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25年前、日本中が聴き惚れた“異質なサヨナラの歌” 忘れられない恋をそっと封じた“時代を超える1曲”

  • 2025.7.21

「25年前の秋、どんな歌が心に残っていたか覚えてる?」

2000年は、ミレニアムイヤーの熱狂がまだ残る時期。明るく、前向きで、キャッチーな音楽が求められていた中で、ひときわ陰影を帯びた“情の濃い”一曲が、人々の胸をざわつかせた。

ポルノグラフィティ『サウダージ』(作詞:ハルイチ・作曲:ak.homma)ーー2000年9月13日リリース。

それはただの失恋ソングではなかった。恋の余韻や温度を、ここまで鮮やかに、そして複雑に描いた曲は、当時としても異質だった。

“売れ線”に背を向けた、デビューから1年足らずの表現

ポルノグラフィティは、1999年9月8日に『アポロ』でメジャーデビュー。昭和と平成の時代感を横断するようなユニークな視点と、アキヒト(岡野昭仁)の圧倒的なボーカル力で、デビュー作にして一躍脚光を浴びた。続く『ヒトリノ夜』『ミュージック・アワー』(ともに作詞:ハルイチ・作曲:ak.homma)とヒットを連発し、瞬く間にJ-POPの中心に躍り出る。

そんな彼らが、デビューからわずか1年足らずで放った4枚目のシングルが『サウダージ』だった。

前3作のような勢い重視のアッパーソングではなく、抑制の効いたミディアムテンポに、情熱と哀愁が交錯する構成。リスナーが思わず立ち止まりたくなるような、「聴かせる」タイプの楽曲だった。

その選択は、“売れ線の延長”ではなく“表現として残すべきもの”を選んだ姿勢の表れだった。若さの勢いではなく、楽曲で勝負するーーポルノグラフィティというバンドの本質が垣間見えた瞬間でもある。

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(C)SANKEI

冒頭から“感情の核心”に飛び込む構成

“サウダージ”とは、ポルトガル語で「懐かしさ」や「人恋しい思い」といった感情を表す言葉。その言葉をタイトルに据えたこの曲は、出会いでも別れでもなく、“終わったあとに残る想い”を描いている。

冒頭、キャッチーなサビからはじまり、その直後に流れる印象的なストリングスが、情緒の色温度を一気に下げていくような冷たさと美しさを残す。

プロデューサーでもあるak.homma(本間昭光)によるメロディは、サビで高音域で開け、Aメロ・Bメロでは感情を抑え込むような旋律。淡々と進みながら、心をじわじわ締め付けてくる構造は、“簡単に泣かせない”という強い美学すら感じさせる。ボーカルのアキヒト(岡野昭仁)は、それを見事に表現してみせた。

ハルイチの“描かないことで語る”歌詞世界

作詞を手がけたのは、ギターのハルイチ(新藤晴一)。この曲の歌詞が強く印象に残るのは、“描きすぎないことで、想像を膨らませる”余白の巧みさにある。

恋がどう終わったのか、誰が何をしたのかはほとんど語られない。それなのに、歌詞の一行一行に“どうしようもなかった関係の終わり”がにじみ出ている

「涙が悲しみを溶かしていく」「もっと知って、もっとわからなくなっていく」

女性視点で描かれた詞には、長い時間経過をすべて閉じ込め、リアルな恋の終わりにある“冷たさと未練の混在”を見事に浮かび上がらせた。

恋の余韻を描いた異色のヒット作

『サウダージ』は、発売当時から大きな反響を呼び、CDの出荷枚数でミリオンを超えるヒットとなった。

派手な展開があるわけでもなく、サビで感情が爆発するわけでもない。むしろこの曲は、“爆発する直前の沈黙”をずっと描き続けているような楽曲だ。

リスナーにすべてを語らず、判断も委ねる。

それでも人の心に深く入り込む力があったのは、恋というものの複雑さを真正面から見つめたからこそだろう。

25年経った今でも、記憶のどこかで鳴っている

『サウダージ』は、年齢を重ねた今だからこそ、より深く響く楽曲かもしれない。

若い頃は「大人っぽい曲だな」と思っていたものが、気づけば自分の過去の恋とぴったり重なっている

恋が終わっても、気持ちが全部なくなるわけじゃない。言葉にならないまま残る感情――それを音楽として残してくれたのが、この曲だった。

そのすべてが「別れのあとに人が抱える、説明のつかない感情」をそっと受け止める器になっている。

25年経っても、ふとしたときにこのメロディが流れてくる。それは、この曲が“思い出”ではなく、今も続く“記憶の一部”として生きている証なのかもしれない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。