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ヨボヨボ80歳までローンが続く…世帯手取り年収約2000万円なのに家計破綻に陥るトンでもない"聖域出費項目"

  • 2025.7.4

広告代理店マンの夫と出版社勤務の妻。ともに正社員で高収入、世帯年収は手取りで約2000万円を超える家庭だが、実は家計が危険水域だ。購入したマイホームは8000万円と高額であるものの、収入を考えれば余裕で返済可能と思いきや、さにあらず。夫婦が絶対譲らないトンでも「聖域の出費項目」とは何か――。

腰の痛みを感じている、腰の曲がったシニア男性
※写真はイメージです
夫が80歳になるまで毎月20万円を返し続けられるか

今回は年収2000万円超のパワーカップルからのご相談事例です。内容は、「多額の住宅ローンを、繰り上げ返済して早めに完済したいが、思うように貯まらない。夫婦の生きがいである旅行費(月30万円)をキープしたまま、なんとか繰り上げ返済の費用を貯められないだろうか」というものです。

岩波ユウタさん(仮名・58歳・広告代理店勤務)と妻のマキコさん(仮名・45歳・出版社勤務)は、13歳の年齢差があり、世帯年収はボーナス込みの手取りで約2000万円のパワーカップルです。お子さんは、長女10歳、長男8歳、次女6歳の3人。

5年前、ユウタさんが53歳の頃、戸建てを神奈川県に購入しました。8000万円ほどの住宅ローンを利用し、当初の月額返済額は26万5000円でした。現在、月20万円ずつ返済しており、一年に一回は100万円程度繰り上げ返済しているため、残債は金利込みで6000万円程度。

「完済できるのは夫が80歳になるころ。バリバリ働けるほどの体力があるか、未知数です。現実的に、70歳を超えて毎月26万5000円を返すのは厳しいので、年に1回は100万円程度の繰り上げ返済し、今は月24万5000円ほどの返済となり、残債は6000万円強まで減らせました。それでもこのペースで返せるのはあと5~10年でしょうか。私だっていつまでこの収入が続くか分かりませんし。

当初の予定としては、年間700万円くらい繰り上げ返済して、夫が70代に入る前には完済するつもりでした。その後、子供の大学費用や老後資金のために投資を始めよう、と。

でも、どうも家計管理が苦手で、繰り上げ返済はできたとしても年200万円が関の山。年700万円も貯められる見通しが持てません。どうしたらよいのでしょうか」

と、妻のマキコさん。

収支の内訳を拝見すると、手取り月収は123万5000円で、支出は120万5000円。月の収支の差額は+3万円です。確かにこれでは、ボーナスが年450万円あっても年間700万円の繰り上げ返済は無理ですね。ボーナスは臨時支出や固定資産税(年56万円程度)など使わざるを得ない出費はあるはずですから。

娯楽費月30万円が家計を圧迫するも「死守したい」

しかし、毎月120万円の支出とは、住宅ローンの月20万円はいいとして、他に何に使っているのでしょう? 詳しく内訳を見ていくと、日常生活費は収入の割にはそれほどかけていませんでした。

例えば、食費は、一般的には収入の15%程度が目安ですが、岩波家の場合、月額手取り123万5000円のうち、10%未満の12万円です。水道光熱費は戸建てなので高めで3万円、通信費は2万3000円、被服費は5万円、生命保険料は2万5000円、日用品・雑費で5万7000円、3人のお子さんの教育費は15万円です。

驚いたのは、娯楽費の30万円。一般的な金額より一ケタ上で、岩波家の住宅ローンを上回る最大の出費項目です。マイホーム購入時に頭金があまりなかったのは、この娯楽費を象徴とした湯水家計の結果だったのです。

実は夫婦の趣味は日本各地の世界遺産や名所めぐり。連休があればもちろん、最低でも月に1回は、その時期見頃の風景やイベントを見るために何泊か泊まって国内旅行を楽しむそう。親の趣味に付き合わせるだけでなく、その近くの子供たちが楽しめるスポットにも足を延ばします。これが、多忙を極める2人にとって、ストレスを解消でき、かつ、家族と触れ合える貴重な時間だそうで、「どうしても死守したい」とのこと。

「このために働いているといっても過言ではありません!」と、夫婦は声を揃えます。しかし、ではどう貯めるかという話になると夫婦は一転、険悪な雰囲気に。

「早くローンを完済したい。だけどそのために趣味や家族の時間を犠牲にするのはイヤ」という大きな方向性は一致しています。ですが、そこに向かうための道のりは、夫婦それぞれで異なるようです。

例えば、生命保険一つ選ぶにしても、妻はしっかり何社も比較検討してから進めたい。対して夫は、「時間の無駄だし面倒。手っ取り早く、友人が勧めてくれた保険に入ろうよ」といい、いつの間にか加入している……というように。

