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歯科医「事故につながる可能性も」→実は『その歯ブラシのケア』間違ってるかも…意外と知られてない“NG方法”とは?【医師が解説】

  • 2025.7.3
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さんは毎日の歯磨き後、歯ブラシをどうしていますか?「きちんと消毒しないと不衛生」と思って、殺菌剤に浸したり、熱湯をかけたりしている方も多いでしょう。でも、その行為、実は歯ブラシを痛めたり、逆に菌を繁殖させる原因になっているかもしれません。よかれと思ってやっている歯ブラシの『消毒』の落とし穴と正しいメンテナンス方法についてご紹介します。

なぜ歯ブラシの消毒が必要なの?

歯ブラシは使い続けるうちに細菌やカビ、ウイルスなどが付着・増殖しやすいアイテムです。

歯ブラシを使った後、きちんと手入れをしないと、歯ブラシに残った食べかすが次に使う際に唾液と混じることで、細菌は爆発的に増殖。使った後の歯ブラシには1000万〜1億個以上の細菌が付着しているとも言われています。

湿った状態の歯ブラシはカビが生える温床になりやすく、見た目にはわからなくても健康に悪影響を及ぼす可能性があります。実際に、歯科医師も「歯ブラシを清潔に保つことが口内環境を守る第一歩」と指摘しており、単に磨くだけでなく、除菌という視点が欠かせません。

実はNG!よかれと思ってやっている間違った消毒とその理由

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

まず、代表としてあげられるのが『熱湯での消毒』です。高温は細菌を殺す効果がありますが、歯ブラシの毛はナイロン製が主流。高温にさらされると毛が変形・劣化し、毛先が割れたり硬くなったりします。これにより歯茎を傷つけやすくなり、歯ブラシの使い心地も悪化します。また、耐熱性のないプラスチック部分も損傷してしまうことがあるため、歯ブラシの寿命が極端に短くなります。

次に『消毒剤への長時間浸漬』も注意が必要です。市販の口腔用洗浄剤やアルコール消毒液に長く浸すと、毛が劣化する場合があります。また、きちんと洗ったり乾燥させていないと、逆に菌の温床になる恐れがあります。

ほかに『電子レンジを使った消毒』も誤解の1つ。電子レンジは水分を加熱する原理のため、水溶液に浸すなどの前提が必要ですが、適切な方法でなければ機器や歯ブラシの破損、火災などの事故につながる可能性もあります。

では、どうすれば安全かつ衛生的に歯ブラシを保管できるのでしょうか。最も推奨されるのは「使い終わったら流水でしっかり洗い、歯ブラシ用の除菌剤を使い、毛先を上にして風通しの良い場所で自然乾燥させること」です。乾燥環境は細菌の繁殖を抑えるうえで非常に効果的です。

また、歯ブラシは1ヶ月程度で新しいものに替えることが推奨されています。これだけなら特別な手間もなく、余計な消毒は不要。清潔さと歯ブラシの寿命を両立できます。

正しいケアで歯ブラシも長持ち、口内環境も清潔に!

歯ブラシの『消毒』と聞くと、つい過度に殺菌を意識してしまいがちですが、間違った方法は逆効果になることをご理解いただけたでしょうか。

熱湯や強い消毒剤の使用は毛の劣化と健康リスクを招きます。

正しい知識を身につけて、より快適で安全な歯磨き習慣を始めましょう。


越智 英行(おち・ひでゆき)
医師(歯科・日本口腔外科学会 認定医・日本外傷歯学学会 認定医)

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昭和大学歯学部卒業。東京女子医科大学病院(歯科口腔外科)入局後、昭和大学大学院歯学研究科(臨床系歯科麻酔科学)修了。同大学歯学部全身管理歯科学歯科麻酔科助教を経て、コンパスメディカルグループ「医療法人社団コンパス」の常務理事に就任。現在はコンパス内科歯科クリニック赤羽(https://www.compass-dc.jp/akabane/)の院長も兼任。患者さんのQOL向上に寄与し、患者さんが笑顔になれる様な治療を心がける。歯学博士。日本口腔外科学会認定医、日本外傷歯学会認定医。