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30年前、日本中が口ずさんだ“国民的な脱力感ポップ” アイドルなのに本格派なバンドの“大人気アニメ主題歌”

  • 2025.8.21

1995年の春、テレビから流れた軽快なリズムが、茶の間の空気を一瞬で明るくした。フジテレビ系アニメ『キテレツ大百科』のエンディングに乗せて流れるその曲は、見終わった余韻をやさしく包み込み、気づけば放課後の校庭や商店街の片隅でも口ずさまれていた。

アニメの終わりとともに訪れる、ちょっとだけ特別な時間――それが、多くの人の心に刻まれていた。

TOKIO『うわさのキッス』(作詞:工藤哲雄・作曲:都志見隆)――1995年4月12日発売。

彼らにとって3枚目のシングルは、明るく親しみやすいメロディと、メンバーの笑顔がそのまま詰まったような演奏で、幅広い世代を虜にした。

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※Google Geminiにて作成(イメージ)

バンドとしての存在感を刻んだ瞬間

『うわさのキッス』は、バンド編成ならではの骨太なサウンドに、ポップソングとしての軽やかさを見事に同居させた一曲だ。

ギターやキーボード、ベースがしっかりと鳴っていながらも、全体には余裕があり、どこか肩の力が抜けている。その空気感が、アニメのエンディングにふさわしい親しみやすさを生み出していた。

そして何よりも忘れられないのが、サビ前に響く松岡昌宏の「イエイ イエイ イエイ」。

このひと言が加わるだけで、曲全体がパッと色づき、メンバーと聴く側の距離が一気に縮まる。ライブやテレビ出演時、この掛け声に合わせて観客が笑顔になる光景は、この曲の象徴的な瞬間だった。

黄金コンビと遊び心あふれるアレンジ

『うわさのキッス』は、デビュー曲『LOVE YOU ONLY』から3作連続で工藤哲雄×都志見隆というコンビが手がけた楽曲だ。

二人が生み出すメロディと詞は、明快さと温もりを両立し、グループの初期サウンドを確立するうえで大きな役割を果たした。

さらに編曲にはムーンライダーズの白井良明が参加。白井のアレンジは、バンドの骨格を活かしながら、ポップソングとしての軽やかさと遊び心を散りばめている。

サウンド全体にちょっとしたひねりを加えることで、アニメの世界観とTOKIOらしい爽やかさが無理なく融合していた。

『キテレツ大百科』との相乗効果

『キテレツ大百科』は、家族で安心して楽しめるアニメの定番だった。そのエンディングに起用された『うわさのキッス』は、物語の余韻を壊さず、それでいて次の日への元気を与えてくれるような存在感を放った。

アニメの視聴者層は幅広く、子どもから祖父母世代までが一緒に見ていた。だからこそ、この曲は一過性のヒットに終わらず、家庭内で何度も共有される“身近な音楽”になった。

テレビから流れるうちに自然と覚え、気づけば口ずさんでしまう――そんな生活の中の浸透力があった。

初期TOKIOの魅力を凝縮した1曲

『うわさのキッス』は、初期TOKIOの魅力を丸ごと閉じ込めた1曲だ。肩肘張らずに音楽を楽しむ自然体の姿、メンバー同士の息の合ったやり取り、そして“アイドルでありながら本格派バンド”という立ち位置を示す確かな演奏力。

アイドル×バンドの真骨頂を体現し、演奏・歌・パフォーマンスの三拍子が揃った稀有なシングルだった。

発売当時は約40万枚を売り上げ、シングルヒットとしてもグループ初期を代表する存在に。バラエティ番組や音楽番組で繰り返し披露されるたびに、その明るさと一体感が視聴者に届き、「演奏するアイドル」というTOKIOならではの存在感を強く印象づけた。

ライブでも定番曲として長く愛され、世代を超えて笑顔を生み続けている。

今も色褪せない理由

あれから30年。音楽の聴き方も、世の中の景色も変わった。それでも『うわさのキッス』を耳にすれば、何気ない日常の楽しさが一瞬でよみがえる。

あの「イエイ イエイ イエイ」が当時の空気を封じ込めたまま輝き続けている。

明るく、無邪気で、ほんの少し照れくさい――そんな感情を一声で呼び覚ますこのフレーズは、時代を超えて響く魔法の合図だ。

今も変わらず、聴く人を笑顔にさせる理由は、きっとこの一言にある。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。