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今後「上昇物件」と「下落物件」の二極化が進む…一戸建売却に成功したFPが指南する「失敗しない不動産投資」

  • 2025.6.30

不動産は最も身近な投資とも言える。73歳現役FPの浦上登さんは「私も若い頃に一戸建を売却し、500万円のプラスになった。既に家や土地を持っている人は始めやすいが、不動産投資には注意点がいくつもある」という――。

不動産価値は今後も上がるのか

今回は不動産投資について考えてみたい。

2010年からの15年間で不動産価格は都心のマンションでは2.11倍、南関東の戸建ては1.15倍に上昇している。

問題はこれからもこの上昇基調が続くかどうかだが、都心は上昇もしくは高止まりが続くと思われる。郊外や中古不動産は鈍化するか、小幅で下落することも予想され、二極構造を示す可能性もあると思われる。

理由は次の通り。

1)都心におけるマンション建設用地の供給不足。
2)インフレによる建築費(人件費・資材費)の高騰
3)円安による海外からの投資需要は依然底堅い
4)不動産価格下落の要因は金利引き上げだが、トランプ関税による輸出需要の後退で日銀も金利引き上げをしにくい状況が続くと思われる。

そうした状況を踏まえて、まず、不動産投資の特徴について説明する。

電卓を持つ男性
※写真はイメージです
買うだけじゃない、不動産投資のやり方

投資にはいくつかの種類があるが、その中でも不動産投資は、株式投資・債券投資などの金融投資、金などの貴金属投資と比べてかなり違う。後者がほぼ金銭の世界で完結するのに対し、不動産投資には、常に不動産という現物資産がついて回り、また、不動産自体の値上がり益というキャピタル・ゲインと、賃料というインカム・ゲインの二つ要素を考えて投資をする必要があるからだ。

それだけでなく、投資の対象である不動産の価値を測る基準が実に様々だ。

立地、用途、床面積の広さ、建物の仕様等、様々な要素を考慮して、対象物件を決める必要がある。

複雑でいろいろ知識が必要な不動産投資だが、ワンルーム投資を始めとして、アパート経営など投資用不動産を購入して、家賃を稼いでいる人も多い。一方で、不動産投資にはプロ並みの知識と経験が要求されるので、生半可な知識で投資をして痛い目を見ている人も多い。その実例については記事の後半で説明したい。

それでは不動産への投資形態はどのようなものがあるか見てみよう。

図表1をご覧いただきたい。ここに挙げた投資の形態は、①現物の直接保有、②上場REITと③の開発・転売(フリップ)だ。

【図表1】不動産投資の代表的な形態とメリット・デメリット
家賃収入を得て、最終的には売却

まず①現物の直接保有だが、投資対象の不動産の種類は、区分マンション、1棟アパート・マンション、一戸建から商業ビル、オフィスビル、駐車場やトランクルームなどと種類は多い。これらを賃貸してインカム・ゲインを稼ぎ、最終的には売却してキャピタル・ゲインも稼ぐというのが投資の目的だ。

頭金の準備、物件の購入、ローンのアレンジ、賃借人の募集と家賃の徴収、物件のメンテナンス、市況に応じた家賃の改訂、最終的には物件の売却という仕事をする必要がある。これらの仕事をこなすには様々な知識がいるし、手間もかかる。その中の一部は専門業者に委託することができるが、リスクは投資主である自らが負わなければならない。

これが、投資が他の金融投資と大きく異なる点だ。

不動産投資で財を成すには物件を複数持ち、銀行借り入れを通じてレバレッジ効果を利かす必要があるが、これだけのことをやるのは一つの事業と言うことができる。

家
※写真はイメージです
一戸建て売却で500万円プラスになった

私も若いころ一戸建の賃貸をやった経験がある。実は自宅として購入した物件をやむを得ない事情で、あとで賃貸にだしたもので、最初に慎重に物件を選んだことが、いい借り手が付いたことに結び付いた。一生のうちで一番高価な買い物だという意識でかなり勉強をし、かつ、何十件も物件を見たことで、物件を選ぶコツも身についた。現在では、すでに売却している。

東京近郊の床面積80平米程度の一戸建だったが、家賃・売却金額等の収入が、購入費・ローンの金利支払い、物件の修繕費等の経費に対して、500万円ほど上回った。7年ほど自宅として住んだことを考慮すれば、総合的に考えて成功だったと思う。

不動産投資の証券「上場REIT」へ投資する

これに対し、②上場REITは不動産投資自体を証券化して株式と同じ金融商品に仕立て上げたものだ。現物の直接保有と比べ投資対象の物件はオフィスビルなど大きくなるが、不動産投資事業者が間に入るので、投資家は株主として値上がり益、配当を得ることに注力すればよい、不動産に関する知識はいるが、実務は全くなくなるので、株式、債券、金への投資と同じスタンスで取り組むことができる。

また、不動産投資はどうしても地域に縛られるが、REITの場合は海外の物件に投資をすることも可能になるという柔軟性がある。

東京スカイツリー
※写真はイメージです
個人や副業では難しい不動産の「開発・転売」

③の開発・転売(フリップ)は、土地を仕入れ、新たに建物を建設し、分譲したり、中古物件を買い取った上で、リフォームをして転売するなど、やることは不動産業者と変わらず、資金もかなりいるので、規模の大きなビジネスになる。ダイナミックな投資方法ではあるが、個人で行うにはリスクが大きすぎるだろう。

結局、個人でやるには、現物の直接保有による賃貸か上場REITを購入するということになる。

株式と比べた不動産投資のメリットは?

