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20年前、日本中の心を締め付けた“複雑なラブソング” ミリオンを記録し愛され続ける“あの夏の名曲”

  • 2025.7.24

「2005年、ふと耳にしたこのメロディに、胸がぎゅっと締めつけられた」

2005年といえば、音楽チャートではORANGE RANGEや平井堅、柴咲コウなど多彩なアーティストが名を連ね、ドラマでは『ドラゴン桜』(TBSテレビ系)や『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)が話題に。携帯電話は折りたたみ式が主流で、YouTubeやSNSがようやく芽吹き始めたばかりの頃だった。

そんな2005年9月21日にリリースされ、発売直後から日本中の心を締めつけた楽曲ーーそれが、大塚愛の『プラネタリウム』(作詞・作曲:愛)だった。

同年のTBS系ドラマ『花より男子』の挿入歌としての起用もあり、配信でミリオンセラーを記録するほど大ヒットしたこの楽曲。20年が経ったこのタイミングで、改めてその魅力や注目したいポイントについて振り返っていきたい。

“日本の夏の終わりの温度感”を映すサウンド

『プラネタリウム』がリスナーに深く浸透した理由の一つは、その“音の温度感”にある。

『プラネタリウム』という曲名を携えながらも、八尺や打楽器が静かに奏でられることで、どこか醸し出される古風かつ和風な雰囲気。そこに全篇を通してゆったりと丁寧に、ささやくように響くピアノの音色が重なる。そしてそれらの音色が混ざり合う中に、大塚愛の柔らかで、でも時折、力強さを見せる歌声が寄り添い合う。

聴く者によって受ける印象は異なりさまざまな解釈があるだろうが、まさに“日本の夏の終わり際”を彷彿とさせるような旋律だ、と筆者は感じた。

静かで穏やか、でも温かいーーそんな温度感。9月下旬という、夏の余韻と秋の訪れが交差するリリース時期も相まって、忘れられない夏の記憶や過ぎゆく季節への感傷を抱く人々の心の芯に強く響いたのではないだろうか。

“天真爛漫キャラ”が見せたもうひとつの顔ーー言葉で描く、会えない夜の情景

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(C)SANKEI

この楽曲において最も注目すべき点は、その歌詞にある。

サビ頭の「行きたいよ 君のところへ」という歌詞から、一聴するだけだと恋人や想い人のところに会いに行きたいと願う、シンプルなラブソングであると錯覚してしまう。しかし、この楽曲の歌詞の核をなしているのは、会いたくても“もう会えない”相手を想う切実な心情であり、聴くほどにその意味を考えさせられるものになっているのだ。

これまた解釈は聴く者によってさまざまではあり、ネット上にも数多の考察がなされているが、この楽曲の歌詞は“若い頃に死別してしまった恋人”に向けて歌われたものである、という解釈が多く見られた。歌詞を注意深く見たことのない読者にとっては、意外に感じられるのでないだろうか。

あの夏、同じ道を歩き、隣でキレイな花火や満天の星空を一緒に見上げた、小さな“君”。もう会うことができない“君”を強く想い求めてしまう気持ちと、“君”がいなくてももう涙を流さないという決意、その間で揺れる心。美しい星空を眼前に昔を思い出してしまったことで、逆に現在の自身の孤独が際立ち、「君に会いたい」「君のところに行きたい」と、思わず涙がこぼれそうになってしまうーーそんなとてつもなく複雑な感情の機微を捉えている。

もちろん、本人の実体験にもとづいたものであるか、本当に上述した解釈が合っているのかについては不明だ。しかし、語りすぎない詩的な表現や言い回しをもって、そういった溢れ出る感情とストーリー性を表現し、抑揚のあるメロディと完璧に組み合わさった結果、この楽曲を聴いた多くの人々に強い感動を与えたに違いない。

その歌詞の意味すべてを理解できずとも、聴く人それぞれが自身の体験や過去の感情と重ね合わせられる普遍性が、この歌詞にはあったのだ。

“元気な女の子”が時折見せる“素の表情”、また誰にも見せない“抱え込んだ感情”のようにーーこの楽曲は、大塚愛の天真爛漫なパブリックイメージの裏にあった“表現者としての奥深さ”を示すものであり、彼女の表現者としての幅を大きく広げた代表作となった。

20年経っても、色褪せない“あの夏”の感情

2022年のリアルサウンドでの取材に対して、世間一般からのイメージに合わせなければいけなかった葛藤を明かしていた大塚愛。実はこの楽曲についても、世の中に好かれるとは思っていたが当時の自身が好きな方向性ではなかった、最近になってようやくいい曲だと思えるようになったと語っている。

当時の自身の気持ちとは裏腹に、でも計画通りに大ヒットを記録したこの楽曲。2025年5月、累計再生数1億回を突破したことで、時代を越えて愛され続ける名曲であることを証明した形だ。

リリースから20年が経った今でも、この楽曲を耳にすると不思議と“あの頃の自分”に戻ってしまう。制服のすそ、携帯電話の小さな画面、浮足立ちながら誰かと見た花火ーーそんな風景とともに『プラネタリウム』がある。それは決して派手ではないけれど、確かに人生のどこかに寄り添っていた、優しく切ない音楽の記憶だ。

これからさらに暑さが身にしみてくるにつれて、きっと誰もが心に持つ“あの夏”を思い出したくなる。そんな時、ぜひ改めて歌詞にも注目してみながら、この楽曲に耳を、そして心を寄せてみてほしい。


※この記事は執筆時点の情報です。