1. トップ
  2. 25年前、日本中が衝撃を受けた“和×洋の先駆的グルーヴ” ロングヒットを叩き出した“唯一無二の静かな鼓動”

25年前、日本中が衝撃を受けた“和×洋の先駆的グルーヴ” ロングヒットを叩き出した“唯一無二の静かな鼓動”

  • 2025.9.1

「25年前の夏、どんな音楽が耳に残っていたか覚えてる?」

2000年。ミレニアムという言葉がまだ新鮮に響き、人々がどこか浮き足立つように新しい時代を意識していた頃。渋谷や新宿のCDショップには最新のJ-POPが所狭しと並び、深夜のラジオからは新世代の音が次々と流れていた。

そんな熱気の中で、ひときわ異彩を放ちながら、それでいて日常にすっと溶け込むように鳴り響いたのがこの曲だった。

LOVE PSYCHEDELICO『Your Song』(作詞・作曲:LOVE PSYCHEDELICO)——2000年7月5日発売。

デビューの年に刻まれた一曲

LOVE PSYCHEDELICOがCDデビューしたのは同じ2000年。デビュー曲『Lady Madonna 〜憂鬱なるスパイダー〜』で衝撃を与え、そのわずか数か月後に届けられたのが『Your Song』だった。

2枚目のシングルでありながら、すでに「一過性の新人」ではなく、長く音楽シーンに根を下ろす予感を感じさせる作品だった。

当時の音楽は派手なアレンジや勢いで聴き手を惹きつける曲も多かったが、この楽曲は真逆のアプローチをとる。聴けば聴くほど深く沁みてくるような旋律と、ハスキーでいて優しいKUMIの歌声。彼らの音楽は、初めから「大声で主張する」のではなく、「隣に静かに座り続ける」ような存在感をまとっていた。

undefined
LOVE PSYCHEDELICO-2001年撮影 (C)SANKEI

唯一無二の音楽性

『Your Song』の最大の魅力は、その唯一無二の響きにある。KUMIのボーカルは、洋楽的なグルーヴと日本語の情緒を矛盾なく抱き込んでいる。英語と日本語を自然に行き来する歌詞は、誰もが試みながらなかなか形にできなかったスタイルだが、彼らにとっては必然の呼吸のように聴こえる。違和感がないどころか、そのミックス感覚こそが曲の美しさを引き立てていた。

そして、NAOKIのギターが描き出すリフやコードワークは、シンプルでありながら空気そのものを変える力を持っている。多様な音楽の要素を下地に、余計な音を削ぎ落としたアレンジは、都会のざわめきにも深夜の静けさにも寄り添う柔軟さを持っていた。

音の余白が豊かであるからこそ、聴く人の心の風景がそこに映し出される。それがLOVE PSYCHEDELICOの音楽の真髄だった。

ロングセールスの理由

『Your Song』は発売当初こそ派手に注目を集めたわけではなかった。時間をかけて少しずつ支持を広げ、長いあいだチャートに居続ける“息の長いヒット”となったのだ。口コミやラジオで繰り返し流れるうちに、多くの人の生活に自然と溶け込み、気づけば「長く寄り添う一曲」として定着していった。

即効性のあるヒットではなく、日々の生活の中で少しずつ人の耳に馴染み、口コミやラジオで広がっていく。そんな浸透の仕方をしたからこそ、世代やシーンを越えて受け入れられたのだ。「一度聴いて終わり」ではなく、「何度も聴きたくなる」——その強さこそが、この楽曲を長く支えた。

2人が描いた“静かで確かな鼓動”

LOVE PSYCHEDELICOは結成当初から、自分たちのルーツにある洋楽を取り込みながらも、日本語の情感を削らない音楽を作り続けてきた。KUMIの存在感あふれる声と、NAOKIが構築する無駄のないサウンド。2人が並んで立つその姿からは、ユニットというより「呼吸を合わせるひとつの楽器」のような統一感が感じられた。

時代を超える余韻

2000年の夏にリリースされたこの曲は、今でもリスナーの記憶に寄り添い続けている。煌びやかな時代の音ではなく、心の奥に残る静かな旋律。「あの頃の自分」や「忘れかけた感情」を呼び起こす力を持つ音楽だからこそ、色褪せることなく聴き継がれているのだろう。

——それは、25年前の街角に確かに鳴り響いていた“静かで確かな鼓動”。

LOVE PSYCHEDELICOの『Your Song』は、そのまま今も私たちの胸の奥で鳴り続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。