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35年前、日本中の心が燃えた“最高に暑苦しい夏メロ” 季節を独占しJ-POP史に刻まれた“灼熱の代名詞”

  • 2025.7.19

「35年前の夏、何を聴いていたか覚えてる?」

1990年といえば、バブル経済がまだ余熱を残していた頃。街にはトレンディドラマの主題歌が溢れ、テレビの中も外も“キラキラ”していた時代だった。

だが、そんな浮かれた空気の中で、不意に風穴を開けるような1曲が、海辺から聞こえてきた。

TUBE『あー夏休み』(作詞:前田亘輝・作曲:春畑道哉、前田亘輝)ーー1990年5月21日リリース。

この1曲が、日本人の“夏の記憶”を完全に書き換えた。

“夏=TUBE”という等式を定着させた決定打

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(C)SANKEI

『シーズン・イン・ザ・サン』(作詞:亜蘭知子・作曲:織田哲郎)『SUMMER DREAM』(作詞:亜蘭知子・作曲:織田哲郎)など、TUBEにはこれまでも夏をテーマにした楽曲群はあった。しかし、11枚目のシングルとなる『あー夏休み』は、彼らの代名詞ともいえる“夏歌”路線を決定づけた代表作と言っていい。

イントロのギターからすでに灼熱感全開。そこから流れ込むメロディとサビの掛け声は、聴いた瞬間に「夏、来たな」と思わせる力を持っており、日本中の心を燃えさせた。

歌詞の内容自体はシンプルで、どこか男の妄想じみた“夏の恋”を描いているだけなのに、その暑苦しさすら含めて、不思議と愛おしく感じられる。むしろ、その青臭さやベタさこそが、1990年代の“正しい夏の形”だったのかもしれない。

そして何よりも印象的だったのが、あのサビのフレーズ。

「あー夏休み」

たったこれだけの言葉が、リスナーの脳内に焼き付き、季節のBGMとして、”最高に暑苦しい夏メロ”として何年も鳴り響き続けた。

なぜ『あー夏休み』は“夏の定番ソング”になったのか?

90年代初頭、J-POPはまだジャンルの境界が曖昧だった。

そんな中でTUBEは「夏」「海」「恋」「汗」「水着」……どこを取っても直球すぎるテーマで勝負を続けてきた。

それでも『あー夏休み』が特別だったのは、その“コミカルさ”の中に、なぜか妙に説得力があったからだ。

暑苦しい男たちが、浜辺でビールと妄想で盛り上がっている様子がリアルに浮かび、それが「うるさいけど嫌いじゃない」感情に変わる。

そして気づけば、自分の中にも“こんな夏を過ごしてみたかった”という記憶が生まれているーーそんな不思議な力があった。

また、春畑道哉によるキャッチーなギターリフと、前田亘輝の“やんちゃでちょっとお調子者”なボーカルが絶妙に噛み合い、夏の空気そのものを音に変換したような存在感を放っていた。

“夏だけ売れるバンド”の、逆説的な強さ

当時、「TUBE=夏しか売れないバンド」という言い方をされることもあった。だが裏を返せば、それだけ“夏”という季節に対する支配力を持っていたということだ。

実際、『あー夏休み』以降のTUBEは、毎年のように夏時期にシングルをリリースし、タイアップやCMと共に“季節を告げる存在”になっていく。

つまりTUBEの登場=夏の始まり、というサイクルを自ら築き上げたのだ。

J-POPにおいて、季節と密接に結びついたアーティストは多いが、“夏”をここまで独占した例は他にない。

そしてその中心にあったのが、まさにこの『あー夏休み』だった。

今、あの“灼熱の代名詞”を聴くと、なぜか笑えて、ちょっと泣ける

35年が経ち、TUBEのような“季節で勝負するバンド”は珍しくなった。

サブスクやSNSの時代には、季節感よりも“可処分時間の奪い合い”が重視される。

だが、それでもなお、真夏の海沿いをドライブしていて『あー夏休み』が流れたら、きっと誰もが笑ってしまうはずだ。

「くだらない。でも最高に楽しい」

そんな感情が、全力で波打ち際からやってくる。

“何も起きない夏”にすら、TUBEはドラマを与えてくれた。令和の夏にこそ、この“真っ直ぐすぎる1曲”を聴き返したい。

そこには、青春の残り香と、ちょっとした哀愁が、今でも確かに生きている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。