図表2、図表3を見ていただきたい。

図表2は、2004年から2025年までの米国における金(ゴールド)価格、株式指数(S&P500)、REIT指数、債券指数の上昇率を比較したもの、図表3はその比較チャートである。(すべてドル建てだが、それぞれの投資の位置づけを見るには役に立つ)

直近21年の複利ベース年上昇率を比べると、金が10.52%、S&P500が8.08%、REITが3.00%、債券は△0.18%となる。金の価格の上昇率が最も高いが、次にS&P500でREITはそれほど大きくないが、手堅い安定した投資といえる。

不動産を現物保有した場合のリターンは投資のやり方によっても異なるのでREITとは異なるが、不動産投資は株式投資と債券投資の中間に位置するミドルリスク、ミドルリターンの投資と考えてよいと思う。

【図表2】金/S&P500/REIT/債券の上昇率比較(2004/1/1~2025/6/2)
【図表3】金/S&P500/REIT/債券の上昇率比較(2004/1/1~2025/6/2)
不動産への投資が向いているのはどんな人か

図表4は不動産投資の特徴である。これから言える不動産投資に向く人は以下の通り。

1) 現物不動産への投資

主にインカム・ゲインを狙う人で、不動産の知識があり、管理・運営に手間がかけられる人。都心などの人口密集地に物件を買えば、株式と違い急激に不動産価格が下がることはなく、安定したインカム・ゲインが期待できる。

土地などの遊休資産がある人はその上にアパートなどを建てればそれほど大きなリスクはない。

2)REITへの投資

株式投資を行っている人でリスク分散のため株式と値動きの異なる不動産への投資を考えている人。株式と同様、急激な価格変動がありうるので、その点に関するリスクコントロールが必要。

【図表4】不動産投資の特徴
実物資産だけに、災害や景気悪化には弱い

投資ポートフォリオを考えるときは図表5を参考にするとよい。

【図表5】他資産クラスとの比較
サブリースで失敗し、やむなく物件を売却した実例

不動産投資は複雑だ。物件の選択も重要だが、賃貸が長期間にわたるためその契約条件、キャッシュフローを慎重に検討して契約する必要がある。入り口が重要なので、綿密にことを運ぶ必要がある。

初心者が簡単な気持ちで契約をすると後悔することになりかねない。

私の友人がサブリース案件で投資を失敗し、やむなく物件を売却したことがある。似たような実例は何件か知っている。

サブリース契約とは、賃借人と家主(投資家)との間にサブリース業者が入り、サブリース業者が空室があっても家賃の支払いを保証する仕組みだ。その代わりにサブリース業者は手数料を取る。物件は都心のワンルーム・マンションで立地も悪くなく、その選択自体は問題なかった。しかし、この契約には問題点が二つあった。一つ目は家賃から手数料を取られるだけでなく、家賃の変更権もサブリース業者が持っていた。市況が悪くなれば業者が家賃を下げることができる。

「ローンを組んで払えば将来、利益に」は本当か

二つ目はキャッシュフローが悪いこと。頭金なしの100%ローン案件なので手持ち資金がなくとも将来大きな利益を得ることができるといううたい文句にひかれて契約したが、返済金額が増え家賃と返済金額がほぼ同額になってしまった。業者への支払費用などの諸費用を入れると、キャッシュフローはマイナスだ。修繕積立金も年々大きくなっていくのでキャッシュフローもさらに悪くなっていく。

上記二つの問題点を抱えていたため、少しぐらい物件価格が上がっても赤字は回復できない状態になっていた。

不動産投資ではよくあるケースだが、サブリースは業者にうまみを持っていかれるだけで決していいことはない。業者は家賃保証をするためにはそれなりの利益を確保しようとするからだ。

頭金なしのローン100%も初心者が陥りやすい罠といえる。手許資金なしでも将来大きな利益が……というのはほとんど楽観的すぎる見込みで、実際は物件のキャッシュフローを悪化させるだけである。

不動産投資は複雑なだけに様々な段階に投資家が陥りやすい罠がある。初心者が安易な気持ちで取り組んでいいものではない。

だからと言って、不動産投資自体が悪だというわけではない。きちんとした知識を持ち、しかるべき手間をかければ大きなリターンが期待できる投資と言って差し支えない。

投資のリスクは株式投資にもある。リスクの内容が違うだけだ。

この件でコメントするのなら、しかるべき頭金を支払い、キャッシュフローをプラスにした上で購入する。立地は悪くないので、サブリースなどせずにしかるべき不動産管理会社と契約し、空室リスクを自ら負担して、余分な手数料を排除すべきであったということが言える。

浦上 登(うらかみ・のぼる)
コンサルタント
早稲田大学政治経済学部を卒業後、三菱重工業に入社、海外向け発電プラントの仕事に携わる。ベネズエラ駐在、米国ロサンゼルス営業所長などを歴任後、三菱重工グループの保険代理店に移り、取締役東京支店長。2009年にはファイナンシャル・プランナーの上位資格CFPを取得。2017年にサマーアロー・コンサルティングを設立、著書に『70歳現役FPが教える 60歳からの「働き方」と「お金」の正解』(PHP研究所)がある。

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