1. トップ
  2. 『交通費だけもらってチャリで通勤』…詐欺になるって本当?→バレたときに起こる“法的リスク”とは?【弁護士が解説】

『交通費だけもらってチャリで通勤』…詐欺になるって本当?→バレたときに起こる“法的リスク”とは?【弁護士が解説】

  • 2025.7.15
undefined
写真はイメージです。記事の内容とは直接関係ありません。/ 写真:photoAC

 

アルバイトや会社勤めの中で「交通費支給」はよくある待遇のひとつ。でも実は、もらっている交通費の使い方によっては、思わぬトラブルやペナルティに繋がるケースも……。

たとえば、「電車通勤と申告して交通費を受け取りつつ、実際は自転車で通っている」というケース。この行為は、労働契約や法律の観点から見て問題があるのでしょうか?

今回は、労働問題・交通事故・詐欺被害救済・家事事件を重点的に取り扱う『じょうばん法律事務所』鬼沢健士先生に、気になる“交通費と通勤手段”の関係をお伺いしました。

虚偽の交通手段申告は「詐欺」になる?

会社から支給される交通費は、申告された通勤手段に基づいて計算されます。つまり、会社側は「電車で通っている」と信じているからこそ、電車代としての交通費を支給しているわけです。

この前提が誤っている場合、以下のようなリスクが発生します。

  • 虚偽の申告であれば「詐欺」になる可能性も
  • 故意にウソの通勤手段を申告していた場合、詐欺に該当する恐れがあります。
  • 届け出忘れでも“返還義務”は生じる
  • 転居や通勤手段変更を会社に伝え忘れていた場合でも、「本来不要だった交通費」は返還しなければなりません。

ポイント:

  • 詐欺かどうかは“故意性”がカギ
  • 悪意がなかった場合でも、受け取った分は返金義務あり

実際に裁判で争われたケースはある?

undefined
写真はイメージです。記事の内容とは直接関係ありません。/ 写真:photoAC

このような交通費の不正受給に関して、裁判まで発展した例は意外と少ないようです。

  • 交通費返還を命じた裁判例は確認されていない
  • 多くは会社との話し合いで解決
  • もし法的手続に発展した場合、会社が「実際に交通費を使っていなかった」ことを証明できれば、返還が命じられる可能性が高い

逆に言えば、証拠が不十分であれば、会社の返還請求が通らないケースもあると考えられます。

発覚したらどうなる?懲戒処分の可能性も

「ちょっとしたことだから…」と軽く考えるのは危険です。交通費不正が発覚すれば、会社からの懲戒処分を受ける可能性があります。

  • 軽い処分:減給・始末書・出勤停止
  • 重い処分:懲戒解雇

ただし、処分が重すぎる場合は「不当解雇」として争う余地もあります。特に解雇は重い措置のため、以下の点が判断材料になります。

  • 故意にウソを申告していたか
  • 多くの交通費をどれくらいの期間受け取っていたか
  • 申告ミスや届け出忘れだったか

実際、労働者側が勝訴したケースもあり、処分の重さが過剰であれば争うことは可能です。

“うっかり違法”を防ぐために…申告・確認のチェックポイント

undefined
写真はイメージです。記事の内容とは直接関係ありません。/ 写真:photoAC

知らずに違法状態にならないよう、以下の点に注意しましょう。

  1. 通勤手段は正確に申告(入社時や転居時)
  2. 引っ越したら速やかに会社へ届け出を
  3. 体調・天候による一時的な変更は、事前に相談すれば安心
  4. 「まあバレないだろう」は通用しない。正直さが大切

「知らなかった」では済まされないからこそ…

交通費をもらって自転車で通うこと自体が問題なのではなく、「どう申告しているか」が大きなポイントです。知らずに不正受給状態にならないよう、通勤手段の変更や住所変更はこまめに申告するようにしましょう。


監修者名:鬼沢健士 弁護士

undefined
じょうばん法律事務所:鬼沢健士 弁護士

茨城県取手市でじょうばん法律事務所所属。
できる限り着手金無料で、労働問題(不当解雇、未払残業代等)や詐欺被害救済に積極的に取り組んでいる。