1995)、次男・穂高(1926−1995)、穂高の妻・千鶴子(1924−2017)は、世界中を旅して多くの作品を残しました。ファミリーで芸術家はすごいことですね!

出典:シティリビングWeb

《Butterfly B》1953年頃 木版/紙

学芸員からのひとこと

「三鷹市美術ギャラリーでは、2009年の展覧会で吉田家4代の画家たちをご紹介し、そのなかで千鶴子の作品も数点取り上げました。吉田家を軸に語ると、千鶴子は他家から嫁いできた存在です。それ故に、彼女からは吉田家とは別の景色が見えていたのではないでしょうか。

千鶴子は独身時代から既に芸術家として自立した創作活動を行っており、版画家・吉田穂高との結婚は創作面だけでなく社会的にも大きな分岐点になったと考えられます。当時は男性中心であった創作版画の世界で、女性版画家の草分け的存在となった吉田千鶴子の芸術家としての軌跡をご覧ください」(学芸主査 富田さん)

いろんな分野で女性ががんばっている今の時代、ぜひぜひご覧いただきたい心の刺激とモチベーションアップができる展覧会です。

出典:シティリビングWeb

《蝶たち-集う》Butterfly Gathering 1977年 木版・亜鉛凸版/紙

2025年9月7日(日)まで。展覧会の詳細は下記のURLからご確認ください。

三鷹市美術ギャラリー

https://mitaka-sportsandculture.or.jp/gallery/event/20250705/

プロフィール/SEIJI(小太刀正史)

フリーキュレーター。MeDEL個人事務所主催。学芸員の目線から美術館の情報を発信する活動を始める。自身もオブジェ作家として活動歴あり。

OBJECT東京展入選 From A The art日本オブジェ部門佳作 日本文化デザイン会議

ETDA展参加など。

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