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25年前、日本中が疾走感に酔いしれた“真夏の透明ロック” 2000年に爪痕を刻んだ“新世代バンド”

  • 2025.8.22

「2000年の夏、どんな風の匂いを覚えていますか?」

ミレニアムという響きがまだ街を包み、CDショップの新譜コーナーには新世代バンドの名前が次々と並んでいた。灼けるアスファルトを抜けて吹き抜ける風のように、ある曲が駆け抜けていく――

Do As Infinity『rumble fish』(作詞・作曲:D・A・I)――2000年8月2日発売。

真夏の眩しさと胸の奥に差す影、その両方を抱えたサウンドは、あの年の街に鮮やかな爪痕を刻んだ。

夏を走り抜けた衝動

Do As Infinityの5作目のシングル『rumble fish』は、藤原竜也主演の映画『仮面学園』の主題歌としても耳に残る存在感を放った。

タイトルが示す通り、そのサウンドは鋭さとしなやかさを併せ持ち、真夏の陽光のように眩しく、同時に胸の奥に淡い影を落とす。リスナーの心を一直線に射抜くこの曲の中心にあるのは、やはり伴都美子のボーカルだ。

彼女の声は、澄んだ水面に広がる波紋のように繊細でありながら、時に突き抜けるような力強さを帯びる。Aメロでは低めのトーンでしっとりと空気を包み込み、サビでは一気に解き放たれたような伸びやかさで、聴く者の胸を高鳴らせる。

その高低差は単なる音域の広さではなく、感情の温度差を描き分ける表現力の賜物だ。バックで鳴るギターとドラムが前のめりに駆ける中、彼女の声はまるで風を切るように前線を走り抜ける。

鋭さを帯びたフレーズでも決して硬くならず、しなやかさを保ちながら楽曲全体を牽引していく。その一音一音に宿る透明感が、疾走感だけでは終わらない余韻を生み、曲に深みを与えている。

 

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Do As Infinityのボーカル・伴都美子-2002年撮影 (C)SANKEI

亀田誠治が描く、声を生かす音の設計

そして、このボーカルを最大限に引き立てたのが、亀田誠治によるサウンドプロデュースだ。

亀田は単に伴奏を組み立てるのではなく、伴の声が最も鮮やかに響く瞬間を計算し、音の配置を緻密に設計している。

ベースは亀田らしい粋で歌うようなフレーズが印象的で、単に下支えするのではなく、音の流れに独自の表情と推進力を加えている。その動きが楽曲全体のグルーヴを生み出し、聴く者を自然に体でリズムを取らせる。ドラムは疾走感を保ちながらも、要所で一拍の余白をつくり、そこに伴の声がふっと差し込む。

ギターは硬質なリフで緊張感を保ちつつ、サビでは広がりを持たせ、声との一体感を増していく。結果として、バンド全体が一つの有機体のように呼吸し、伴の声を中心に夏を駆け抜ける音像が完成したのである。

走り続ける音の記憶

25年が経ち、音楽の聴き方は変わった。それでも『rumble fish』を再生すれば、あの夏の陽ざしや夜風がよみがえる。

伴都美子の声、全力で駆け抜けるバンドの勢い――「あの頃、自分はこんなスピードで走っていた」という感覚が鮮やかに戻ってくる。

新しい世代には新鮮な衝動を、当時を知る世代には懐かしい鼓動を。『rumble fish』は、2000年の真夏を象徴する、永遠に走り続けるロックナンバーだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。