お互いバリバリ稼ぐパワーカップルなだけに、それぞれしっかりした意見を持っていて、ぶつかってしまうのでしょう。本当は、ちゃんと相談して足並みを揃えたいのに、どうしても譲り合えない。家で話し合うと決まって喧嘩になる。そんな2人だからこそ、私共のところに相談に来られたわけです。

旅行費は年間予算を設定しメリハリを徹底

では、どう改善したらよいか。

まずメスを入れたのは、やはり月30万円の娯楽費。ここは大事なお金なので、できるだけ削りたくないとのこと。そこで、年間予算を決めることに。その額240万円。月にならすと、20万円です。夏休みなど多めに旅行費をかけたい時は、祝日のない6月を0円にするなど帳尻を合わせるのです。実際、旅行回数を減らすと、車で行っていた分、ETC代やガソリン代、駐車場代が1万円減って、自動車関連費も4万5000円に削減できました。

食費と日用品などは月々の予算を決めて、現金管理にしました。食費は12万円のまま変わらず、日用品・雑貨は2万4000円をカットして3万3000円に。教育費は、子供たちのモチベーションが下がってきた習い事をやめることで、5万円減らして10万円に。

【図表】メタボ家計BEFORE⇒AFTER

旅行費の他の費目もスムーズに削減できた勝因は、夫婦のメリハリの良さです。旅行費などかけたいところにはかける。その分、かけたくないところ、かけなくてもいいところは徹底的にカットしようという判断が奏功しました。

食費と日用品などを現金管理にしたのも、その一つの手段。クレジットカードや支払いアプリはポイントが貯まり利便性がある半面、使いすぎてしまう傾向があります。そこも改革することで、細かなムダを削減できたといいます。

かくして、月の支出計21万4000円を減らして、120万5000円から、99万1000円に。家計改善後の収支の差額は+24万4000円です。以前は+3万円でしたから、8倍もの黒字額を生み出すことができたわけです。

繰り上げ返済せずに投資をした方がいい理由

これなら、当初の相談目的だった繰り上げ返済は、余裕で実現するはず――。ところが、私共のオフィスに通い始めているうちに、夫婦の考えに変化が出てきました。「繰り上げ返済に固執せず、貯まったお金は運用に回していこう」と。

今、我々のプログラムに通っていただいて3年目ですが、一年前から投資を始め、毎月、世帯で10万円ずつ積み立てています。加えて、ボーナスの一部を、NISAの成長投資枠に投じています。

相談当初の貯金額は700万円だったのに対し、最初の一年目で貯金は300万円ほど増えました。そこから、固定資産税や臨時支出などが随時引かれ、3年経過後の現在の貯金額は1500万円ほどです。私共は、7.5カ月分の生活費は「生活防衛資金」として、常に預金口座に入っているように貯蓄を勧めています。岩波家の場合、月の支出99万円なので742万5000円。生活防衛資金を十分に確保できた時点で、NISAを始めたわけです。

さて、余剰資金で繰り上げ返済をすることと、運用に回すこと、どちらが“正解”なのでしょうか? 考え方次第ですが、私は、運用に回してもよいと考えています。その理由は2つ。

1つは、数字上のプラス。

2025年4月から、主要銀行の変動金利は上がり、現在は2~3%。一方で、NISAの成長投資枠で投資をすると、運用利回りは年5%は目指せる可能性があります。

そう考えると、繰り上げ返済せず、月10万円を年利5%で運用しながらリターンを得る方が、“お得”と言えます。複利効果でお金を増やしていって、返したいときに、これまで積み立ててきた一部を取り崩し、返済すればよい。夫婦のその作戦には、私も賛成です。

2つ目の理由は、この夫婦の場合、運用するほうが楽しく継続しやすいと考えたからです。一方、「借金はさっさと返したい」「そういう不確定要素は避けたい」と考える人は、繰り上げ返済をしていいと思います。

横山光昭『はじめての人のための3000円投資生活 新NISA対応版』(アスコム)
横山光昭『はじめての人のための3000円投資生活 新NISA対応版』(アスコム)

ただ、今回はともに正社員で、かつ収入も高いのでリスクを取れる立場でもあります。加えて、コツコツ貯金に励むより、リスクを取って投資をするほうが性に合っているように見えます。要は、“得意分野”を伸ばした方が夫婦の幸せだと思えたのです。

元来稼ぐことが好きな人は、お金を増やすことにいい意味で執着するケースが多い。今回の2人も実際投資をやってみて、増えるのを実感していくうちに、「これはやらないと損だね」という考えに切り替わりました。さらに、「私、こういう配分で組んだの」「俺はこうだよ」と話が弾み、新たな「共通の趣味」が加わったようです。

今後、相場が大暴落しても、1500万円の貯蓄と継続的に収入がある限り、生活が破綻するリスクは少ないでしょう。あとは、お子さんたちが、お金のかかる趣味に目覚めないことを祈るばかりです。

横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。

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