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30年前、日本中の心を洗った“爽やか過ぎる復縁ソング” 黄金コンビゆえに成し得た“夏のミリオンセラー”

  • 2025.7.22

1995年の夏、まるで風が吹き抜けるような1曲が、日本中の耳に心地よく届き、心を洗った。

海岸沿いを走る車、まぶしい陽射し、“突然”の夕立。

どこか切ないはずなのに、どうしようもなく爽やかで、背中を押してくれるようなーーそんな不思議な余韻を残すラブソングだった。

FIELD OF VIEW『突然』(作詞:坂井泉水・作曲:織田哲郎)ーー1995年7月24日リリース。

ポカリスエットのCMソングとしてその名が広まり、最終的にはミリオンセラーを記録した、夏の記憶に刻まれる名曲だ。

30年経った今でも、聴けばあの頃の空気がよみがえる。そんな1曲を、今改めて振り返りたい。

爽快感と切なさが同居する、奇跡のバランス

『突然』は、FIELD OF VIEWにとって2枚目のシングル。デビュー曲『君がいたから』(作詞:坂井泉水・作曲:織田哲郎)で注目を集めた彼らが、一気にその存在を広く知らしめるきっかけとなった作品である。

一度別れた2人が、再び再会し、戻っていくーーそんな復縁のシーン、恋愛の機微が描かれた歌詞でありながら、この曲の持つ空気は驚くほど“爽やか”だ。

それは、歌い出しの瞬間から始まっている。

イントロなしで、浅岡雄也のまっすぐな歌声がすっと飛び込んでくる構成。

感傷にひたるようなトーンではなく、まるで「これが俺たちの自然なことなんだ」とでも言うように、心地よい開放感で歌い上げていく。

別れの余韻よりも、もう一度動き出す気持ちが先に立っている。

だからこそ、リスナーの心には重たさが残らず、むしろ前を向きたくなるような高揚感すら覚える。

ポカリスエットのCMで“無敵の爽やかさ”に昇華した

この曲が爆発的に知られるようになったきっかけは、ポカリスエットのCMソングへの起用だった。

中山エミリがダチョウの背中に乗るために、何度もチャレンジする姿を覚えている人も少なくないだろう。そんな映像とともに流れる『突然』は、まさに“完璧なマッチング”だった。

「恋愛の歌」というよりも、「まっすぐな感情」を肯定する歌として届いたのは、あの映像とのセットがあったからこそ。

耳に残るメロディ、風を感じさせるボーカル、そして疾走感あるアレンジ。それらが一体となって、“1995年の夏”という季節そのものの象徴になった。

坂井泉水と織田哲郎、“夏”を紡いだ黄金ライン

『突然』の完成度を語るうえで避けて通れないのが、作詞:坂井泉水(ZARD)、作曲:織田哲郎という、1990年代J-POPを象徴する名タッグの存在だ。

ポカリスエットのCMソングにおいても、この2人が生み出してきた“夏の記憶”は並々ならぬものがある。

1992年、織田哲郎『いつまでも変わらぬ愛を』(作詞・作曲:織田哲郎)。

1993年、ZARD『揺れる想い』(作詞:坂井泉水・作曲:織田哲郎)。

1994年、DEEN『瞳そらさないで』(作詞:坂井泉水・作曲:織田哲郎)。

まるでバトンを手渡すように、坂井と織田がその年ごとの“夏の景色”を更新し続けてきた。

そして1995年、そのバトンをしっかりと受け取ったのが、FIELD OF VIEWの『突然』だった。

坂井泉水の詞は、どこまでも静かで、直接語りかけてくることはない。それなのに、誰もが自分の中にしまっていた感情をそっと撫でられるような、やわらかな衝撃がある。

「突然君からの手紙」で始まり「またあの日と同じように」と結ぶ。語りすぎず、説明しすぎず、余白の中に感情を漂わせるような言葉運びが、聴き手の想像と記憶を自然に呼び起こしていく。

そしてその詞に寄り添うのが、織田哲郎のメロディ。切なさと爽快感の絶妙なバランスで構成され、リスナーを泣かせようとせずに、それでも心をじんわり揺らしてくる。

押しつけがましさは一切なく、それでも耳に残り、気づけば口ずさんでしまうーー“夏の空気をまとうような旋律”は、まさにこのコンビだからこそ成し得たものだった。

ボーカル・浅岡雄也の声が引き出す“清涼感”

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FIELD OF VIEW ボーカル 浅岡雄也 @WILD_CAT(画像は本人提供)

FIELD OF VIEWというバンドの魅力を語るうえで、ボーカル・浅岡雄也の存在感は欠かせない

透明感がありながら、芯の通ったその声は、まさに“風のような声”。

叫ばなくても届く、力まなくてもまっすぐ伝わる。その声があったからこそ、『突然』は「泣ける曲」ではなく「沁みる曲」になった。

その爽快さは、90年代のJ-POP全体を見渡しても、なかなか類を見ない。まるで聴くだけで汗が乾くような、そんな不思議な感覚すら残してくれる。

“あの夏”を思い出すたびに、ふと流れてくる曲

『突然』は、30年経った今も、変わらず多くの人の記憶に残り続けている。それはこの曲が、“恋”や“別れ”だけではなく、“風景”や“季節”そのものを歌っていたからだろう。

聴けば、あの夏が戻ってくる。

聴けば、自分の中のまっすぐだった気持ちがふと息を吹き返す。

そんな曲は、そう多くはない。

『突然』は、ただのヒットソングではない。あの時代を生きた人たちの“夏の記憶そのもの”になっているのだ。



画像提供

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2025年現在のFIELD OF VIEWメンバー(画像は同グループ提供)

※この記事は執筆時点の情報に基づいています。