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「途中で観るのやめた」「観るに耐えない」“リアルすぎる脚本”に離脱者も…だけど「最後のカットまで観て」絶賛の衝撃映画

  • 2025.7.22

映画の中には、役者の演技力によって心を揺さぶられる作品があります。今回は、そんな中から"母親役の怪演が話題の作品"を5本セレクトしました。本記事ではその第4弾として、映画『きみはいい子』(アークエンタテインメント)をご紹介します。娘を虐待する母と、そばに寄り添うもうひとりの母…。その温もりがもたらす奇跡とは――。

※本記事は、筆者個人の感想をもとに作品選定・制作された記事です
※一部、ストーリーや役柄に関するネタバレを含みます

あらすじ

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(C)SANKEI
  • 作品名(配給):『きみはいい子』(アークエンタテインメント)
  • 公開日:2015年6月27日
  • 出演:高良健吾(岡野匡 役)

新米教師の岡野(高良健吾)は、生徒との距離感に悩みながら、教壇に立っています。独り暮らしのあきこ(喜多道枝)は、認知症の不安を抱え、小学生との毎朝の挨拶だけが心の支え。一方、主婦の雅美(尾野真千子)は、ママ友たちと表面上はうまく付き合いながらも、その裏では娘を虐待しています。そんな雅美を見守る、ママ友・陽子(池脇千鶴)。同じ街に暮らす大人と子どもたちが、それぞれの問題に向き合い、人とのつながりの中に希望を見出していく――そんな感動物語です。

“家族の物語”を描いてきた監督が、初めて選んだ群像劇

本作の原作は、中脇初枝さんの同名短編小説集『きみはいい子』2013年本屋大賞で第4位に選ばれ、第28回坪田譲治文学賞も受賞した話題作です。

監督は、『そこのみにて光輝く』で国内外の映画賞を受賞した呉美保さん。これまで家族や人間関係を描いてきた呉さんにとって、初の群像劇となりました。

物語は、新米教師の岡野(高良健吾)、娘に手をあげてしまう主婦・雅美(尾野真千子)など、それぞれが抱える葛藤と、揺れ動く心の内が丁寧に映し出されていきます。

傷つける母と、抱きしめる母

本作で尾野真千子は、虐待する母親という難しい役どころを、魂を揺さぶるような圧巻の演技で表現しています。彼女が演じる雅美は、自身も親から暴力を受けて育った過去を抱えており、その連鎖を断ち切れずに苦しむ姿が胸に迫ります。

表面上は穏やかなママ友関係を保ちながらも、家庭では感情を抑えきれず、娘に手をあげてしまう――。尾野さんは、この複雑な心理を丁寧に掘り下げ、葛藤と怒りの間で揺れ動く母親をリアルに演じました。

虐待を繰り返す雅美とは対照的に、池脇さん演じる陽子は本作の“救い”を象徴する存在です。彼女もまた過去に傷を抱えながら、その大らかさと包容力で傷ついた相手に優しく寄り添います。

特に印象的なのが、雅美を抱きしめるシーン。自分を責め、感情を爆発させる雅美を、陽子はただ強く抱きしめます。

この演技には、SNSでも「池脇千鶴さんが最高オブ最高」「尾野真千子の哀しい境遇を見抜いて抱擁する池脇千鶴の凄みに感服」といった称賛の声が寄せられました。

陽子という存在がいたからこそ、雅美は自分を責め続ける苦しみから解き放たれたのでしょう。

また、「辛すぎて途中で観るのやめた」「リアルすぎて怖い」「観るに耐えない…」といったコメントが見られ、あまりの生々しさに心抉られる視聴者も。しかし「どうか痛みに耐えて最後のカットまで観てほしい」「最後まで観て良かった」という声も非常に多く、最後まで観るからこそ得られるものがあることを感じさせます。

抱きしめるという行為がもたらした“連鎖の終わり”

抱きしめられたい。子どもだって。おとなだって。」――。

このキャッチコピーが示すとおり、本作は、“抱きしめる”いう行為がテーマです。

暴力ではなく、触れることで伝わる温もりが、登場人物たちを少しずつ変えていきます。劇中で池脇さんが尾野さんを抱きしめたように、撮影現場では暴力シーンのあと、毎回、尾野さんが子役をぎゅっと抱きしめ、心を配っていたそうです。

SNSでの反響も大きく、「感動に打ち震えたというか、すごい救われた」「とんでもない傑作を観た」といった声が絶えません。

言葉よりも先に届く温もりが、怒りや悲しみの連鎖を断ち切るきっかけになる――。本作は、誰かの痛みに手を差しのべることの大切さを教えてくれる、珠玉の名作です。


※記事は執筆時点の情報です