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25年前、日本中が裏切られた“異色の矛盾バラード” 世代を超えカラオケ定番となった“国民的ラップソング”

  • 2025.8.2

「2000年の秋、どんな曲が心に残ってる?」

世紀末の熱気も冷めやらぬまま迎えた2000年。世の中は“21世紀目前”という高揚感と、“この先どうなるんだろう”という曖昧な不安感に揺れていた。

そんな空気の中、あるダンス&ボーカルグループが放った1曲が、静かに、でも確かに、人々の心を掴んでいた。

DA PUMP『if…』(作詞:m.c.A・T/作曲:富樫明生)――2000年9月27日リリース。

メンバーの熱量とは裏腹に、サウンドは切なさをまとっていた。この「矛盾」を孕んだ楽曲こそが、DA PUMPのターニングポイントとなった。

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(C)SANKEI

“パーティーバンド”のイメージを裏切る、異色のバラード

『if…』はDA PUMPにとって12枚目のシングル。それまでの彼らは『Feelin' Good -It's PARADISE-』『Rhapsody in Blue』(ともに作詞:m.c.A・T/作曲:富樫明生)など、ダンスチューンやパーティー色の強い曲が代表作だった。

だが、『if…』はまるで別人のような表情を見せる。

イントロからタイトに跳ねるビート、ピチカートのような跳ねる音が張り詰めた空気をつくり出す。ISSAの憂いをまとまった伸びやかなボーカル、そこに割り込むのは、KENのラウドなラップ。

言葉をぶつけるように刻むそのスタイルは、“静か”ではなく“攻め”。

緊張感のあるサウンドに、ボーカルとラップが重なった瞬間、楽曲全体がヒリつくようなテンションに包まれる。

“ただ格好いい”だけでは終わらない

『if…』は、グループとしての“見せ方”を変えた1曲だった。

それまでのDA PUMPは、“踊れてカッコいい”という明快なスタイルで人気を得ていた。だがこの曲で、聴かせる・伝える・刺すというベクトルを、楽曲の軸に置いた。

ISSAのボーカルが切なさを背負い、KENのラップがストレートに感情をぶつける。この“音のコントラスト”が、これまでのイメージにない緊張感を生み出した。

見た目でも、サウンドでも、振る舞いでも、DA PUMPはここでさらなる進化を見せた。

“DA PUMPといえば”の象徴になった理由

DA PUMPにとって、『if…』は間違いなく最大のヒット曲である。CDの売り上げ自体は、当時の“ミリオンセラー全盛期”と比べれば控えめかもしれない。だが、この曲が刻んだ“記憶”の深さは、桁の話では語れない。

リリース以降、カラオケボックスに行けば、誰かが必ずこの曲を歌っていた。その存在感は、まさに王者のようだった。

数字以上に、人の心に届いた曲。

『if…』は、そんな“日常の中の国民的ソング”として、静かに定着していった。

“動き”で伝える4人の表現力

『if…』のパフォーマンスには、当時のDA PUMPのすべてが詰まっていた。圧倒的なキレを見せるダンス。音を正確に捉えながら、感情の波まで表現する構成。

ステップ、フォーメーション、振り返りざまの目線――すべてが緻密に設計されていて、まるで楽曲そのものが身体を通して“具現化”されているようだった。

ISSAがサビで空気を震わせるような声を響かせ、KENが言葉を撃ち込むようにラップを刻む。その周りでYUKINARIとSHINOBUが、踊るのではなく“呼吸するように動く”。

全員が主役であり、全員が感情の導線を担っていた。

単なる“歌とダンス”ではない、“エモーションと構造”の交差点に立つ表現。それがこの曲であり、この4人だった。

過去の名曲ではなく、“今を生きるスタンダード”へ

そしてこの『if…』という楽曲は、過去の代表曲で終わるどころか――今も“現在進行形”で更新され続けている。

グループが新体制となって以降も、『if…』は大切に受け継がれてきた。

再構成された振付、アップデートされたアレンジ、それでも変わらないのは、“この曲で伝えたいこと”が明確に存在しているということ。

「時代が変わっても、この曲だけは残す」――そう思わせるだけの力が、まだそこにある。

さらに、リリースから25年経った今も、カラオケの定番曲のひとつとなっている世代を越えて歌い継がれ、若いリスナーにも自然に浸透している。

それはヒットというより、“文化”に近い感覚だ。

『if…』は、完成された作品ではある。だが、披露されるたびに表情を変え、今なお“完成され続けている”という稀有な曲でもある。

過去にも現在にも属さない――だからこそ、この曲はこれからも歌われ続けていくのだろう。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。