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35年前、日本中が度肝を抜かれた“異色の江戸ロック” 衝撃のデビューが刻んだ“時代を逆行する伝説”

  • 2025.8.28

「35年前のあの日、テレビから突然現れた奇抜な一団を覚えているだろうか?」

1990年の初夏。人々は未来に希望と不安を抱きながらも、どこか浮き足立っていた。そんな中、深夜番組から現れた一組のバンドが、音楽シーンに鮮烈な爪痕を残す。

歌舞伎の隈取風なメイクを施し、和装姿でギターをかき鳴らす――その衝撃の姿こそ、カブキロックスだった。

彼らのメジャーデビュー曲が『お江戸-O・EDO-』(作詞:糸井重里・作曲:加瀬邦彦)——1990年5月21日発売である。

“TOKIO”を“O・EDO”にすり替えた異色のカバー

『お江戸-O・EDO-』は、沢田研二の大ヒット曲『TOKIO』を下敷きにしたカバー曲である。オリジナルが描いたのは未来都市のエネルギッシュなイメージだったが、カブキロックスはその骨格を残しつつ、サビの「TOKIO」を「O・EDO」に置き換え、ところどころに江戸を思わせるフレーズを差し込んだ。

「イロハニホヘト」といった言葉遊びや、歌舞伎的な情緒を感じさせる新しい歌詞が加わることで、楽曲全体は一種のパロディでありながら、不思議な迫力をまとっていた。

「ロックなのに歌舞伎風、未来都市なのに江戸」――その相反する要素が独特のバランスで成立していたのである。

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1990年、東京浅草の常磐座で行われたカブキロックスのお披露目ライブ (C)SANKEI

“イカ天”が生んだスター

彼らが一躍脚光を浴びたのは、テレビ番組の伝説のコーナー”イカ天”こと『三宅裕司のいかすバンド天国』(TBS)だ。

彼らは『お江戸-O・EDO-』を披露し、仮イカ天キングも獲得。その斬新なコンセプトと圧倒的なビジュアルは、瞬く間に話題を独占した。

正式なキングにはなれなかったものの、数多くのバンドが登場した同番組の中でも、視聴者が「一度見れば忘れられない」と感じた存在感は群を抜いていた。

前身バンドに裏づけられた確かな演奏力

奇抜な見た目ばかりが注目されがちなカブキロックスだが、実はしっかりとした音楽的な土台を持っていた。

バンドの前身には、ボーカル・氏神一番が率いた和洋楽器を取り入れたグループと、ギターの青木秀麻呂のグラムロックバンドという2つの流れがあった。いずれもストリートやライブハウスで鍛えられた実力派であり、合流することで現在のスタイルへと結実したのである。この下地があったからこそ、『お江戸-O・EDO-』は単なる奇をてらったバンドでは終わらなかった。

鋭く刻まれるギターリフ、タイトなリズム、そして舞台さながらの存在感を持つボーカル。ビジュアルのインパクトに負けない音楽的な説得力を備えていたからこそ、彼らは「イロモノ」ではなく「本物のロック」として人々を唸らせたのである。

ちなみにこのシングルのB面に収録されたのは、一風堂の1982年のヒット曲『すみれ September Love』(作詞:竜真知子・作曲:土屋昌巳)のカバーだった。

祭りのざわめきのように

カブキロックスの存在は、まるで夏祭りの一夜のように華やかで、そして忘れがたい。視覚と聴覚を同時に刺激し、江戸と平成をつなぐ大胆な発想で時代を揺さぶった。

『お江戸-O・EDO-』は、平成初期の空気を象徴するポップカルチャーの断片として、今もなお人々の記憶に鮮やかに刻まれている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。