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40年前、日本中が混乱した“異色のアイドル” ギャグの世界から飛び出した“仕掛けられた二人組”

  • 2025.7.27

1985年、テレビの前で「このアイドル、誰!?」という声が飛び交った――

昭和60年。当時の若者文化の中心は、テレビにあった。一風変わった学園ギャグアニメ『ハイスクール!奇面組』がスタートし、原作のぶっ飛んだ世界観そのままに、お茶の間の話題をさらっていく。

そして、その主題歌を歌うために“仕掛けられた”アイドルユニットがあった。

その名は――うしろゆびさされ組

この2人、最初から“アニメ主題歌のための企画ユニット”として誕生しながら、本格的なアイドルとしても成功してしまった、稀有な存在だった。

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(C)SANKEI

『奇面組』のために生まれたユニットが、枠を飛び越えた

1985年に放送開始となったアニメ『ハイスクール!奇面組』(フジテレビ系)。そのオープニングテーマが『うしろゆびさされ組』(作詞:秋元康・作曲:後藤次利)。

そしてこの曲を歌うために結成されたのが、おニャン子クラブのメンバー・高井麻巳子と岩井由紀子(ゆうゆ)による新ユニットだった。

つまり彼女たちは、最初から“アニメ主題歌ありき”で生まれたアイドルユニット

今でこそメディアミックスや企画ユニットは当たり前だが、当時としては異例のプロデュース手法だった。しかも、この“アニメ枠から出てきた2人組”が、実際のアイドルシーンでも広く人気を得てしまったというのが、最大のポイントだった。

“優等生”と“天然”が放つ、リアルな教室の空気感

高井麻巳子は、清楚で落ち着いた佇まい。“昭和アイドルらしい”正統派の優等生キャラ。一方のゆうゆは、どこかズレた天然キャラで、本人のつかみどころのなさが人気の理由でもあった。

この2人が組むことで、“リアルな教室のどこかにいそうな正反対コンビ”という不思議なリアリティが生まれた。そして、それが奇面組の世界観にぴたりとはまった。

アニメの登場キャラたちの“ちょっとズレた愛らしさ”と、うしろゆびさされ組の“親しみやすい個性”が重なることで、ファンの間には「作品ごと好きになってしまう」空気感が生まれていた。

“うしろゆびをさされる側”の歌が共感を集めた理由

デビュー曲『うしろゆびさされ組』は、まさに“奇面組”的な世界観。ちょっと変だけどあなたが好き。そのメッセージが当時の中高生の心を捉え、「なんか、わかる」と共感を呼んだ。

“かっこいいからじゃなく、等身大だから応援したくなる”

うしろゆびさされ組は、そんな“日常の味方”のような存在だった。

活動は短くても、“仕掛け”の完成度は群を抜いていた

うしろゆびさされ組は、1985年〜1987年までの約2年間でシングル6枚をリリース。デビュー曲以外にも、『バナナの涙』や『象さんのすきゃんてぃ』(すべて作詞:秋元康・作曲:後藤次利)など、遊び心あふれるタイトルと、どこか切なさを残すメロディが特徴的だった。

“奇面組タイアップの一発屋”に終わらず、きっちりと商業的・文化的成果を出している点が、このユニットの強さだった。

アニメ主題歌から派生したアイドルユニットは他にもあったが、「おニャン子クラブという巨大な母体」と、「アニメに完全に寄り添ったキャラクター設定」、さらに「メジャーシーンでの成功」まで兼ね備えた例は珍しかったと言っていいだろう。

企画ユニットとしての完成度は、今見ても群を抜いていた。

“企画”で終わらなかった2人組の真価

今振り返ると、うしろゆびさされ組は、「企画もの」としてスタートしながらも、そのキャラクターとパフォーマンスで確かな存在感を築いた稀有な例だった。

アニメのタイアップという枠組みにとどまらず、音楽番組や雑誌でも引っ張りだこになるほどの人気を得た。

だからこそ、活動終了から40年経った今でも、あの曲のイントロを聴くだけで当時の空気が蘇る。

うしろゆびをさされることを恐れず、自分たちのリズムで進んだ2人。

それが、かえって時代を動かしてしまったのかもしれない。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。