1. トップ
  2. 40年前、日本中の心を掴んだ“セーラー服の衝動CMソング” 昭和歌謡の名コンビが生んだ“伝説のデビュー曲”

40年前、日本中の心を掴んだ“セーラー服の衝動CMソング” 昭和歌謡の名コンビが生んだ“伝説のデビュー曲”

  • 2025.8.4

「ラーメンのCMで泣きそうになるなんて、思ってもみなかった。」

昭和60年。テレビ画面の中央に立っていたのは、セーラー服に赤いカーディガン、そして剣道の白い道着に赤いハチマキ――どこから見ても“青春そのもの”だった少女。

明星食品「青春という名のラーメン」のCM。その映像から流れてきたのが、斉藤由貴のデビュー曲『卒業』(作詞:松本隆・作曲:筒美京平)――1985年2月21日リリース

アイドルの登場にして、別れの曲。明るくもなく、かといって泣くわけでもない。なのに、妙に心をつかまれてしまう。

この一曲は、“卒業ソング”という言葉すらまだ一般的ではなかった時代に、春にまつわる感情の居場所をそっと提示してくれた存在だった。

undefined
(C)SANKEI

“名コンビ”が刻んだ、時代と感情の輪郭

この曲を作ったのは、昭和歌謡の黄金期を支えた2人の名匠――作詞・松本隆、作曲・筒美京平。

派手さを削ぎ落とし、“言葉にならない気持ち”を静かに浮かび上がらせる詞と旋律。

それは、アイドルのデビュー作という枠を明らかに超えていた。

さらに、『卒業』の背景には、2人が手掛けた太田裕美『木綿のハンカチーフ』(1975年12月21日リリース)と通じる世界観も流れている。どちらも、地方に残る少女が、都会へ行く彼を想う構図。

地方と都市、残る者と旅立つ者――急速な都市化と進学・就職による“移動”が当たり前だった時代の空気を、この2作は静かに切り取っていた。

若き日の武部聡志が吹き込んだ“静かな衝撃”

この『卒業』で編曲を担当したのは当時まだ20代だった武部聡志。のちに多くのアーティストの音楽監督を務め、J-POPの屋台骨を支える存在となる彼にとっても、この曲はキャリアの大きな節目となった作品だ。

冒頭のシンセサイザーの音が、何より印象的だ。一音目で空気を変えてしまうようなあの浮遊感。

続いて入ってくる木管楽器のやさしい音色、息をのむような静けさのなかに響くコーラス――すべてが「過剰にならない」ために計算されながら、同時に“記憶に残る”仕上がりになっていた。

アレンジの全体には、説明しない強さがある。この空気感こそが、“斉藤由貴の歌声が成立する場所”を完璧に用意していた。

一瞬の映像が、永遠の記憶になる

明星食品「青春という名のラーメン」――セーラー服に赤いカーディガン、剣道着に赤いハチマキ。真ん中に立つ斉藤由貴は、言葉も動きも最小限。にもかかわらず、画面に現れた瞬間、“これは青春だ”と納得させられる存在感があった。

可愛い、では言い足りない。あの15秒には、説明のつかない“心のざわめき”が詰まっていた。

「卒業ソング」は、まだ“卒業ソング”ではなかった

今でこそ、春になると“卒業ソング”という言葉が飛び交う。

けれど、当時はそんなジャンル分けもなく、ただなんとなく、“自分の気持ちに似ている曲”として、人はこの歌を選んでいた。

自分でもうまく言葉にできない気持ちを、この曲は少し先回りして受け止めてくれる。

『卒業』は、そうした“感情の預け場所”として、春になるたびにそっと再生されてきた。

40年経った今も、春になると聴きたくなる理由は、たぶんそれだけで十分なのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。